俺ら、スカイランナーズ 二話
ポスターは「琵琶湖の空を目指そう! 人力飛行機サークル設立メンバー募集!」と大きく書いて、連絡先と名前、それに「決起集会」場所として借りた教室と時間を載せる。
学生課で貼り出しの許可をもらう時に「工学部はあるのに確かに人力レース出てなかったね。テレビに映ったら教えて」と受付の人に言われた。
当日。講義を終えて、決起集会の教室に急いだが誰もいない。廊下で人が何人か待っている状況になっていないかと期待していたので少し肩を落とした。
メールも電話も何も連絡はなく、誰も来ないという危機感が過る。
広い教室に一人座って時計を睨んでいた。後五分。
後三分になってドアが開く。
「すみません、人力のサークルの集まりってここであってます?」
「そうです!」飛び上がるように立ち上がり、声が出る。
「一人だけ……? 池亀さんですか」
「そうです。まだ俺だけです……」
「他には?」
「分かりません。時間まであと三分あるので、それまでは待とうと思います」
沈黙の三分が過ぎた。
「えーじゃあ時間になったので……俺が人力飛行機クラブの立ち上げをした池亀です。工学部航空宇宙学科の二回生です」
「工学部建築学科の栗坂です。 よろしくお願いします。飛行機の事はあまり分からないのですが、図面とか書くのが好きで設計に興味があります!」
「人力エアーレースを観た事は?」
「テレビで毎年見てます」
そこからとりあえずお互いの知識のレベルの確認みたいな感じの会話を少しばかりした後、二人で飯にでも行こうとまとまっていたところで、また、ドアが開いた。
「あのー、すみません」
「どうぞ!」
「ここ、人力飛行機の集まりでいいですか?」
「俺が池亀です!」
「栗坂です」
「広重歩といいます。社会学部二年です。自転車部にいたのですが今は辞めて独りでサイクリングしてます。パイロットやってみたいと思ってます」
「おお」
その後、この人数ならということで近くのファミレスで色々と話し込んだ。栗坂の設計や広重の自転車の経験の事、それぞれの飛行機への関心度や知識の内容、これからどんなスケジュールで大会を目指していくか、等々。
「でも、結局、三人だけか……」そういって仰け反る。
正直、十人ぐらい集まるんじゃないかと思っていた。この人数だと製作も時間がかかるだろうし。
「大丈夫ですよ、これから集まりますよ」広重が励ましてくれる。「ずっと貼っておけるポスターだしとけば来るんじゃないですか?」
「うーん、まずはそれ作って、設計始めて、だな」
こうして城立大学人力飛行機倶楽部は立ち上がった。
まだまだ問題は他にも山積みだ。飛行機の製作場所や費用などもどうするか決めないといけない。
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