1-5 月夜と海風を感じる

 海水浴場に隣接するシーサイドレストラン。

 海の家とは違うちょっとオシャレな建物だ。屋外レストランとなっており、2階の建物の屋上も解放されている。

 僕と月夜は屋上に置かれたテーブルと横に長い椅子に座って休憩していた。


「潮風があたって気持ちいいよね~」

「はい、いい風が吹いてます」


 16時頃になると少し気温も下がってくる。海水浴客も減ってきた。

 たっぷり遊んで、たっぷり月夜の水着を堪能したので満足だ。

 ふっふっふ、月夜の写真を100枚くらい撮ったぞ。明日帰ったら鑑賞会をしよう。


「このチェリーもらっていいですか?」


 カップル用の特大のトロピカルジュースがテーブルに置かれている。

 たくさんのフルーツとジュースとそして2つのストロー。

 交際する前も月夜と一緒にカップル用のジュースを飲もうとしたことあったっけ。あの時は水だったけど。


 月夜はチェリーを口に含み、僕に微笑んでくれる。ああ、愛しいなぁ。いつまでもこうしていたい。

 月夜のツーサイドアップの髪が揺れてるたび、魅力がそこから湧き出ているようでまわりの客がぼんやりと月夜を見つめている。

 月夜を守りたい気持ちと自慢したい気持ち。どちらも湧き出てしまう。

 でも、パーカーを着させたので最上級のカラダを誰にも見させやしない。


 月夜はちらっと僕の体を見た。


「太陽さん、体つきがよくなりましたよね。引き締まってる?」

「ああ、勉強の合間に鍛えてるからね。走って、筋トレしてるよ」

「続いてるんだ。すごい」


 月夜から好かれてることに優位に思っていたとしてもやっぱり彼氏とはして少しでも釣り合いが持てるようになりたい。果ては月夜を守るためにもなる。

 顔はどうにもならないとこがあるけど、頭と体は鍛えればモノになる。だから僕は受験勉強の間に筋トレをしているのだ。

 ……月夜に言えないけど、月夜の性欲に応えているために鍛えているのが7割くらいある。土日に死ぬほど性欲吸われるから月、火あたりがマジきついんだよね。

 鍛えないと……性欲で殺される。


「私としては気にいらないですけどね」


 月夜の表情が強ばる。

 その原因は……あるか。


「5月に私と太陽さんの関係がバレたじゃないですか」


 そう、月夜とデートを学校の連中に写真を撮られてしまったのだ。

 それで大騒動になったんだが、何とか収めることが出来て、正式に僕と月夜は学校内での交際を認められた。

 それから何と僕がモテ始めたのだ。まぁ……モテるって言っても声をかけられるレベルです。神凪兄妹のような告白レベルにはほど遠い。


「太陽さんの魅力を私だけが理解していたのに。どこかのメスネコがしゃしゃり出てくるし……」


 3年生になってから僕は校内でもちょっとした有名人扱いになっていた。

 それで5月の例の件があって、言ってしまうと箔がついたということだ。

 山田太陽とは学園一と言われる美少女、神凪月夜と交際しており、学園一の美男子の神凪星矢の親友であり、去年のミスコン1位の加賀屋水里、生徒会長の九土原彩花、アイドルの天野日和と仲が良い。

 こうやって並べてみると普通の人間じゃないように思えるよね。全部他の人の力だけど。

 そんなわけで女子から普通に話しかけられることになった。


 グループに女性が多いおかげで女性が苦手な気持ちもだいぶ薄れて、彼女持ちの余裕からか話もしっかりできるようになった結果だろう。

 ただ、それが月夜にとって気にいらないようだ。


 立ち上がって対面に座る月夜の横へ行く。少し機嫌の悪い月夜の頭を優しく抱く。


「何千人の女の子に声かけられようが僕は月夜だけしか興味ないし」

「うん」

「君はかわいい。誰よりも愛しいよ」


 左手で月夜を抱きしめ、右手でゆっくりと月夜の髪撫でる。

 月夜は頬を赤く染めうっとりした表情を浮かべる。


「でもかわいいって言葉を交際してから何百回も言ってるけど……飽きてないよね?」


 月夜は僕の方へ見上げた。


「百回どころか千回、万回、ずっと言ってほしいですよ。おばあちゃんになっても言ってくださいね」

「分かったよ」


 少しだけこのまま時間が過ぎる。


「ふわぁ」

「眠い? 膝貸そうか?」

「ちょっとだけ……」


 バスの中でずっと小説読んでたもんなぁ。

 さっきの海水浴と一緒で眠たくなったんだろう。

 僕の膝を貸してあげると月夜は寝息をたてる。

 サラサラの髪を撫でてあげ、心地よい時を過ごす。


「……」


 他の客が近くにいないことを確認する。

 よし、この位置なら誰にも見えない。

 月夜の着ているパーカーのジッパーを下げて、オープンにさせる。

 ぴとっとすべすべのおなかに手を置く。


「んっ……」


 冷たかったかな。ただまだ眠っているようだ。

 本当にすべすべだよなぁ。さっき日焼け止めを塗った時も楽しんだけど、この白い肌は本当に完璧だ。

 そして僕の両手はたわわに実った胸の方へ移動させる。


「素晴らしい……。こんな柔らかいものがこの世にあることが奇跡だ。生きててよかった」

「ん……ふぅ……」


 2月にメイド服を着た月夜の胸を揉んだ時よりもさらに大きくなっているような気がする。

 圧倒的なサイズと柔らかさ。何度揉んでも飽きないよな。

 この体の細さで胸だけは見事なサイズを誇っている。

 すごい……。

 すごい……。

 これ以上は止めよう。

 視界の片隅に急に片山さんが現れて動揺したのもある。これ以上は多分アウトなのだろう。


「本当にかわいいな……」


 眠っている月夜の顔をじっと見つめる。

 びっくりするほど小さい顔だ。目鼻口、全てが理想な位置にある。真っ白な肌、長いまつげと……まさに芸術品だ。

 月夜の頭を持ち上げて、そのぷるぷるの唇にキスをした。

 少し離してもう一度……。

 さらにもう一度。


「あのーそんなにチュッチュッされたら眠れないんですけど」

「そうだね」


 薄目を開けた月夜ちゃんに怒られてしまった。

 月夜は体を起こす。


「私が膝枕する時はちゃんと寝かせてあげるのに、太陽さんがする時はいつも触ってきますよね」

「そ、そうだっけ」


 月夜は視線を下げる。


「ジッパーが下に降りてる。また私の体触ったでしょ。太陽さんってほんと私の体好きですよね?」

「そ、そんなことはないよ! 体目当てなわけじゃ」


 月夜は目を瞑った。


「5日前は図書館ですれ違い様に胸を揉まれる」

「うぐっ!」

「4日前は料理してる後ろから胸を何回か揉まれた。3日前はキスしてるときに胸とお尻を揉まれたかな。一昨日はいきなり私をこちょこちょしてきて、ちゃっかり胸とお尻とふとももを触られたっけ」

「あ、あの」

「昨日は海ちゃんと電話してる横で胸とふとももをフェザータッチしてきましたね」


 月夜は微笑む。


「太陽さんってほんと私の体好きですよね?」

「めっちゃ好きです。毎日触りたい」


 やばいな、こうやって言われると僕がエロクズやろうじゃないか。ってか毎日胸触ってたっけ。全然意識ないや。

 彼女だからってさすがにやりすぎか。いやでも……。


「節度を持ってくださいね」


 性欲の強い女に節度を求められるのは納得いかない気もする。


「あの」


「ひゃ!」


 いつのまにか片山さんが目の前にいた。この人本当に気配ないな。


「そろそろ17時です。2人とも【花火大会】に行かれるのでしたら、準備しないと間に合いませんよ」

「そうだ! 忘れてた」


 今日の19時より、ここから少し離れた海岸線で有名な花火大会が行われるのだ。

 僕達はこれを見るために宿泊プランを考えていた。昼に海水浴をして、夜に花火大会に出る。

 さっそく準備をしないと。


「太陽さん、宿に戻って浴衣に着替えましょう」

「おっけー! 行こうか」


 楽しい海水浴はこれで終わり。

 夜からは花火大会だ。

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