俺ら、スカイランナーズ 四話

 人力エアーレースまで二ヶ月を切った六月頭の勉強会でついに大会見学に向けた話し合いをすることになった。

 スケジュールについてはもちろんだが、現地で何を見ておくかや、ききたいことのリストアップもやっている。

 代表としては強豪チームの機体ももちろん見たいが、今は出場経験が少なかったり、人数が少なかったりするチームがどう運営しているがか気になっている。過去の放送から出場回数の目星をつけて、ききに行きたいチームを選んだ。強豪チームに対してはどちらかというと機体製作や設計のノウハウの話ができればいいと思っている。

 そもそもそういう事ができるのか、だが。なにせ俺自身も現地観戦は初めてだから会場がどんな雰囲気なのか分からない。

 「彦根にトラック持っていかないんですか? それでどこかのチームの機体をもらえたら良くないですか?」レンタカーについて話をしている時に井戸が言ってきた。

 機体を貰う、という発想は今まで無かったが、確かに機体一式を手に入れられたら色々と研究出来そうだ。しかし──。

 「そんなに簡単に貰えるのか」

 「でも機体を譲ってもらったという話も見たことありますよ」

 「本当か、それ」

 「どこかのチームのホームページにかいてあったのでおそらく本当かと」森が突っ込みを入れた。

 「なら尚の事トラック持っていって貰ってきましょうよ!」

 「井戸、その話を知らずに提案したな」

 「いいじゃないですかあ」

 井戸は時々とんでもない事を言ったりやったりするので時々心配になる。前にも似たような突拍子もない話をミーティングでしていた。

 ともかく、もらう打診を出すチームも候補に上げておこうという話になった。正直、どうなるか分からないが、よく聞くチームは厳しそうとか、遠くから来ているチームだとお願いできそうとか……。

 「個人的には西州大学とかありだと思います」と住平。「直感ですけど、遠そうだから持って帰るのも大変そうだなあと」

 「でも持ってくる以上、どこのチームも持って帰る心づもりはあるだろうしな」

 「当日きいてみないと分かりませんって!」そう言ったのはもちろん井戸だ。

 しかし用意しておくに越した事はないだろう。本当にそんな幸運にも恵まれるかもしれないということで、パネルバンのトラックとミニバンを1台ずつ借りることにした。担当はもちろん言い出した井戸に割り振った。

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