1-7 月夜と花火大会

 ほぼ全ての客は浜辺に足を踏み入れる。

 海岸線の先から白い光が空へ立ち上り、見上げた先で広がり、大輪を咲かせた。


 やっぱり見慣れている地元の花火と違うな。

 決して負けてるわけではないけど目新しい花火ばかりだ、目を惹いてしまう。

 続々と花火が打ち上げられ、僕は口を開いたまま呆然と見てしまう。


「すごいね」

「はい、あの何個も爆発が繋がる花火……すごく綺麗ですよねぇ」


 僕も月夜も地元の花火しか見たことがなかった。

 こうやってたまには違う場所へ行って他の花火も見てみるもんだなぁ。

 今度お金を出して特等席で見るのもありだろうか。


 僕と月夜は喋りながらも握り合った手でお互いにふれ合い続ける。

 手のひらって不思議な感覚だ。月夜のふんわりとした手のひらを触り続ける。

 意識は花火へ向かってるはずなのに……この手の触れあいは止められない。


 時間は過ぎ……首が少し痛くなってくるがそれでも花火から目を反らすことはない。

 迫力があって綺麗で、その轟音が胸に響く。

 まわりの客から最後だ、最後だという声が聞こえる。時間的にも次がラストだろうか。

 真っ暗な空は静けさが広がる。空の煙が無くなるのを待っているのだろう。


 1分、2分が過ぎて……大量の光が天へと向かう。

 どんな光景になるのだろう。想像と空へ向かう響く音に胸がわくわくする。

 その時、僕の肩を2度叩かれる。その方向に顔を向けると……。


 月夜が僕を見て笑っていた。


 だから僕は顔を寄せて……月夜の唇にキスをした。


 花火客の驚く声と花火が弾ける音で世界が埋め尽くされる中。

 僕は世界で1番美しい人へキスをした。



 ◇◇◇



「最後の瞬間が見れなかったじゃないか」

「でも……見てくれましたよね」


 そりゃそうだ。

 人は誰しもより綺麗なものを見たいもの。

 僕にとっては花火より綺麗なものが存在するってことかな。


 花火大会も終わり、人が大きく移動している。

 こりゃはぐれたら絶対に見つけられそうにないな。

 月夜を絶対離さないように手を強めに握る。


「片山さーん」

「何でしょう」


 月夜が大声で片山さんを呼ぶ。

 するとぬるりと後ろから現れた。


「ずっと後ろにいたんですか」

「はい、花火見ながら、お二人が口づけするところまでばっちりです」


 何だかそう言われると恥ずかしいな。

 しかし、なぜ月夜は呼んだんだろう。帰るだけならこのまま勝手に追ってくるだろうし。

 そんなことを考えてると月夜に思いっきり手を引っ張られた。

 ちょうど花火を見ていた民衆の群れを突っ切っていく。


「ちょ、ちょ、月夜!?」

「太陽さん、この波を抜けたら携帯の電源を切ってください」

「なんで?」

「いいから」


 人の波を抜けて、僕と月夜は携帯の電源を切った。

 そのまま月夜は僕を引っ張ったまま茂みの中に入っていく。

 ここはさっき晩ご飯を食べた所の近くだな。暗くて……外からは何も見えない。


「月夜」

「あの……」


 真っ暗ではあるが月明かりでわずかに造形は見える。

 月夜がいきなり抱きしめてきた。


「もう我慢できないんで……ここで」

「え?」

「浴衣の帯が緩んじゃった……」


 ぺらっという音と共に月夜の浴衣を縛った帯が落ちる。

 そして浴衣がはだけて……下着姿を目のあたりにする。暗くて色はよく分からないが……かわいい柄の下着だ。


「もしかして……狙ってた?」

「このタイミングしかないと思ってました」


 念のために月夜の体を隠すように抱きしめる。両手を月夜の背中に持って行き、汗のついた体に触れる。


「今日の夜とか明日朝風呂では恐らく無理だと思います。片山さんの監視は思ったより厳しい」


 確かに……臨時ボーナスのために全力で頑張ってる感じだもんなぁ。


「人混みに紛れて、携帯の電源を切るって相当だな」

「それぐらいしないと駄目です。さぁ……」

「あ、でも避妊具が」

「持ってます」

「月夜さん、一生ついて行きます」


 体勢を低くして、ゆっくりと体をひっつけ合う。

 屋外経験豊富でよかった。今の僕達ならあっと言う間に終わらせられる。

 背徳感がすごいが……月夜と触れ合いたかったのは事実。よし……。


「月夜、浴衣は下着着けちゃ駄目らしいよ」

「そうなんですか……?」


 仰向けの月夜の頬に触れ、優しくキスをする。

 徹底的に盛り上げて、早く終わらせよう。


「うん、だからお仕置きをしないといけないな……」

「あん。……もうめちゃくちゃにしてください」


 月夜の下着の位置を少しずらして、その闇でも輝く白い肌に軽く触れて、感じるように手を動かしていく。

 月夜に楽しんでもらえるように僕はその手を下半身へ持って行った。


 ピピピピッピーーー!


「ふぐっ!」「へっ?」


 甲高い笛の音が鳴り響く。

 後ろを振り向くと、メガネをキリッとさせた片山さんが笛を口に立っていた。


「な、何でここが」

「うまくまいたつもりでしょうが、私はプロフェッショナル。絶対に行為をさせませんよ」


 もはや……僕達に成す術はなかったのであった。

 そして。


「イエローカード2枚でレッドカードです」


 次のデートに星矢が来ることが確定した。

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