047 恋愛相談①
ある晴れた木曜日、陸上部の部活中、僕は1人寂しくトレーニングをしていた。
今日は月夜が文芸部の方に行くといっていたため、陸上部は露骨に元気がない。女嫌いを自称する部長ですら深い息をついている。
本来掛け持ちとはいえ、結構な回数で陸上部の方に行っていたからね。朝一緒に登校してるとはいえ、正直月夜に会えないのは単純に寂しい。
部の悲壮感がすごいため、1人学校の外周を走ろうと駆け出してみた。
何週か走った所でいきなり校門の方から女の子が飛び出してきた。やばい!
止まろうと頑張ってみるが限界があり、女性生徒とぶつかってしまう。
勢いはかなり殺せたのでケガはないと思う。そんなことを考えていたら女子生徒がすぐ立ち上がり走りだしてしまった。
「ごめんなさい!」
「お、おい! って瓜原さん!?」
ぶつかった女の子は知り合いだった。僕と気づかずにそのまま学校の外へ走っていってしまったのだ。
何か涙ぐんでる感じだったけど……、普段静かなイメージだったけど何かあったんだろうか。
気になったので学校内に入って彼女が走ってきた方向へ駆け出してみた。
いた。1人の男子生徒が手足を地面につけて落ち込んでいる。恐る恐る近づいてみるとこれもまた知り合いだった。
「天か……?」
「あ、山田先輩」
1年生の
端正な顔立ちが崩れており、呆然としている。
「さっき瓜原さんが走っているのを見たが何かあったのか?」
天の体がびくっと反応した。
「あったんだな」
天の性格上、多分襲ったりとかないとは思うけど……あの瓜原さんの表情も気になるし、共通の知り合いとして聞いておいた方がいいだろう。
天は少し落ち着いたようで立ち上がった。しかし表情は暗く、重い。
「言いづらいかもしれないが、何があったか教えてくれないか」
「あははは……簡単なことです。フラれたんですよ」
「え」
「僕は瓜原さんが好きだったんです。入学してからずっと……。それで今日きっかけがあって告白したんです」
あー、そっちの方かぁ。
ってかおまえ瓜原さん好きだったの!? てっきり月夜か世良さんに好意があると思ってたわ。
でも瓜原さんもかわいいし、おかしくはないよな。でも瓜原さんはまだ星矢のことを想っていたはず、そりゃ無理だよな。
「それで断られたのか」
「いえ…‥混乱させちゃったみたいで逃げられちゃいました。これって……フラれたってことですよね」
「どうだろう……僕は告白したことないしな。経験者に聞いてみるか」
「え?」
10分後
「それで私が呼ばれたんですか」
「月夜なら星の数ほど人をフってるから分かるかなと思って」
「さすがに怒りますよ!?」
まったくもう! と月夜はぷりぷり言うがその姿も可愛らしい。
だが実際瓜原さんの心理が分からないので月夜に来てもらうことは大切だと思った。天の恋心をバラすことになるのは申し訳ないけど。
「遊佐くんが木乃莉のこと好きだったなんて全然知らなかった。好きな子はいるってことは知ってたけど」
「誰にも言ってなかったんだ。友達にもね」
天はまだ気落ちしており、地面に座りっぱなしだ。瓜原さんに聞くのは天に話を聞いてからだな。
「まず、瓜原さんをここに呼び出して話をしたんだ。そしたら手紙もらうよとか言付でしょとかよく分からないこと言われて」
「……何のことかしら」
「ああ……そういうことか」
「太陽さんは分かるんですか?」
瓜原さんも人気者の友人だからねぇ。
「簡単な話だよ。多分月夜か世良さんへの告白の繋ぎと思ったんだろ。よくあるんじゃないか」
「ああ、確かに。木乃莉経由で連絡が来ることがよくあります。でもよく分かりましたね」
「僕が星矢の告白の代理人にされて何十件こなしたと思ってる。もう呼び出し受けた時点でノート持っていくからね」
月夜と天が悲しそうな目で愛想笑いをする。
「最近は姓名、クラス、告白動機と恋愛遍歴を聞いてノートに書くようにしている」
「履歴書じゃないんですから……」
月夜にそんなことを言われるが、仕方ないじゃん。そうした方がスムーズなんだから。
「もしかしたら太陽さん宛の告白だってあるかもしれないじゃないですか」
「ないね。一度としてなかったね」
「そうなんだ……」
なぜか月夜が嬉しそうな顔をしたが、そこは喜ぶ所じゃないような気がする。
話が脱線したので戻そう。
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