152 Last Episode あの花畑で月夜と共に⑤

「夏祭り」「夏祭り」


 2人の言葉が重なった。


「今だから言えますけど、あの時の太陽さんの浴衣、すっごく素敵でしたよ」

「それより月夜の花火を表した浴衣の方が圧倒的にかわいかったけどね」

「そんなことないもん」

「みんなかわいいって言ってたじゃないか」

「烏合の衆なんてどうでもいいです」

「結構厳しいな……」


 本当に他の男子のことをどうでもいいと思っていそう。それはそれで同性としてかわいそうな気がする。

 月夜を好きだった男って本当に多いからな。成就しなかった人が99%以上なのだし。


「みんなとはぐれそうになった時に私を引っ張ってくれたじゃないですか」


 夏祭りでみんなとはぐれそうになったときに月夜の腕を引っ張って、引き寄せたんだよなぁ。


「あれはたまんなかったです。胸がきゅんきゅんしました。今だったら人目もはばからずキスしまくってます」

「お願いだから学校関係者の前ではやめてね!」


 2人で屋台を楽しんで、花火を見たよなぁ。


「ずっと手を繋いでたもんね」

「手放したくなかったんです。太陽さんが差し出した手を絶対に離したくありませんでした」

「ふふ、ありがとう」

「今だって……離したくありませんからね」


 少しだけ手を繋ぐことにする。月夜の手のひらは本当にスベスベだ。ここに来るまでもずっと握っていたけど……もっと握っていたいな。


「ふふ、花火と私どっちが綺麗ですか?」


 月夜は振り向いて口にした。

 前もその質問があったよね。花火を見ながらでどんな回答をしたかちょっと怪しいけど。

 でも今度ははっきりと言える。


「月夜だよ」


 それから2学期始まった。

 最初の土日はみんなでプールに行ったっけ。


「月夜の水着写真だけがないんだよな」

「もう……えっちなんですから」


 あの白のビキニは素晴らしかった。でも半年近く経つから記憶が。


「今年の夏撮ればいいじゃないですか。でも他の人には見せちゃ駄目ですよ」

「その通りなんだけど……あの水着を着てほしくないってか」

「え? 似合ってなかったですか?」


 少し月夜の声のトーンが下がる。


「僕以外に月夜の肌を見せたくない。月夜の体は僕のものだ」

「うぐっ!」


 月夜の体をぎゅっと抱きしめて、耳元でつぶやく。


「いきなりはズルい。そんな胸にぐっと来るセリフ言われたら守らなきゃいけなくなるじゃないですか」

「ま、まぁ無理には言わないよ。着たい服や水着だってあるだろうし」

「いえ、私は古来の女性、夫より3歩下がって歩くを心がけてますので太陽さんが望むなら守ります。私は従順な女ですから」


 とてもそうには思えないといったら怒られるだろうか。

 鬼の如き嫉妬深さと体を張って男を誘う性、我慢が解き放たれた時の怒濤の口撃は古来の女性とまったく結びつかないんだよな。


 でもかわいい。愛しい。


 だから他の男に月夜の肌を見せたくないってのは事実だ。そこだけはわがままを言わせてもらおう。


 でも……、でも……。


「次だけは写真を撮りたいからビキニでお願いします」

「ブレブレじゃないですか!?」


 1回だけちょっとだけ、先っちょだけの精神なんです!


「もう! それで……その後はやっぱりハイキングですよね」

「ああ、あれは楽しかったな」


「お弁当」「月夜の髪の毛」


 月夜さんがあらぬ顔で僕を見つめる。

 いや、月夜のお弁当も本当に美味しかったよ。

 それ以上にケアされた月夜の髪の毛が神ががかっていたんだ。

 後ろから月夜の髪に触れる。


「でもあの時に比べたら……、十分綺麗なんだけど」

「あの時は本気で手入れしてたんです! 太陽さんが髪を触りたいっていうからちょっとお高いシャンプーとか買って手間暇かけたんですよ!」

「は、はい! ごめんなさい」

「さすがにあれを四六時中は無理です。今だってそれなりに手入れしてるんですからね」


 背中まで伸びた髪の質を維持するのは本当に大変なんだろう。変なこと言っちゃったな。


「ごめんね月夜」

「ぶー」

「あの時も今日もお弁当、すごく美味しかった。ずっとずっと食べ続けたいよ」

「え、プロポーズですか?」

「気が早いよ」


 でも本気で受けてくれそうだな……。

 月夜の可愛さ、スタイルの良さ、料理上手で家事万能、頭脳明晰で僕を立ててくれる。


 普通に考えたらもう奥さんにしたいNO.1でしょ! まだ17歳だから無理なんだけど、早めに行動に移したい。

 大学中……う~ん。


 僕はこの時から人生計画を考え始めた。

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