3月2日 洞窟最深部 「魔剣」

その剣は何年放置されていたのか分からないけれど、強い輝きというか、オーラを放ったまま地面に突き刺さっていた。


「あれは……魔剣だね」


レイは剣を見てそんな事を言った。えっ?魔剣って言うと、持つと呪われるとかいうあの?しかし、そんな考えを否定するかのようにレイは首を横に振った。


「多分、エリスが考えてる物とは違う。より正確に言うなら「魔法剣」だからね。魔法良くも悪くも想いの力。その剣になんらかの想いを込めて打った剣は、魔法の力が込められた剣になる。ただ、その想いは様々で、どんな魔法の力が宿ってるか分からないから、呪われた剣という呼び方もされて「魔剣」って呼ばれるようになった」


なるほど……その剣の力は、使ってみるまでは分からないし、使ったとしても、どんな力で自分にどんな影響を与えるか分からないから、呪われた剣なんて呼ばれているのね……。


「多分、オークキングが発生したのはこの魔剣のせい。この魔剣の強い魔力を浴びたオークが異常個体進化したんだと思う」


そうなのね……つまり、この魔剣はそれだけ危険だから触らない方がいいと、レイは言ってくれてるんだろ。

けれど、私は何かに導かれるように剣に近づいていく。レイの制止の声も無視して……そして、突き刺さった剣を私は手に取って抜いた。


「軽い……」


剣を抜いた瞬間に私が思ったのはソレだった。剣は非常に重たく、女性の力では持つことが出来ないと言われ育てられてきた私。

まぁ、もちろんそれは幼少期に剣を持たせて危ない目に合わせない為の言葉だとは分かっていたけど、それでも、軽い物ではない事は分かっていた。けれど、この剣はまるで私に使えるように作られたかのように軽かった。


「……どうも、その魔剣はエリスを主としたみたいだね。さっきまで放っていた魔力も消えてるし」


そう言ってレイは私に近づいて、身体に何か変化はないか聞いてきた。私は特に変化はなかったので首を横に振った。

それを受け、レイはしばし沈黙したが……


グギュルルルル〜ーーーーーーーーーーーー!!!!


「とりあえず、お腹空いたから町に戻ろう」


「……そうね。剣は……」


「特にエリスに害がないなら、エリスが持っていなよ。元の場所に戻したらまたオークキングみたいな異常個体が発生する可能性があるし」


レイにそう言われ、私は心の底から安堵している自分に気づいて自分で驚いた。もしかすると、私もこの剣を手放したくないと思っていたのかもしれない。


そして、この剣こそ、私が「雷鳴剣」と呼ばれる所以の剣であることを、この時の私はまだ知らない。

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