1-11 月夜と貸し切り風呂

 その後、着替えなど何なのいろいろあったが僕と月夜は気を取り直して貸し切り風呂へと足を運ぶ。


「あ……笑いすぎてまだお腹痛い」

「あそこまでされたら私だったら破局モノですが、大丈夫なんですか」


 後ろで月夜と片山さんが不吉なことを話している。

 え、やっぱ駄目なのかな。正直あのレベルだったらもう日常で結構やってるんだけど……。


「確かに最初は凄く苦しくて嫌なんですけど、なんか気持ちよくなってくるっていうか~」


 月夜はうっとりした声で言葉を返す。


「その後、太陽さんがすっごく優しくしてくれるので愛を感じるんです」

「それは愛じゃなくて性欲のはけ口なだけよ」

「ちょっと! 月夜に変なこと吹き込まないでください!」


 貸し切り風呂の更衣室へ入る。

 男女共通だけど一応仕切りはあるんだな。

 さてと……。


「片山さん、混浴はどこまでOKなんですか」


 いきなりレッドカードを出されては困る。とはいえ、月夜とのんびりとお風呂に入りたい。

 当初ではあんなことやこんなことも考えていたが不可能なのは分かっているので制限の中で最大限楽しみたい。


「まず、全裸はNGです。お互いタオルを着て入ってください」

「温泉なのに!?」

「調べたらここは専用のタオルであればOKだそうです。毎回湯を入れ替えているみたいですしね。あなた方のように性欲に旺盛な方が多いのかもしれません」


 ち、タオル着用は仕方ないか。あとは……。


「洗いっこはどこまでいいですか?」

「そうですね。神凪さんから山田さんへはOKですが、逆は駄目です」

「ええ!? ご無体な!それじゃ洗いっこじゃないじゃないですか」

「あれだけ露骨に女の子の胸揉むような人は駄目です」

「く、くそぅ」


 月夜の体を隅から隅まで綺麗にしてあげようと思ったのに……世の中って厳しいな……。


「話はまとまったみたいですね」


 仕切りの奥からタオルを巻いた月夜が現れた。白いふとももから下は美しいが、その何より拝見したい胸から下は無情にもタオルで隠されていた。

 ただ、1つだけ違うのは……。


「おお、ポニーテール!」

「ちょっとまとめてみました」


 いつもはロングでふわっふわの髪が今はポニーテールで綺麗にまとめられていた。

 昨日のツーサイドアップといい、髪型を変えるのはやっぱりいいな。胸が熱くなってくる。


 浴衣を脱いで、僕もタオルを腰にまいて、貸し切り浴場の中へ足を踏み入れた。


「わぁ~外に海が見える」

「意外に広いじゃないか」


 貸し切り風呂は4人用みたいなことを書いていたが広々としていた。

 流し場に外が見える露天風呂。2人で入るには十分のスペース。

 これはのんびり入ることができそうだ。


「お背中流しますね。だーりん!」

「お、その設定は面白いな、ハニー!」

「私は月夜って呼んでください」

「それおかしくない!?」


 正直な所、昨日の夜にしっかり体を洗っているからそこまで洗ってもらう必要はないのだけど、ざっくり洗ってもらうとしよう。

 それより汗をいっぱいかいた月夜の方を洗ってあげるべきなんだろうけど……許してくれないんだろうな。

 これで無理やり洗いっこして一緒にお風呂がなくなっては意味がない。我慢しよう。


「ふっふーん、やっぱり男の人は背中が大きくていいなぁ。がっしりしてるし、筋肉質だし」

「そう? 僕は女の子の柔らかい背中の方が好きだな」


 月夜はごしごしとタオルで背中を洗ってくれる。腕や腰回り、そして髪といった所をしっかりケアしてくれる。

 頭は特に気持ちいいなぁ。床屋行った気分。こんなかわいい子が散髪してくれるなら毎日通ってもいい。


「むー、こちょこちょ~」

「ん?」


 脇腹をぐにぐにと揉まれるが特に何か感じることもない。むしろマッサージ気分だ。


「何で効かないの? ほんと不感症だよ」

「そう言われても……」


 月夜はやったらやり返すタイプの人間だ。胸を揉むと股間を握り返してくるタイプである。

 実は昨日から月夜の胸を揉んだ分、股間を握られたりしている。

 なので月夜も死ぬほどくすぐられて仕返ししたくてたまらないんだろう。本当にかわいいなぁ。


 振り向いて、タオルを体に巻いている月夜の体を抱き寄せて、お返しと言わんばかりに月夜の脇腹を揉み尽くす。


「にゃあ! にゃあ! カウンター禁止ぃぃい!」

「あれだけ笑わされても懲りない子にはお仕置きだ」


「はぅ……はううう!」


 月夜をくすぐって床に倒してさらにぐりぐり、もみもみ脇腹のツボを狙う。

 さっきのおかげで月夜は体力を失ってるので抵抗が弱い。おかげで好きなだけ攻めることができる。真っ赤な顔で歪んだ表情もかわいいなぁ。



 その勢いでタオルが少しはだけて、白い肌が見える範囲が広がった。興奮に頬が緩みそうになったが僕は嫌な予感がし、ふと見上げると……片山さんが胸ポケットに手をいれていた。


「うおおおおおおお! つ、月夜、お風呂はいろーーー!」

「ひゃは……ふぁい」



 ◇◇◇


 僕と月夜は体を洗った上で露天風呂へ入る。

 そこそこ高めの温度にあっという間に体が熱くなる。


「危ない所だったね」


 月夜はきっと僕を睨む。


「昨日からイエローカードもらってるの全部太陽さんですからね!」

「あれ? そうだっけ」

「人を性欲魔人なんて言ってからかってきますけど、太陽さんも相当えっちですからね!」


 返す言葉もない。

 ただ、言い訳をするのであれば神凪月夜という女の子があまりに魅力的なのが問題だと思う。

 この目の前の子を好きになっていなければ女性が苦手な僕は……手を出すこともなかなか出来なかっただろう。


 今だって、温泉から立ち上る湯気でポニーテールの髪がしっとりと濡れ、頬伝う汗がポツリと湯に落ちるのを見るたびに月夜の顔を見てしまう。

 僕に対して微笑んでくる彼女の小顔が何よりも愛しくて胸が鳴る。

 それだけではない、一度湯の方に視線を寄せれば光を纏っているようなきめ細やかな白い肌が視界に映る。細くて長い足から……タオルで隠された部位を通過して、16歳にしては発育の良い胸部が目に入る。タオルを巻く程度では隠しきれないそれは何度見ても触っても飽きることのない。


 月夜ともっと一緒にいたい。


「月夜、隣で話さないか?」

「……いいですよ」


 この旅行もいよいよ最後の時間となる。

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