3月9日 雨 「レイの唯一の弱点」
3月9日 雨
私はとりあえず自分もカトリーヌちゃんも無事である事にようやくホッと胸を撫で下ろす。
「今のは精霊魔術……しかも、あれだけの水の精霊を操るなんてアイツしか……けど、なんでアイツが……」
などと、レイはブツブツと呟いているが、私はレイに一つ聞いておかなければいけない事がある。
「ねぇ、レイってもしかして泳げないの?」
「うぐっ……!?」
珍しく動揺したように視線を彷徨わせるレイ。しばらく押し黙っていたが、やがて……
「ほら、吸血鬼は流水が苦手ってエリスは聞いた事がない?」
そんな事を言い出すレイ。確かに、本には吸血鬼の弱点に流水に弱いというものがあったが……
「実は、あの話だけは事実なの」
と、言うが……明らかに視線が明後日の方向を向いてえては説得力に欠ける。私がジト目で睨み続けていると、ようやく観念したようにガックリとうなだれて
「ごめんなさい。嘘つきました。私個人が泳げないだけです……」
と、やっぱりレイ本人が泳げない事が判明した。
一応、言い訳のようなレイの意見によると、そもそも吸血鬼が暮らす国では海やら川やらが一切ない為、泳ぐ習慣がない為、吸血鬼にはカナヅチの割合が多いとの事。うん。本当に言い訳くさいけど、成り行きとは言えパーティーの仲間なんだから信じてあげましょう。
「でも、私としてはエリスが意外。普通に泳げるし。カトリーヌちゃんを触っても平然としてるし」
「ん、まぁね……」
私は曖昧な返事で誤魔化す。まぁ、泳ぎはともかくとして、カエルが苦手な女子は沢山いそうだものね……
けど、10歳以前の私は、お祖母様の田舎街に行くのが私にとっての唯一の生きがいだった。そこで、虫捕りやらカエルを捕まえたりなどのアクティブな事を結構していたから、カトリーヌちゃんをこうして抱いていても全然平気である。
前の、「災厄」に囚われていた私だったら嫌がっていたかもしれないけど、今の私は10歳以前の記憶が一番強く残ってるのもあって、平然としていられる。そういう意味では助けられたかもしれない。
「とりあえずカトリーヌちゃんをマダムの所へ帰してあげよう」
「そうね。それに……本番はこれからだしね……」
そう。私は今後カトリーヌちゃんがあの屋敷で安心して暮らしていける為に言わなくてはいけない事があるのだから……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます