027 月夜とデート④
「太陽さん、ひーちゃんが15分後に2階のバックヤード前に来てって」
「プログラムだと中休憩って書いてるな。行こうか」
ひーちゃんこと
繋がりとして幼少時星矢と月夜の幼なじみだったらしく、当時はかなり仲がよかったらしい。
僕と月夜は指定された場所へと到着するとちょうどひーちゃんは現れた。
金髪のセミロング、整った顔立ちを際立たせるメイクもされ、人を惹きつける容姿はまさしくアイドルだ。
普段学校で会うと普通の女の子っぽいけど、やっぱりアイドル姿だとかわいいなぁ。
「いつ!」
見惚れていたら月夜に思いっきりつねられた。見惚れちゃ駄目なの!? 付き合ってるわけじゃないのに……。デート練習だからダメなのか。
「つーちゃん、来てくれてありがと~!」
「ひーちゃんすごく綺麗だよ。新曲もかっこよかった!」
ちなみに星矢はせーちゃんと呼ばれる。これぞ幼なじみの強みというやつだね。
「よくあの場所で月夜の場所が分かったね。見えるもんなの?」
「お客さんの顔はよく見てるからね。それにつーちゃんすごいかわいいから目立つのよ」
それは確かに。……アイドルとして一緒にいてもおかしくない容姿レベルだもんな。
「聞いたよや~まだ~。つーちゃんを下の名前で呼んで……ついにデートかぁ?」
また発信元は
普段僕に興味ないくせにこういう時だけからかってくる。
「そんな大層なものじゃないよ。それで天野さんは次の全校登校日来るの?」
「おい、ひーちゃんって呼べや」
こえー! ひーちゃんはファンに呼ばれている愛称だ。学園の生徒全員にこの名前で呼ばそうとしている。プロの鏡といえば鏡なんだけどね。
ひーちゃんって呼ぶの恥ずかしいからたまに天野さんっていうとすんごく怒られる。声が通るからドス効いてるんだよな。
「ひーちゃんを日和って呼んでいいのはせーちゃんだけなんだから。それ以外はひーちゃんで決定」
「アイドルが恋愛していいものなの?」
「別に【ice】は恋愛禁止してないし、それに付き合ってるわけじゃないから問題ないわ。せーちゃんへの恋心を歌に乗せてファンに届けているの」
「(でもひーちゃんが一番歌下手だよな、グループで)」
「(聞こえるからダメですよ!)」
ひーちゃんはビジュアル、ダンス及びトークで人気キャラとなっているのだ。まぁ自信家だからいいのかもしれないけど。
「でもあんた達、学校の生徒がいたからモールから離れた方がいいわよ」
「えっ」
僕と月夜の声は重なる。
「そんな姿のつーちゃんが男と一緒ってバレたら、や~まだが血まつりね」
「怖いこと言わないでよ……」
学校から結構離れてるけど、【Ice】のライブもあるから今日は特に来てるんだな。
できる限り早く離脱した方がよさそうだ。
「休憩が終わるから戻るわ。来週、新曲が発売するし、特装版の1つ、ひーちゃん版を買いなさいよね」
「うん、絶対買う!」
「や~まだぁは最低3枚買いなさいよ」
「分かったよ。僕はみーちゃん推しだからそっちを買うことにするね」
「おい」
【Ice】5人組のグループ。庇護欲を掻き立てる妹キャラのみーちゃんが僕の推しだ。
正直、ひーちゃんはどうでもいい。下手に知り合いだからそう思うのかもしれない。
僕と月夜は急いでモール街から出て行く。ライブを途中で抜けるのは心苦しいが今度正式なライブもあるのでそれを楽しみにさせてもらおう。
時間はまだ14時過ぎかぁ。僕と月夜は通りへ出た。
「うーん、どうしようか」
「デートいえば……やはり公園でしょう!」
確かにセオリーではある。2人仲睦まじく、喋りながら……歩く。手と手を合わせて……ふとした時にそんな感じかな。
月夜の案に乗っかる形とした。さてと近くにある大きな自然公園に向かって進もう。
30分後
僕達は図書館にいた。
「この真夏で日が照ってる公園を歩くのは無謀だったね」
「この時間、そもそも外を歩くものではないですね」
開始10分で全身から汗が吹き出し早々に撤退してしまった。モール街は涼しいから勘違いしたなぁ。
結局着飾って、デートしたとしても……僕と月夜は涼しい図書館で本を読んでいるのが一番であることに気づいてしまったのであった。
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