104 来週の準備①

 1月も最後の日となった。

 冬の寒さも厳しくなり、時々雪も降ってくる。

 今日はとってもとっても大事なコトがあるのです。


 集合場所の駅前で30分前から待ってるが誰もこない。やはり1時間前に来ていた月夜はありえなかったよなぁ。

 思い出して少し笑みが出てしまう。


「せんぱーい」


 集合時間の10分前に今回集まるメンバーの1人世良海香せらうみかさんがやってきた。

 茶髪のミディアムヘアーのこの女の子はいつも平然としており、心臓に毛が生えたような女の子だ。

 競泳のスペシャリストで次期自由型のオリンピック候補と言われており、かなり忙しい毎日を送っている。

 世良さんは1年生の中でも月夜に次ぐ人気の女の子で、男子女子と問わず愛されているようだ。確かにかわいいもんな。

 白のダウンジャケットも良く似合っている。


「せんぱいのためにおめかししたんだよ」


 世良さんはポーズを決めて、僕にアピールをする。


「月夜とあたし……どっちがかわいい?」

「月夜」

「先輩って最近性格悪くなったよね」


 女性に対する耐性がついてきたのは間違いない。

 そんな話をしていると慌てた様子の女の子が走って近づいてきた。


「ふぅ……遅れてごめん」

「大丈夫だよ、北条さん」


 かなりの距離を走ってきたのだろう。北条さんは額に汗がにじんでいる。

 まだ約束時間3分前だ。間に合ったのならOKだろう。

 北条火澄ほうじょうかすみさんは同じクラスの体育科の女子だ。

 飴色のショートヘアーの彼女は170センチの体躯を持っており、綺麗な顔をしているがマニッシュ的な言葉使い、仕草をする。

 多分僕より男らしくて、でもとっても女らしい子だ。

 彼女も女子硬式テニスで全国優勝を目指して、日々部活動が忙しい女の子だ。


「あとはひーちゃんだけ?」

「そうだね。連絡も来てないし、来ると思うんだけど」


 約束時間が過ぎたがもう一人が来ない。

 もう少し待つことにしよう。


「火澄先輩、聞いたよ~。また大会で優勝したんだって?」

「有力なプレイヤーがいなかったからね。あんたも大会新記録出したって聞いたけど」

「試合前に食べたカツのおかげだねー! 月夜のお弁当のおかげかなー!」


 運動部最強の会話は恐ろしい。ちなみに先週に僕も試合があったが地区大会予選落ちです。

 普通はこんなもんだよ。どんな体の構造してるのやら。


「それにしてもいよいよ来週だね。休養日と重なってよかったよ」

「あたしもー! 月夜のあの日に参加できないなんて親友としてあっちゃならないからね」


 そう来週2月7日土曜日は神凪月夜の16歳の誕生日だ。そのお祝いにかこつけてみんなで旅行へ行く。

 主催者は生徒会長兼大金持ちのお嬢様である九土原彩花くどはらさいかさん。何とスキー旅行に旅館まで手配してくれるという大判振る舞いだ。

 金持ちってすげぇわ。


 今回当日夜にあるお祝い会でちょっとしたイベントを行う予定である。

 そのイベントの練習をするために僕が取りまとめをして世良さん、北条さん、ひーちゃんを集めた。

 誕生日会自体は誰かが誕生日を迎えるたびにちょっとした会を行っている。旅行はさすがに初めてだけど。


「他の面々に任せちゃって申し訳ないね。準備は進んでるの?」

「うん、話を聞く限りは問題ないよ。企画班も料理班もね」


 北条さんの問いに僕は頷いた。

 月夜誕生日旅行の企画は九土さん、弓崎さん、瓜原さんで行い。向こうでの夕食の一部を星矢と水里さんと月夜で作るらしい。準備も含めて前から動いているらしい。

 主役が料理する方って変な話だが、この誕生日会はサプライズじゃないので当然月夜だって手伝いたいわけだ。準備の段階が一番楽しいというしね。

 あとは誕生日プレゼントの購入と向こうで行うイベントがちゃんと成功すればいい。


 世良さんも北条さん、あと今いないひーちゃんは日常があまりにも忙しく、準備に時間を取れないため、短時間の参加でOKのこのイベント班にしている。

 失敗したって命取られたり、仕事なくなるわけじゃないからね。

 今日と旅行に行く2月7日、8日の土日が彼女達に対してもいい休養日となればいいね。


「ひーちゃん先輩来ないなぁ」

「来てるわよ」


 僕達3人は振り向いた。

 これが芸能人のオーラ。人気アイドルグループ【Ice】のメンバーであるひーちゃんこと天野日和あまのひよりはいつのまにか側にいた。

 サングラスと帽子で顔を隠しているが綺麗にウエーブがかけられた長い金髪は隠そうと思っても隠せていない。

 ひーちゃんはサングラスを取って圧倒的な存在感を見せつけた。


「変装してたのか。アイドルは大変だね」


 北条さんの問いにひーちゃんは言葉を繋げた。


「ま、これも人気者の宿命ね。最近テレビ出演も増えたから仕方ないわ」

「うおおおお! 芸能人、先輩ぱないっす!」


 テレビ出演も増えて、人気急上昇中だ。

 その風格に世良さんも感動し、持てはやす。もともと調子に乗りやすいひーちゃんはまんざらでもない。だが僕と北条さんは苦笑いだ。


「(昨日、成績がやばいって星矢に泣きついていたのにねぇ)」

「(1年は騙せてもあたし達は……普段のこの子を知ってるからね)」


 小声で話しをする。聞こえるとめんどくさいからな。

 テレビ出演が増えて、出席日数がやばく、さらにテストもやばいひーちゃんは留年寸前です。マジでどうする気なんだろう。

 このあたりきっと星矢が何とかするんだろう。そのエピソードはまたどこかで。


「みんな集まったし、さっそく行こうか」


 僕達はイベント班として……ある所へ向かい、練習をするのだ。

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