俺ら、スカイランナーズ 三話

 懸念の活動場所については運が良く決まった。

 まだサークルで大学公認クラブではないのでクラブハウスは借りられなかったものの、学科の建物の中に使われていない物置みたいな部屋を見つけて、そこを借りることができた。これは航空学科がまだ新しいことが幸いしたかもしれない。ただ学科で何か使う予定ができたら撤収という条件がある。こちらとしては早いうちに機体製作を軌道に載せて撤収させるにもさせられないと思わせたいとは考えていた。そのために断熱用の発泡フォームや発泡スチロールを買ってきて既に置いている。

 場所を確保してからは何か作ってみようということで翼のリブを試しに作るようになった。まだちゃんと設計ができていないのでとりあえず近そうな翼型の図面を見つけてきてコピーを取り、それに合わせて素材を削っていく。断熱用の素材は発泡スチロールに比べて本当に切りやすくてびっくりした。

 テストピースを作る中で意外なことにパイロット予定の広重がいちばん器用で、ついで俺、そして栗坂の順だと分かった。設計が部の中で不器用というのはどうなのか。ただ部員が三人だとパイロットも機体製作はやらないといけないだろう。


 それに、もうそろそろ──。

 「新歓のことも考えたいんだが」手を止めて作業している二人に言った。

 「人集まる?」

 「人力レース出るといえば集まるんじゃないですか」

 「それ、テレビ出たい人が来そうな気もする」

 「正直、そういう人でも構わない。とにかく人を集めて作業スピードあげたいし、本番の時も人がいる」

 「あーそれもそうか」

 栗坂はいまいち乗り気ではないようなので、広重にここはパイロット候補というところでも宣伝できそうなので……。

 「広重パイロット! 新歓担当をお願いしたい!」

 「はい! いいっすよ、何すればいいですか?」

 「まず新歓用ポスターつくって、日程決めるか」

 「分かりました、とりあえず考えときます!」

 一週間もすると、広重が新歓の案をまとめてきたが、今の仮作業場では飲み物を飲むぐらいしかできず、作りかけの機体しか物がないということで、見せられる資料が多い俺の家でやると言い出した。家が特定されてしまう上、何が起きるかわからないので拒否したが決行されてしまった。彼が焼きそばを作って振る舞うという活躍っぷりもあり、井戸、木下、住平、田中、森の五名が入部した。無論、全員男子であるが、結果は良かったのではないかと思う。

 新歓前に家を片付け、掃除してくれたのは良かったが、少しキッチンは綺麗に使ってほしかった。そこを片付けたのは俺である。来年までにはちゃんとした部室を持ってそこで新歓が出来るようにしないとまずい。広重の勢いに任せてまた俺の自宅で開かれてしまいそうだ。

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