026 月夜とデート③

 僕達はハンバーガーショップを出て、日陰へと入る。


「まだ13時だもんね。次は何をしようか?」

「え?」


 月夜は予想もしていなかったようなすっとぼけた声を上げる。


「え、えーと、そのー」

「まさか映画見て終わりと思ってた?」


 月夜は申し訳なさそうに頷いた。まだお昼は始まったばかりだぞ。この企画半分行かずしてとん挫することになるなんて……。

 といっても僕もデートと言われて何をするかなんて思い浮かばない。


「月夜は普段女の子の友達と何をしてるの?」

「そうですね。カフェでお喋りしたり、服を見に行ったり、ゲームセンターに行ったり」

「カフェはともかく、服とか見にいく? デートっぽくていいんじゃない?」


 そこまで言うと月夜を両手で目を伏せ、泣く真似をした。


「うぅ……この服買って、今月使えるお金がもうないんです」

「ああ、そう……」


 悪いね、お金持ちだったらブランド品でもなんでも買ってあげるられるんだけど……所詮高校生の財力じゃ限界だよ。

 月夜の容姿だったらそこらの金持ちのボンボンすぐ捕まえられるんだろうな。本人は嫌がるだろうけど。


「逆に男の子は何で遊ぶんですか? 例えばお兄ちゃんと遊ぶ時って何してるんですか」

「星矢んちで本読むか駄弁ってる」

「そういえばずっと家にいますよね。本当にウチの兄がごめんなさい」


 女の子がいるならまだしも男同士だと絶対金使おうとしないからな、あいつ。

 スマホゲーも無課金でどこまでやれるかで楽しんでるし……。

 後は……。


「カラオケとかボーリングとか、スポーツ系もいいよね。あ、月夜の歌とか聞いてみたい」

「だだだだ、駄目です! 下手くそなので駄目!」

「声、綺麗じゃないか。多少下手でも僕は気にしないよ」

「絶対無理無理! 舌噛んで死にます!」

「そこまで追い詰められなくても」


 徹底的な月夜の否定によりカラオケは駄目となった。

 今度、月夜の友達に歌声の評価を聞いてみよう。あとは運動系だけど……。


「その恰好で運動は無理だよね……」

「うぅ」


 ミニスカートにブーツ、動けるような恰好ではない。着替えたりすれば……だけど、それを想定していないだろうね。

 ふぅ……スカートからはみ出る白い素足が艶めかしい。

 月夜は項垂れた。


「ごめんなさい、気合入れてきたのにポンコツでごめんなさい」


 月夜がこんな感じで失敗するのは見ていて楽しいな。

 僕は思わず口に出して笑ってしまった。


「笑わなくてもいいじゃないですか……」

「ごめん、ごめん、じゃあモールの中を歩こうか」


 機嫌が戻った月夜と一緒にこの街1番のモール街を歩く。

 購入はしないにしても店をこうやってぶらぶらしてるのはありだよな。


 それにしても……。


「さっきから人が向こうの方に行ってますね」

「あっちは催事場か……。たまに芸能人が来てるもんな。行ってみようか」


 僕と月夜は催し場へ到着する。

 うわっすげぇ人。誰が来てるんだ? 近くにあるパネルをみると人気アイドルグループ【Ice】のミニライブって書いてあった。


「【Ice】が来ているみたい」

「すっごい人気ですね。あ、ちょうどライブが始まりますよ」

「この前出たアルバムよかったよねぇ」

「聞きました! ちょっとしっとりとしたバラード曲が多くて好みです」


 モールの奥にある、円形の催事場には多くの人が詰め込まれていた。

 今、人気急上昇中の【Ice】(アイス)は女子高校生5人組のユニットで歌、ダンス、ビジュアルに秀でたアイドルグループである。

 僕や月夜がこのアイドルグループに入れ込む理由が1つあった。

 ちょうどライブが始まったばかりのようだ。


【Ice】(アイス)のメンバーが各々自己紹介をしていく。

 その中の1人、金髪のセミロングの女の子が軽快なステップと身軽なダンスを交えて声をあげた。


「ひーちゃんで~す! みんな来てくれてありがとう~!」


 彼女の声は明るく、響き、奥まで通る良い声だ。それに伴って観客も声援を上げる。アイドルってやっぱすごいなぁ。


「ひーちゃ~ん!」


 月夜はお返しに声をあげるがそれはさすがに届かない。あっ、でもこっちを向いて手を振ったくれた。

 もしかして月夜の存在が見えたのかな。さすがだ。


 それから20分、ひーちゃんはバックに下がり、他のメンバーのソロでの歌唱となった。

 同時に月夜のスマホに連絡が届く。


「ひーちゃんからだ!」


そう、ひーちゃんは僕達の友人だ。

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