一騎討ち後の真の大事件 1章
アーマスとランデメンド王国の関係性に進展は一切無かった。
あれ程の大規模な事件が有ったにも関わらず、まるで何もなかったかのように。
凍った水面の様に一切波紋が無かった。皆無であった。
それを見た周辺諸国は考えた。何があったのだろうか?と。
ある者は間者に探らせた。
ある者は商人から情報をかき集めた。
ある者は考えた。
そして、皆が辿り着いた結論は、『嵐の前の静けさ』だった。
これから起こる嵐が大きければ大きいほど、嵐の前の静けさは静かになる。
周辺諸国は戦慄した。
アーマスとランデメンド王国という対戦カードがただでさえ大きいものだった。
それが静か過ぎるというのであれば、その後来る嵐は如何様なものかと想像出来る。
関係する国の国土には人類の跡は残るまい。
周辺諸国は来たるべき最終決戦に備えた。
自分達は生き残るべく、他国とのイザコザをピタリと止め、その嵐に備えた。
「嵐は……………………近い。」
静寂。それがもたらしたのは静かな平和だった。
そして
静寂が破られたのはデネブが国王に呼び出された日だった。
玉座の間。
王の座する部屋であり、普段は一部貴族や信頼できる者しか入ることの出来ない場所だ。
今回は事が事。故に貴族の大半がここに集まっていた。
ドンキルを始めとした主な貴族と騎士団長を始めとした王国騎士団が一同に介する中に、一人だけ辺境の砦の責任者が居る。
異様な光景だった。
内心、貴族達はこれから起こるであろうアーマスとの関係性の変革に冷や汗をかいていた。
内心、ドンキルは言い訳を、デネブに責任転嫁する方法を考えていた。
内心、騎士団長は賢者タツミンにどうやって落とし前付けさせるかを考えていた。
最善を尽くして庇うが、それが失敗した時の打開策も考えていた。
嗚呼、私は守れたんだ。
内心、デネブはそう考えていた。
現実逃避をしていた。
「あぁ。」
玉座に座する男が口を開いた。
この国の行く末が解るのはこの男だけだ。
「アーノルド=デネブよ。面を上げ。」
「……はい。」
ゆっくりと、頭を上げる。
「この度の一騎討ち。見事であった。」
「はい。有り難き幸せ。
今後もあの砦の守人として粉骨砕身させて頂く所存でございます。」
「あぁ、その事なのだが………。」
ビクッ
その場の誰もが痙攣し、すぐさま硬直した。
ついに来た。
この国が動く。
「砦の死守の任を解く。
お前、クビな。」
判決が下った。
あっさり下った。
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