003 図書館
昔から本を読むことは好きだ。
わりと雑食の方でラノベ、恋愛、ライト文芸、ミステリー、SF……話題作はついつい手を伸ばしてしまいわずかなこづかいもなくなってしまう。
なので名作を求めて市の図書館に行くのは当たり前のことなのだけど、隣で本を読みふける
ついつい横目でその端麗な顔を見ては胸をドキドキさせてしまうのだ。
「どうしました?」
「なんでもないよ」
ちょっと口調が上ずったかも。
見惚れてたなんて絶対言えないし。親友の妹にそんな邪な感情を抱いてはいけない。
「ほらっ、最近ここでもそうだけど、外でもよく会うよね」
「そうですね。ふふ、何でかな」
小悪魔ちっくに唇に手を当て誘うように笑う妹ちゃんは実にかわいい。屋外はともかく、図書館は会って当たり前だ。メールで図書館行く日は必ず誘ってくれと言われているからだ。今3日連続図書館で会っている。無視すると後で怒られるんだよなぁ。
妹ちゃんも本が好きなので義理で付き合ってくれているわけでもないが、交際しているわけでもないのになんで来てくれるんだろう。
僕はあの時のことを思い出す。
私ね……太陽さんのこと好きになったかもしれない
好きだから来てくれるんだろうか。いや、それはどうだろう。
あー本に集中できない。
「面白かった〜」
「何読んでたんだっけ。ああ、著名なやつだね」
「はい、この作者さんの作品好きなんですよ」
偏見かもしれないけど女の子だけあって恋愛小説を好む。僕も恋愛小説は好きな方ので帰りに借りて帰ろうかな。
「主人公の妹が主人公の親友と恋をするお話なんですけど……何だか自分のことのように思えて」
「え、自分のこと?」
妹ちゃんはそこで目をぱっと開かせて動揺し始め、体を僕の方に向ける。
「じ、実体験じゃなくて、その想いというか、キャラに……感情移入しただけです!」
「ハハハハハ、僕も分かるよ。僕もついつい主人公に感情移入しちゃうもん」
「そうですよね! ……」
妹ちゃんは本を置き、両手を組みあい表情を緩ませた。
「太陽さんと趣味が一緒なのがとても嬉しい」
んぐっ!
顔が真っ赤になりそうだ。そんなことをこんなかわいい子に言われたら意識してしまうじゃないか。別段意識を誘った発言じゃない。友人同士で趣味が同じだったらさらに楽しいはずだ。別に僕だから言ったわけじゃないんだ。
話題を変えよう!
「ぼ、僕の読んでる本もね。ほらっ、SFものなんだけど主人公の恋模様があって……強く秘めた気持ちがあって、それが感情移入できるというか」
「太陽さんにも秘めた気持ちがあるんですか?」
「あぁ!?」
思わず墓穴を掘ってしまったかもしれない。そんな強い思いがあるわけでもない。でも……僕は妹ちゃんと目が合う。ぱっちりした瞳と長いまつげに吸い込まれてしまいそうだ。
妹ちゃんの潤いを帯びた唇が動く。
「私達……」
「……っ」
「静かにした方がいいと思います」
後ろに佇む職員さんの目が怖い。
ここの職員さん怖いんだよなー。仲良くお叱りを受け、読書の続きを行うのでした。
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