1-4 月夜と海水浴①

 今日止まる旅館にさっそく荷物を預けて僕と月夜は海水浴場へ足を運ぶ。

 性行為禁止令はさておき、高校生最後の夏を月夜と充分に満喫しておきたい。


 さっきまで側にいた僕と月夜の監視人である片山さんの姿はどこにもない。

 てっきりつきっきりかと思ってたけど、僕と月夜のラブラブさに煽られていなくなったのかもしれない。


 更衣室で水着に着替えて一足先へ砂浜へと出る。

 くっくっく、久しぶりの月夜の水着だ。今日のために新しく用意したと言っていた。

 月夜の彼氏で本当によかった。去年の今頃はちょうど入院してたっけ。ほんといろいろあったなぁ。


 しかし、暑い。

 来週から8月でもっと暑くなるんだろう。照る砂浜も素足で歩くと火傷してしまいそうだ。


 ん? 何か騒がしいな。

 更衣室の方からだろうか。大勢の海水浴客が何かを注目している。

 その取り囲まれる中心にいたのは……月夜。

 白のパーカーを着て上半身は隠していたが、瑞々しい白くて細い足と誰もが恋してしまいそうなほどの麗しい顔立ちが隠れることはない。

 海水浴客から出る賛美の声にも月夜は動じることなく、まっすぐ歩く。


「あっ!」


 月夜と目が合った。

 その瞬間月夜の表情は綻ぶ。


「太陽さ~ん!」


 トタトタと月夜は砂浜を歩き、近くまで来ると僕の胸に飛びついてきた。

 パーカー越しとはいえ月夜の柔らかい胸が僕の素肌に当たるのだ。これは心地よい。


「待たせてごめんなさい」

「大丈夫だよ」


 抱きついてきた月夜を1度下ろして、その肢体をまじまじと見つめる。

 いつもは背中まで伸ばした月夜の髪だが、今日はツーサイドロングでまとめている


「その髪型すっごくかわいいよ、月夜」

「ほんと!? やったーっ!」


 月夜と僕のやりとりで海水浴客も僕達の関係が彼氏彼女であることを察したようだ。

 口々にうらやましいだの、釣り合ってないだろ、俺の方が合ってるなど想定していたことを口々に言われる。


 ふん、ざまぁないな。

 そんな誰もがうらやむ最高に可愛い月夜は僕のことが好きなんだ。烏合の衆の言葉なんて関係ないね。

 月夜は僕のことが好き。それだけでどんな罵倒暴言も気にならなくなる。


「太陽さん、口を少し開けてください」


 月夜はちらっと後ろの烏合の衆を見る。僕は言われるがまま口を開かせると、首を戻す勢いそのまま口を奪われた。

 唇ではなく口だ。これが指すことは1つのみ。ディープな方なキスである。

 強く、強く、舌から歯茎まで全てを浸食するように月夜の舌が口内を駆けずり回る。

 呼吸の限界に達した瞬間、ばっと解放される。今回は腰が抜けなかった。


「ふふ……満足」


 月夜は口を手で拭いやや興奮した状態で息遣いも荒い。

 僕は正直ディープな方は得意ではないので月夜にやられっぱなしだ。


「月夜……いきなりこんな所で」

「これで、私がどれほど太陽さんを愛しているか伝わったでしょ」


 そういえば後ろの海水浴客の声が沈んでいる。僕達のやりとりを見て、驚いたのか恐れをなしたのか……。

 そうか。こういうことをしないと月夜が声をかけられるリスクが発生してしまうのか。これで少なくとも僕が側にいる間は声をかけられることはないはず。

 子供には悪い影響な気もするけど。


「太陽さん、人が少ないとこに移動しましょ」

「ああ、でも少しだけ気にいらないことがあるな」

「え?」

「月夜、力を抜いて」


 僕は月夜の手を引っ張って、こちらに寄せて、両手を月夜と背中と足に持って行く。

 そのまま力を入れて月夜をお姫様だっこをした。


「僕が月夜を愛していることを伝えないと意味ないよね」

「は~い」


 これが正解なのかは分からないけど、月夜をゆっくりと持ち上げて僕は海水浴場の奥の方へ向かった。

 誰にも僕達の邪魔はさせないさ。



 ◇◇◇



 ブルーシートを敷いて、借りたパラソルをボールに立てて休憩スペースの完成だ。

 まわりには僕達以外に人はいない。遊泳にはあまり適していない場所だけど、どうせそんなに長い時間泳がないし問題ない。


「月夜、暑くない?」

「はい、影になってるので大丈夫ですよ」


 真っ白な肌の月夜に日焼けは厳禁。でも日焼けした月夜もかわいいはずだから見てみたい。

 でも紫外線も強いし、日焼けクリームをしっかり塗った上で泳がないといけないよね。


「よいしょ」


 月夜はパーカーを脱いでブルーシートの上にたたんでおく。そして僕にその圧倒的な美しい肢体を見せつけた。


「おおおおおおおおお」

「驚きすぎですよ」


 圧倒的だった。

 交際してから何度も味わったその美しい肢体は完璧といっていい。

 ブルーのビキニは月夜の白い肌によく似合っており、この体を独占できることの素晴らしさに泣きそうになった。

 お腹のくびれは見事なもので余計で形の悪い脂肪何一つとしてない。


「また大きくなった?」

「誰かさんがいっぱい揉むからですね」


 あきらかに1年前に見た時より胸が大きくなっている気がする。ビキニだから強調されているだけなのかもしれないけど圧倒的なバストに満足だ。

 月夜はブルーシートの上に寝転んだ。


「太陽さん、お願いしますね」

「な、何をかな?」

「……さっきからず~と日焼け止めクリームを持ってるから塗りたくて仕方ないんだと思ってました」

「そんなことないよ」

「じゃあ、自分で塗ります」

「塗らせてください! お願いします」


 この日のために日焼け止めの塗り方は勉強しまくってきた。

 今回の旅行の楽しみの1つだったんだよなぁ。グループのみんなと行く時は頼めないけど、月夜と2人旅行であれば何の問題もない。

 その月夜の体を精一杯楽しませてもらおう。


 ブルーシートの上で背中を向けて月夜は寝転ぶ。

 力を抜いて、全てを預けるように開放してくれる。しっかり、入念に塗ってあげなきゃな。真面目にやろう。


「太陽さん、顔がもう完全に犯罪者ですよ」

「失礼な、そんなことを言う月夜はこうだ!」

「にゃっ! つめた!」


 今回選んだのは日焼け止めクリームではなくローションだ。

 たっぷり持ってきたから遠慮なく使わせてもらおう。

 ローションを月夜の背中に下ろしてゆっくりとのばしていく。

 綺麗な背中だ。シミ一つのない真っ白な背中。同性ですらここまで触らせたことはないはず。


「んん! で、でも何か……きもちいい」


 日頃家事などで疲れている月夜のためマッサージも兼ねているのだ。

 決して月夜の肌を触りたかったわけではない。月夜の体を思いやる。

 それが1番大事だよね。


 そして圧倒的な弾力を誇るふとももへ到達する。

 この数ヶ月このふとももにどれだけお世話になったことか。僕の頭を何度も乗せて疲れただろう、ふとももさん、のんびりしてください。


「意外に普通に塗りますねぇ……もっとえっちなことしてくるかと思ってました」

「日焼け止めはちゃんと塗らないと意味がないからね。そこは弁えているよ」


 背中全体、足全体を塗って、次は肩から腕かな……おっとその前に塗らないといけない所があったな。


「これならかなり気持ちが……ひゃあん! ちょ、ちょっと!」

「どうしたの?」

「お、お尻はしなくていいでしょ!」

「こんな薄い水着なんだ。紫外線が貫通していてもおかしくない」

「絶対触りたいだけだ!」


 とっても柔らかい尻肉を揉み続けた。実に素晴らしい。水着の上からたっぷり、たっぷりと同じ所を揉み続けた。

 普段はこんな感じで揉まないからいい経験だ。満足です。

 そのまま肩や腕、首もしっかり日焼け止めローションを塗り込んだ。


「背面は全部塗ったよ~」

「ありがとうございます。お尻以外はすごく気持ちよかったです」

「そうか、そうか。じゃあ次は表面ね」

「えーーーー」


 目を細めて、呆れた声をあげる月夜ちゃん。確かに前面は自分で塗れるだろう。

 しかしそれでいいのか? よくはない。


「日焼け止めは誰かに塗ってもらった方がいいってどっかの論文に書いてあった」

「私は聞いたことないですけど、まぁもう……いいです」


 月夜は仰向けになってブルーシートの上で寝転ぶ。

 さぁ……楽しい時間の始まりだ。

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