俺ら、スカイランナーズ 一〇話

 機体名についてはなんとかイーグルの「なんとか」のところが決まらず結局「イーグル」だけになり、その内容で図面を書いてエントリー用紙共々大会運営に送った。

 「受かりますように!」そう言いながらポストに書類を投函する。

 「最初だし大丈夫だろう」栗坂が言った。

 「もし落ちたらそういう慢心が原因と思いそうだから言わない」

 かく言う俺もそこからしばらくは不安が募って作業にうまく身が入らなかった。なんなら講義の課題やバイトで気を紛らわすぐらいだった。作業中にも井戸に「何か上の空っぽい」とまで言われている。

 そんな気持ちからすっかり落ち着いてきた約二ヶ月後、大会から封筒が届いたと学生課から連絡があった。チーム内にも受け取る日にはできるだけ作業場に来るように伝えた。


 「こっちで開けようか本気で考えた」学生課の人に言われた。「そしたら、『おめでとう』っていいながら渡せるかなって」

 この人のこういうノリは嫌いじゃない。

 渡された封筒のサイズはA4。

 「落ちていたら恥ずかしいのでやめて下さい……」

 「どっちでも教えてね。別に落ちたからどうって事はないけど、合格していたら職員でも共有したいし」

 「はい」

 「ここで開けてもらってもいいけど?」

 「作業場に部員集めているんで」

 「そうか、お預けだね」

 「すみません。また後でお知らせに来ます」

 学生課から作業場まで歩きながら封筒を太陽や蛍光灯にかざしたり、何枚書類が入っているか降ってみたりしていた。

 平静を装うために作業場の手前で立ち止まり、深呼吸。それからドアに手をかけながら言った。

 「戻ったぞ。これ、届いた封筒」

 そわそわしている部員が集まっていた。

 「どうですか!?」

 「これから開ける」

 カッターナイフで慎重に封筒を開ける。

 中に入っている書類をゆっくりと取り出す。一番上の紙にあった文章をみんなで覗き込んだ。


 『人力エアーレース選手権大会の選考の結果をお知らせ致します。審査の結果、貴殿の機体の出場をここに認めます。必要な書類を同封しておりますので全てご確認の上、一部の書類につきましては、お手数ですがご記入の上ご返送頂きますようお願い致します。引き続き、機体製作に励んで下さい』

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