1-10 月夜に笑顔を……

「月夜ーーーっ! 起きろーーーーっ!」

「ぐぅ……」


 時間は朝の6時30分。貸切風呂の予約を7時30分としている。風呂入ってメシくって、チェックアウトと考えるとさっさと起きて準備をしたいのだが、愛しの月夜ちゃんは6時は真夜中のため起きることがない。

 寝ぼすけすぎるんだよなぁ。こうなるとなかなか起きない。7時30分ぎりぎりはちょっとなぁ。


「うぅん……」

「む……」


 寝返りをうった月夜の浴衣がはだけて、白い肌と水色の下着、見事に育った胸元が見える。

 何て自己主張の強いカラダに育ってしまったんだ……。

 わりと最近知ったが、月夜は胸が苦しいので夜はTシャツとかあまり着たくないらしい。星矢や幼なじみ、そして僕と一緒だととっても無防備になる。

 血の繋がった兄や気心知った同性なら問題ないかもしれないけど、彼氏はいかんよ! すっごく襲いたくなる。


 じっと見ていたら、後ろから片山さんにじっと見られていることに気づく。あの人昨日からあのままだけど、寝てるんだろうか。

 仕方ない。

 まったく起きない月夜ちゃんにはきっついお仕置きをしないといけないな。

 ちょうどこんなこともあろうかと持ってきておいてよかった。

 自分の旅行カバンをがさごそ探す。


「えーっと……どこだっけ。あった、手錠!」


 鎖を長めにして、手錠部分は柔肌が傷がつかないようにクッション性能をよくしている。

 さっそく月夜の両手を高く上げる。引っかける所は……おっ、ちょうどいい位置に鉄柱があった。

 鉄柱に鎖をかけて、月夜の手がずっとバンザイになるように固定した。

 そして最後はアイマスク! 月夜の目を塞ぐように取り付けた。そのままマウントを取るように月夜の上に乗る。


 よし、起こすか。


「月夜ー。起きろ」

「ふにゃ?」


 よし、ちょっとだけ覚醒したな。こうなったらあとは月夜のしっかりくびれた脇腹をモミモミするだけ。

 スベスベ素肌を一揉みするだけで。


「んひゃっ!?」


 飛び起きる。


「ちょ!? え? 何も見えない……? 夜中?」

「おはよー。夜中じゃないよー。朝だよ」

「にゃは!? わ、脇腹揉むのやめぇ! やはははははああああああ!」


 月夜はくすぐったさに暴れるが残念、手錠を使って、鉄柱に引っかけたので逃げることはできない。

 これで思う存分月夜のかわいい笑顔を見ることができる。


「はぁ……はぁ……何考えてるんですか」

「告白の時……あと昨日も言ったじゃないか【僕の側で……ずっと笑っていて欲しい】って」

「こんな強制的に笑わすのは違うもん!」


 まったくわがままだなぁ。さてと次はっと。


「月夜~。脇腹をモミモミするよ」

「っ!」


 とそんなこと言いつつ、浴衣の中に手を入れて、1番に苦手な腋の下をぐりぐりとくすぐった。


「ひゃああああ!?」


 予想もしていなかった刺激に月夜は一段と叫び声をあげて、強く体が動いた。

 やはり目隠し効果は絶大だな。これは水里さんに報告しなくては。

 そのまま月夜の腋の下を攻め続ける。


 ふれ合いレベルのくすぐり合いは何回もやってきたが縛って、目隠ししてまではやったことがない。

 1回やってみたかったんだよね。月夜の笑顔は本当にかわいい。


「キャハハハハ! 死ぬッ、死ぬッ! か、片山さん! これってえっちなやつです!」


 僕はその月夜の声を聞いて、後ろを向く。

 片山さんは大きく手を上げて○という文字を作っていた。


「くすぐりはエロじゃないって」

「いやああああ! ヒャハハハハ、絶対エロだよお! いろんなとこ触ってるぅぅぅ!」

「やだなぁ、ただのじゃれあいじゃないか」


 順番に腋の下と脇腹、ついでに胸も触りながら月夜を悶えさせる。


「山田さん」

「はい?」


 片山さんが側にやってきて、月夜の足を掴む。

 そして月夜の足の裏を細い手でかき回すようにくすぐった。


「にゃあああああ!?」

「ふふふ、こう見えて昔、夫をくすぐりで悶絶させたことがあるんですよ」

「へぇ~。それはすごい。是非ともそのテクを見せてください」


「やめてやめて! 2人とか無理ぃぃ、にゃははははあははは!」


 片山さんは少しだけ表情が柔らかくなる。


「懐かしいですね。私達もこうやってくすぐりあったんですよ」

「今はされてないんですか?」

「大人になってしまいましたからね」


「何で雑談してんの!? ああぁああ!?」


「山田さん、昨日使ってた日焼け止めローション残ってますか?」

「はい、これですか」


 片山さんは僕が渡したローションを受け取り、月夜のお腹の上にたっぷり垂らしてた。

 それを腋の下や脇腹にこねくりまわすように塗りつけた。


「ギャハハハハハハ、イヤアアアア、もうやだーーー!」

「これを使うことで滑りがよくなるんですよ」

「へぇ~勉強になります」


 確かに滑りがよくなって、手を動かしやすくなったな。

 僕と片山さんで月夜の腋の下と脇腹を徹底的に攻め立てた。


「しかし、見事なスタイルですね。私も結婚式を挙げるためにダイエットをしたのですがこんなにくびれたことなかったですよ」


 片山さんは月夜のくびれた脇腹を興味深そうにぐにぐに揉み続ける。

 そのたびに体が跳ねて、悲鳴が上がって、とってもかわいい笑顔になる。


「そして16歳でこの胸ですか。本当に神凪さんは神がかったスタイルを持つ女の子なのですね」

「でも九土さんだって負けてないでしょ。僕は月夜の方が好きですけど」

「お嬢様は完璧に見えて努力されているのですよ。毎日トレーニングされてますし。しかし、この子は何もしてないですよね。昨日あれだけ食べてこのスタイルを維持するのはすごいです」


 片山さんの手を動かすペースがすごく上がってる気がする。


「片山さん、鬱憤はらしてませんか?」

「そんなことないですよ。ただまぁ……私が嫌いなものが3つあって、それが残業とGと若くて綺麗でスタイルのいい女の子なだけです」


 相当うっぷん溜ってるじゃないか。


「九土さんだって同じじゃ」

「お嬢様はお金くれるから大好き」

 

 大人って……。

 月夜は疲れ切って声が上がらなくなってきた。苦しそうに、でも笑顔で……そんな月夜がたまらなくかわいい。


「あぁ、月夜かわいいなぁ」

「これだけかわいくて、反応が良かったら楽しいでしょうね」

「そうなんですよ。月夜ってすんごく性欲が強くて、いつもするとき、最低3回は求めてくるんですよ」

「はぁ……」

「正直体が持たないので……そういうときに月夜を思いっきりくすぐるとヘロヘロになって諦めてくれるわけです」


「あへ……はへへ……」


 そろそろ僕の手も疲れが見え始めたので1度止めることにした。

 月夜の顔を見る。笑い狂って表情がうつろになっている。目隠しを外してあげてそんな月夜がかわいいのでキスをした。

 月夜の意識が僕に向く。


「どうする? もう止めようか?」

「いや、あれだけ嫌がってるんだから止めた方がいいに決まって」

「……だめぇ」


 月夜は声を上げる。


「た……いようひゃん。 もっとこちょこちょしてぇ。おかしくなるくらいに……」

「分かったよ」


 月夜の望むことを僕はしてあげたい。

 再び、月夜の唇にキスをして、口を塞いだまま、月夜の腋の下を手でぐりぐりと押しつけた。


「むほおおおおおお! むふふふふ!」


「お嬢様から2人は初々しい関係と聞いていましたが、めちゃくちゃ歪んでるじゃないですか……」


 何か片山さんから不穏なことを言われたが聞こえないフリをした。



 ◇◇◇



 さすがに手が限界を迎えたため、こちょこちょタイムは終了を迎える。

 月夜は全身から汗を流しており、痙攣してるようにピクピクしている。でもすごく嬉しそうだ。

 やっぱり潜在的にドMなんだよな。普段はSっ気あるのに。


 しかし、このままでは風邪を引いてしまう。

 よし拭いてあげよう。

 僕は月夜の下着に手をかけた。


 ピピピピッピーーー!


「へ?」

「いや、下着掴んじゃ駄目でしょ」


 片山さんが呆れたような目で僕を見る。


「でも風邪引いちゃうし! 下着は脱いだ方がいいと思います」

「あなた、えっちなことしたいだけでしょう。顔に書いてますよ」

「ちっ」


 思わず舌打ちしてしまった。片山さんのスーツの胸ポケットからイエロカードが出される。

 くそっ、これは納得できない。


「いいじゃないですか! 月夜を一緒にくすぐった仲じゃないですか!」

「駄目です」

「3回目やった後、くすぐって悶絶させるんですが、その姿がとっても欲情を誘うんで4回目がやりたくなるんです!」

「駄目です」

「ここまで来てお預けなんて無理です!」

「駄目です」

「1回だけ! 1回だけでいいんです! ちょっとだけ、さきっちょだけ!」


 片山さんはイエローカードを胸ポケットに戻した。

 想いが通じた、そう思って顔を綻ばせた僕を……絶望にさせる1枚のカードが提示された。


「レッドカード……」


 こうして僕は2枚目のレッドカードを手に入れるのであった。


 うやむやな気分のまま貸し切り風呂へと進む。

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