155 Last Episode あの花畑で月夜と共に⑧
「シャーーーーー!」
あれから逃げられないように押え込んで脇腹とおなかまわりを徹底的に攻めていたらその内に泣き出してしまった。
解放してからもさすがに僕の胸の中に入ってこず、離れた場所で鋭い目と声で威嚇している。機嫌が悪くなった猫かな。
「もうしないから」
「絶対する! また私のことを絶対こちょこちょする。すごく楽しそうだったもん! 帰ったら水里さんに報告する」
実際楽しかった。月夜の求めるじゃれあいレベルのくすぐりと僕がやりたいくすぐりって違うんだよなぁ。
また変なあだ名付けられるから水里さんに話すのは止めて欲しいんだが。
月夜はかなり乱れた服を直しながらじっと僕を見つめる。
暴れ回ったおかげでスカートの中のピンクの下着を見ることができ、かなり美味しい思いをしてしまった。
「ほ、本当にツライんですからね!」
見りゃ分かるよ。
でも実は水里さんと星矢の3人で月夜をどうくすぐれば非常に良い声で鳴いてくれるかを研究していることを月夜は知らない。
どこかで研究成果を出してみたいなぁ。やっぱ縛って、目隠しするかぁ。
「なんかおぞましいこと考えてる」
「そんなことないよ」
「太陽さんはこちょこちょ効かないのがズルい」
僕はくすぐりに耐性がある。なので反撃されても何も怖くない。反撃しようものなら徹底的に攻めるまでだ。
「しかもドサクサに紛れて胸とかお尻とか触るし!」
「わ、分かったの!?」
「超びんかんなのですぐ分かります!」
ちゃっかりのセクハラはできないということか。
でもこれ以上は亀裂が入るので止めておこう。
えっと服の話だったかな。
「服は……彗香にレクチャーしてもらったんだよ」
「むー、嘘のにおいがしますけど今日はそれでいいです」
何で嗅ぎ分けちゃうの!?
大人になって夜の店とか行くと絶対バレそうだな。これ。
「それからモール街を一緒にまわったよね。クリパのプレゼントとか買ったね」
「クリスマス。あ! 太陽さんからのクリスマスプレゼント 【空を目指して姫は踊る】の初版本ですけど、あれどこで見つけたんですか?」
「え? あれは普通に古本屋だよ」
「この街近くの古本屋全部まわりましたけど見つからなかったですよ」
あ、ああ……そういうことか。てっきり女性関係の話かと思ったけど今回は普通の質問のようだ。
「県外の古本屋とかも見にいったんだよ。それでたまたま見つかって」
「県外!? 何でそこまで……」
「月夜がほしがってたから」
「え?」
う、これはちょっと恥ずかしいんだけどいいや。
「これだったら絶対月夜が喜ぶって分かってたから意地でも探してやろうと思ったんだよ! 君が喜ぶ顔を見たかった」
何とか言い切ったら月夜が立ち上がって、走って近づき、僕に抱きついてきた。
「大好き、結婚して」
「まだ早いって……」
再び僕の胸の中に戻った月夜。機嫌は直り、にこにこしている。
さっきまでの警戒はどこにいったというのか。
口には出せないがチョロいな……。
でも……。
「月夜はかわいいなぁ」
「でしょ! でしょ!」
クリスマスはある意味最初に選択を間違えた時なのかもしれない。
夕方に月夜と一緒に自然公園に行って……遠回しな月夜の想いを聞いたんだっけ。
「クリスマスは……本来であれば幸せいっぱいになるはずだったけど、僕達にとってはあまり良い思い出ではなかったな」
「太陽さんに明確に告白するなって言われたようなものですからね」
月夜の出した友達の話に便乗して、今の関係のままでいたいと月夜に我慢を強いてしまった。
あの時は浅い考えで月夜を傷つけてしまったな。
「今でもやっぱり釣り合いとか感じますか?」
「無いと言ったら嘘になるかな。月夜がかわいいほどそう感じてしまう。でも」
「でも?」
「月夜を抱いてるとどーでもよくなる」
「やっぱり太陽さんて想定の5倍くらいえっちですよね」
僕は月夜が想定の20倍くらいえっちだと思うよ。
こうやって仲良く、好きな人とずっと一緒にいること。それが1番大事なんだと思う。
本当に過去に戻って説教したいな……。
「クリパで僕と星矢が先に帰った時、女性陣で泊まっていったんだよね」
「九土先輩のお家、すごかったですよ。たくさん部屋があって、お風呂も大きくて。ちょっとお兄ちゃん結婚してくれないかなって思っちゃいました」
「僕も同じこと考えたよ。女の子だったらそのまま泊まったのにな」
「駄目ですよ!」
月夜は振り向いて強い口調で声をかける。
「太陽さんが女の子だとお兄ちゃんに惚れちゃう!」
「……」
「無言!? はっ! 逆だ! 兄が女になったら太陽さんが惚れて、私捨てられるぅぅ!」
「まずありえないからね」
多分惚れてたと思う。
それに星矢が女になったら月夜の姿でクール系美女になるんだろか。それやばくない? どんな姉妹になるだろうねぇ。
まっ、女はあくまで仮定の話だ。星矢は男だし、僕は女の子、つまり月夜が大好きなんだから。
「メインはやっぱりお兄ちゃんの恋愛話ですね。一部太陽さんと男同士を推奨してる人もいましたけど」
「誰が言ったか分かるからいいや。まぁ8人中6人が星矢に好意があるからね」
「私と太陽さんの話も話題に上がりましたよ。ふふっ」
初詣前に九土さんから忠告されていたからきっとあったんだろうなと思っていた。
「みんないっぱい相談にのってくれました。確か、太陽くんはヘタレ。山田は意気地なし。山田先輩、ちょっとやばい。山田さん、男にしか興味がない。や~まだはつーちゃんの体にしか興味ない。山田くんは情けないな。先輩の根性なし! っていうのを聞きました」
「うん全員だね!」
「でも私は否定し続けましたよ。太陽さんにも考えがあるからって……。私は信じていました」
月夜はニコリと笑みを浮かべた。
「月夜、大好きだ」
「にゃは!」
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