126 太陽から月夜へ

「月夜、じゃあ……次は僕の番だ」

「太陽さん?」


 女の子から告白させて、僕も好きですはい終わり……なんてできるものか。

 僕は月夜が僕を好きになるもっと前から月夜のことが好きだったんだから。

 でも僕の初めての告白を……うまく伝えられるだろうか。


 月夜は頬を赤らめ、淡い笑みを浮かべる。僕が何をしようとしているのか、月夜は分かっていない。

 そんな月夜に僕は全てを伝えたい。大きく息を吸った。


「君と初めて出会ったのは1年の夏前だったよね」

「はい、部活帰りとお兄ちゃんのバイト帰りが重なって家に来てくれましたよね。今でも覚えてますよ」


「ふふ、そうだね。その時に初めて月夜と出会って僕は」


 心の奥底に沈めていた気持ちを全て表に出す。


「君に恋をした。一目惚れだったよ」

「えっ」


 構わず僕は続ける。


「知らなかったと思うけど、1年半も前から僕は君を想っていたんだ」

「え? え……」


 月夜は動揺している。やっぱりこの夏以降に僕が月夜を好きになったと思ってたんだな。違うよ。もっと……もっと前からなんだ。


「当時の僕は臆病でさ。星矢との友人関係もあったし、月夜に変に誤解されたくなくてずっと避け続けた」


 月夜は頬を赤くしてじっと僕を見る。話はこれからだ。


「月夜は僕にとって高嶺の花だったからね。好意を出して困らせるくらいなら……その気持ちを封印しておくべきだと思ったんだ」

「そんなことないです。私だって……ただの女の子なんですよ」


 かぐや姫なんて言われて、告白成功率1/1000以下の女の子だぞって思うけど、この半年、月夜と一緒にいたらそう思うよな。

 ただちょっと空回り気味だけど普通の女の子なんだ。


「でも退院してから……月夜からアプローチを受けてすっごく困惑したよ。正直疑問の方が多かった」


 それは月夜が僕のことを好きだってことを聞いてしまったからなんだけどね。

 好きなのかすきなのか分からなかった。まぁ……結局恋だってことは分かった。


「それでも僕は月夜の恋を受け止めることができなかった。僕は月夜の横にいる自分を想像できなかったからだ」


 月夜の目線が下がる。

 ここまでは月夜も分かっている情報だ。


 そう、ここからなんだ。


「でもそれだけじゃなかった。僕は怖かったんだよ。恋を受け止めて……付き合って、月夜に幻滅されるのが怖かったんだ」


 月夜の表情が急変する。


「私はそんなことしません!」

「分かってるよ。いや、違う…‥‥分かってなかった。あらぬ月夜を想像して怯えていたんだ。でも」


 一度呼吸を置く。


「月夜にバレンタインデーの日、感情をぶつけられて……僕は嬉しかったんだ。月夜がこんなに僕を想ってくれてることが嬉しかった。

 そして今も……やっぱり嬉しかった」


「太陽さん……」


「もう釣り合いとかさ、幻滅とかさ……どうでもよくなっちゃったよ。君が望むことを僕もしたい。わだかまりなんて消え失せてしまった」


 言葉をさらに続ける。


「手を握りたい、腕を組みたい、抱き合いたい、キスだってしたい、君の髪を撫でまわしたい、写真を撮りたい、体中くすぐって悶えさせたい、君の作った料理を毎日食べたい、かわいいなんて毎日言ってやる。綺麗だって生涯言ってやる。他の女なんて見るものか、月夜さえ見れればそれでいい!」


「は……はぅ」


 月夜は顔を真っ赤にする。そんな顔もかわいい。もっとそのかわいいを見たいんだ!


「僕は月夜が世界の誰よりも好きなんだ!」


 僕は月夜の両腕を掴んだ。今日、僕は月夜にこの言葉を伝えるため……ここに来た。


「君が好きだ。本当に好きだ! 初めて会った時からずっとずっと好きだった」


 一度息を整える。これで最後。


「神凪月夜さん、僕はこれからの学園生活を君と一緒に過ごしたい。僕の側で……ずっと笑っていて欲しい、だから僕と……」




「僕と付き合って下さい!」



「あっ……」


 月夜は表情を緩め、二重の瞳から涙がポロポロと流れだす。

 僕は思わず掴んでしまった手を離した。

 月夜はその涙を拭おうをはせず……そっと言葉を繋いだ。


「はい! ずっとあなたの側で笑顔でいさせて下さい」


 月夜のその涙で濡れた笑顔はあの何よりも美しかったあの浜辺の時より……数倍も魅力的だった。

 ……ああ、素敵だ。

 ……大好きだ。

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