151 Last Episode あの花畑で月夜と共に④

 

 月夜の肩に手を置いた。


「あの頃から太陽さんが完全に好きって確信しましたね。迷子の子供を助けた時に私を呼んでくれて、太陽さんって私のこと特別に想ってくれてるんだって嬉しくなりました」

「特別も何も大好きだったからね」

「私は知らないですもん。もっと太陽さんから積極的に来てくれないのが悪いんです」

「そ、それはその通りだね。ごめん」

「謝らなくていいので、お詫びにキスしてください」


 後ろを向く月夜にキスしてあげた。この後何回キスしなきゃいけないんだろうか。

 思い返すだけで月夜に詫びなきゃいけない案件が多すぎるんだが。


 それから夏期講習で特進科の生徒だけで学校へ行ったよね。


「一緒のお弁当のたびに僕の側に来たのはやっぱり……」

「何のために上級生の教室に行ったと思ってるんですか。私は海ちゃんや木乃莉以外にも友達は多いんですから」


 やっぱり僕に会いに来るのが理由だったのか。うぅ……もうちょっと早く親愛の好きか、恋愛の好きか……判別していれば……。


「美化委員の仕事で花壇に水をあげたあの時も」

「わざわざ太陽さんに近づくために無理言って美化委員の子と交代したに決まってるじゃないですか。私ってすごく健気!」


 悪い気がしたので優しく抱きしめてあげることにした。

 星矢を鈍感だなんて馬鹿にできないよなぁ……。


「あ、陸上部のマネージャーになったのもあの頃」

「ちょっと待ってください」


 月夜の声が大きくなる。


「その日の昼に大事なことありましたよね」

「あ、あったっけ?」

「私が告白されるから校舎裏に呼び出されて、それを覗いていた太陽さんと後に話をしましたよね? あのとき私になんて言ったんでしたっけ」


 月夜さんが振り向かず、まっすぐの視線で言葉を話す。これ絶対怒ってるよね。このあたりの僕の対応がひどすぎる。

 いや、これからもか。


「わ、忘れちゃったな」

「僕は君の恋を応援する。君の力になるよ……月夜の兄貴の親友として」


 僕すらもわずかにしか覚えていないのに、一字一句完璧に覚えてるキミは何なの。


「太陽さんは誰が好きなんでしたっけ」

「月夜さんです……」

「ふふふ、今度太陽さんに何してもらおうかなー。キスだけじゃたりないですよねー」


 こんな話するんじゃなかった。

 さっきから胸がズタズタに切り裂かれている感じがする。


「あれでショックを受けて、アタックするのを控えようかと思ったんです」


 僕が応援すると言った後、月夜は目を伏せて、帰っていったのを覚えていた。


「でも兄を好きなみんなも1度は告白をして、ふられて、でも諦めずにアプローチしています」


 星矢を好きだった女の子達は大半1度星矢に告白して振られて、でも諦めずにアプローチをしていた。僕は1度フラれて同じ人にさらに行こうと思えるだろうか。

 彼女達は本当に強い。そう思えるよ。


「だから私ももうちょっとアプローチすることにしたんです。今までが駄目だったらもっと強めにぐいぐい行こうって思ったんです」

「それで陸上部のマネージャーになったのか」

「結構楽しかったですけどね。太陽さんが引退しても続けるかは迷いますけど……、陸上部にも結構思い入れが出来ちゃいましたしね」

「月夜にイイトコ見せようとしてちょっと成績も上がったしね。可能ならいてくれると助かる」

「は~い」


 これで陸上部のマネージャー問題は何とかなるかな。正直夏で引退するからその後辞めそうで怖かったんだよね……。


「その後、本格的なデートですよね~」

「あの時は九土さんに相談してたんだっけ」


 夏の1回目のデート。あの時の月夜は本当にかわいかった。着飾ってメイクまでして……あれが僕のためと思うと今思い出しても照れてくる。


「グループ以外の人には相談できないですからね。それで九土先輩に話をしてみたんです」


 九土さんはお嬢様で対人慣れもしてるし、うって付けなのだろう。

 月夜をかわいがってたからヤラシイ笑顔で対応してそうだ。


「この時点ですでに両想いなのにデートの練習って今思うと意味が分かりませんね」

「この時はまだ月夜のことは親友の妹って印象が強かったんだよ。すっごい見惚れてたけど」

「手を組んだら真っ赤になってましたもんね」


 僕の記憶が正しければそれは月夜だったような気がする。

 それでいろんな場所にいって夕方公園で話をしたんだっけ。


「でもあの時の月夜の写真はすごくよかったよねぇ」

「ああ、告白してくるかと思ったら写真撮らせてくれとか言われて、私が愕然とした時ですよね」


 思ったより冷たい対応だった。

 ああ、やっぱりそんな風に思ってたのか。


「あの時、告白してくれれば私はうんと言ってたのに……。むしろ私から告白すればよかったのかな」

「ま、過去の話だしね」

「その割に 今まで見た女性で一番綺麗だったとか この月夜は……今日一番綺麗だったよとか言って私を悶えさせた件はどういうことですか」

「本当申し訳ないけど、その記憶力何とかならない!?」


 話をするたびに僕のメンタルが削られている気がする。

 どこか……どこかでカウンターできるところはないのだろうか。


「1人だけ誰よりも優しく、尊敬できる先輩……友人がいます。その人に頼んでみます」

「!?」

「その後の話だっけ」

「誰から……満里奈先生ですね! あの人もう!」


 幼稚園のアルバイトをした時の話だね。月夜が僕に依頼をする前に幼稚園の先生に言った話らしい。

 月夜は頬を赤くした。


「男手が欲しいって言われて、兄はバイトだし、そうなったら太陽さんしかいないじゃないですか」

「誰よりも優しく尊敬できる……か」

「好きな人なんだから当然じゃないですか!」


 うっ、そこまで直に言われるとさすがに照れる。


「あのときほっぺにチューしたのも初めてだし」

「あ、やっぱり指サックじゃなかったんだね」

「だってしたかったんだもん」

「ふわぁ」


 やばいかわいすぎて変な声出た。今だったら絶対ディープなキスされてるな。

 罰ゲームでほっぺにチューという内容の物が出て月夜が僕にしてくれたんだよな。

 あの時はチューじゃないって押し切られて、でも好きな子にチューらしきことをされたらもうベタ惚れだわ! 悶々だったわ!

 その後は……。


「夏祭り」「夏祭り」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る