俺ら、スカイランナーズ 六話

 二日目のロングフライト部門、俺と一年の井戸、木下はハーバーで引き上げられる機体を見て、どこか機体を譲ってくれそうな雰囲気のあるチームがないか眺めていた。

 桁が折れておらず、できるならリブやプランクといったが二次構造がなんとなくでも残っていて一緒に貰えると嬉しい。

 目星をつけていた西州大学は飛び出して二百メートルぐらいのところで突然、主翼が折れて着水してしまった。着水時にはもう一箇所も折れて流石にもらって使えるような状態ではなさそうだった。

 逆に

 機体の解体がおわり、トラックを待っているタイミングで声をかける。

 「あの、すみません。城立大学で新しくチームをつくろうとしている者なんですけども、出来たら桁を譲って頂く事はできないでしょうか?」

 「あー多分来年も使い回すので厳しいと思います」即答だった。

 「分かりました。すみません、変なことを聞いてしまって」

 それからニチームほどに声をかけてみたが、クラッシュした際の修理部材や練習機にするなどの返事で出来なかった。昨日のタイムアタックのチームにも声をかけても良かったかもしれないと今更後悔した。

 「桁、どこも使い回すんだな」

 「まあ高いからな」

 中部工業大学のチームが約二キロ飛んで着水した機体が戻ってきた。綺麗な状態でリブやプランクもほとんど残っている。クラブと違い、どうも大学が支援しているプロジェクトのようで厳しそうだが、声をかける事にした。

 「確かに毎年二次構造壊して倉庫で保管しているだけなのでお譲りできるかもしれないですが、先生とかにも確認をとってみてになりますね。聞いてみて連絡で良いですか?」

 「大丈夫です! トラックも持ってきているのでこの場で引き取れるので……」

 はじめて手応えがある返答で驚く。ひとまず電話番号とメールアドレスを伝えてその場を離れた。

 正直なところ、もう声をかけられそうなチームはなく、観客席の奥で見ていた広重らと合流した。彼も近くにいたOBの人に声をかけて色々と教えてもらったらしい。トレーニング方法についても聞けたということで嬉しそうにしていた。

 携帯電話が鳴った。

 「先生が直接、話を聞きたいそうです。駐機場の方に来れますか?」

 「分かりました、今、観客席の奥にいるのでちょっと時間がかかるかもしれないです」

 駐機場に着くとそこにバラされた機体はなく、さっき声をかけた人と先生と思わしき人、部員がいるだけだった。嫌な予感が過ぎる。

 「あの、城立大学の代表の池亀なんですけれども……」

 「ああ、先生! こちらの方です、さっき話していた」

 「はじめまして、中部工業大学の宇田です。話は学生から聞いた。トラックまで持ってきたその熱意と行動力はかいたい。譲れるように話を進めたいが、大学の都合もあるのでここで直ぐに受け渡すのは出来ない。君たちの大学とは少し離れていて申し訳ないが、夏休みの期間中に引き取りに来てもらう事はできるか?」

 「行きます」

 「分かった、今後は今年の代表の峰川君から連絡するので日程の調整などはお願いしたい」

 「僕が峰川です、よろしくお願いします」

 「ありがとうございます! よろしくお願いします!!」

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