092 コスプレ③
朝は売り子に専念していたため、いまいち会場の雰囲気を掴めずにいた。
やはり全体的に女性が多いが所々男性もいる。売っているものはだいたい似たような物だが……。
一般向けとはいえさすがに購入する気にはならないが、作者間同士の交流や、読者達が本を両手にはしゃいでいるのは見ていて楽しい。
ちなみに弓崎さん、瓜原さんのサークル名はK.Kである。下の名前を取って、コノとキノで活動してるらしい。
あの有名な作品の作者が美少女で女子高校生だった!? 例の冊子を持つ大人のお姉さん達がそんな言葉を漏らしていた。
作品の良し悪しは置いておいて友人が評価されるのは嬉しいね。これが僕や星矢をモチーフにした作品でなければなぁ。
「ま、待つのじゃ!」
待つのじゃ? 震えた声で僕を呼び止める声がする。
振り向くと大層綺麗なお嬢さんがいた。実に僕好みの顔で僕好みの体つきだ。
「妾の名はいなり! ご主人様に会いに来たのじゃ!」
白衣に緋袴というオーソドックスな巫女服に身を包み、長い金色の髪はおそらくカツラだろう。入りきらない栗色の髪が見えてるし。頭には明らかに後でつけた犬耳のようなものがあった。とりあえずかわいいのは間違いない。
「何やってるの月夜って言いたいとこだけど、いなりちゃんのコスプレだよね。すごく似合ってるよ」
「そうですか! かわいい衣装だなって思ってって違うのじゃ、今の妾はいなりなのじゃ!」
わざわざ成り切る必要はあるのだろうか。
このコスプレは大人気小説の【それは私のおいなりさん】のヒロインのいなりちゃんの格好だ。一途で旦那様を支えるキャラでその愛らしさが人気だ。やっぱりかわいい。
「旦那様にさぁびすしたくてやって来たのじゃ」
瞳を潤ませた上目遣いで月夜は甘えた声を出す。
こんなセリフを言われるとまぁなんかやばいな。語彙が出ない。
「旦那様には身も心も捧げるんじゃ」
「本当に身も心も捧げてくれるの?」
「そ、その時と場合にもよりますけど……」
所々素に戻るのが面白い。ぐいっと顔を近づけると月夜は顔を赤くして体全部後ろに背ける。
巫女服もほんとよく似合うな。こんな女の子が巫女やってる神社があったら人が増えるだろうなぁ。
僕はストラップで首からかけているカメラを手に取った。
「ならば写真を撮らせるとよい。身を我に捧げよ!」
「いつもどおりじゃないですか」
写真は一応スペースがあるのでそこで撮るのが基本だ。売り子の時のように本人了承ならある程度決められる。
「あ、いたいた! あなたが彼氏さん? すごいいい素材よね、彼女」
この人が月夜にコスプレをさせていた女性か。さっき弓崎さんや瓜原さんと話をしていた気がする。
「彼氏ではないんですが……」
「サンの格好もよく似合ってるじゃない。私の見立ては正解ね」
なるほど、この人がサンやスターロの衣装を作ったのか。女性の衣装ケースからたくさんのコスプレ衣装が出てくる。
「さぁ、月夜さん。あと10着あるからどんどん着替えていって」
「そんなにあるんですか!?」
そんなにいろんなコスプレをした月夜が見れるのか。
鼻血が出そうだ。
まず、撮影スペースでいなりちゃんの格好をした月夜を何枚か撮る。
僕の秘蔵の月夜のフォルダが充実していくなぁ。
「ヘイボーイ! やってく?」
銃を持ったカウガールの衣装を着た月夜。アメリカの荒野で馬を走らせてそうだ。
「看病しちゃいますよ」
次はピンクナース服で注射器を持っている。 胸元がきつくて形が思いっきり表れているのがなんともエロい。白いふとももが見えており、ナース服ってこんなにスカート短かったっけ。
「お命頂戴します!」
今度はくのいちの格好だ。栗色の髪を短く結って動きやすい格好となっている。
是非とも捕まえて、あんなことやこんなことをしてみたいな。
「一緒に帰りませんか」
セーラー服! ウチはブレザーだけどセーラー服もやっぱり似合ってるよなぁ。
女子はたくさんの制服があればいいのに……。
「ジャ、ジャックポット」
バニーガールだ! 際どい服のようで胸元がかなり空いている。
月夜は恥ずかしそうに手で隠しているがその成長したたわわなものは隠しきれない。
本当にスタイルいいよなぁ。最近、冬の着衣で体型が隠れるから、やばい興奮しちゃう。
それからもポリス服、メイド服、他にもアニメ、漫画のキャラをモチーフにした衣装を月夜は着ていった。
どれも素晴らしく似合っていた。僕のシャッターの切る音が止むことはない。
「うーん」
「どうしたんですか?」
「最後の魔女っ子衣装があるんだけど、3人揃ってる所が欲しいのよね。かわいい女の子の知り合いいない?」
「いますよ。呼びましょう」
僕は復讐と個人的感情も込めて、今日の主役達を呼びつけた。
やってきた弓崎さん、瓜原さんは抵抗したが衣装を作った女性や月夜に丸め込まれて渋々コスプレを了承した。
さて、3人の姿をしっかり納めてグループに転送しよう。
「れっつ、まじかーる!」
ピンクに衣装に身を包んだのは月夜だ。もう10着以上着ているので慣れてきたのだろう。
ノリノリだ。日曜朝にやるアニメで、昔妹がよく見ていたなぁ。
魔法のステッキにフリフリの衣装。実に良い。
「は、恥ずかしい」
瓜原さんが出てきた。150センチほどの小柄な彼女は月夜を背に恐る恐る出てきた。
目新しいからすっげー新鮮。青を基調としたフリフリのドレスがばっちり似合っていた。
月夜は構わず恥ずかしがる瓜原さんを前に出した。
僕は瓜原さんにファインダーを合わせる。
「いいね、いいね! 大丈夫、ちゃんと
「それはやめてください!!」
最近、下級生の遊佐天とかなり親密になってるらしい。星矢への熱も以前よりは下がってるとか……。好かれてるってのが大きいよね。
最後に弓崎さんだがなかなか出てこない。衣装を作った女性に無理やり押し出されてやってきた。
「な、なんじゃこりゃ」
僕は口を開けて……呆然と見ていた。
弓崎さんは黄色を基調としたフリフリのドレスだ。いつもは長くしている黒髪をツインテールとしていて、とてもかわいい。それはいい。
それよりも恐ろしいのは暴力的なバストだ。彼女がグループでNO.1なのは知っていたが今にもはちきれそうじゃないか!
弓崎さんも瓜原さんと同じぐらいの背丈だが、その恐ろしい武器にクギ付けになってしまう。
衣装を作った女性は口にする。
「ゆったりめに作ってるはずなんだけどね……」
「そりゃ、私より15センチも胸が大きいんですから当然じゃないですか」
「具体的な数値を出さないでください!!」
グループ最下位の瓜原さんが舌打ちするように言葉を吐き出す。
15センチと言われても……ベースの数値がわからないから何ともいえない。
しかし、この暴力。是非とも残しておかねば!!
僕は弓崎さんを中心にシャッターを切りまくった。そして……気づく。
「太陽さん……?」
真っ黒なオーラを出している月夜さんに気づいたのだ。
やべぇ澄んでいるはずの瞳が濁っている気がする。
「もう少し……胸を大きくしないと」
「月夜も充分大きいから」
月夜と瓜原さんの会話を聞こえつつも反応しないように僕は3人のコスプレを撮り続けた。
三者三様。各々の魅力がつまった写真に僕は満足です。
大好評のままこの日は終了したのであった。
※今回月夜が着た衣装「いなり」については藤原有様 作
それは私のおいなりさん〜嫁いで来たのは最強に可愛い神様でした〜 https://kakuyomu.jp/works/1177354054888767288
から了承の元簡易コラボさせて頂きました。
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