3月2日 洞窟内 「吸血鬼はなんで鬼がつくのか」

3月2日 洞窟内


小さい頃、お祖母様の家で本を読んでいた時に、お祖母様にこんな質問をした事がある。


「お祖母様。どうして吸血鬼って「鬼」っていう文字がつくの?」


私のそんな質問に、お祖母様は朗らかに笑いながら


「そうさね〜……私がエリーと同じ歳ぐらいから、魔族はウィンドガル王国に来た事ないから、噂程度にしか私も知らないけれど、吸血鬼を見た人は皆、鬼に見えたと言っていたそうだよ」


お祖母様はあの日私にそう答えてくださったけれど、私はその話を信じられなかった。本に出てる吸血鬼は皆美形だし、筋肉質な体型でもなかったし、だから、これが「鬼」に見えたなんて昔の人はどうかしていたんだなぁ〜と、あの時の私はそう感じていた。



昔、吸血鬼を見てそう言った人に私は全力で謝りたいです。お祖母様。


「ん、本当にここはオークが多いなぁ〜……」


先程から、スタスタ歩いて突っ込んでくるオークを手刀で首を叩き落としたり、心臓を手刀で突き刺したりしているレイを見たら……あぁ〜……確かに「鬼」だなぁ〜……って思いました。


そして、慣れというのは恐ろしいもので、最初こそはグロい光景に吐きそうになったけれど、もうこの光景を何回も見せられたら、吐き気なんて治りました。


「ん〜……オークの返り血が…………マズい……口直し口直し……」


「って!?ちょっ!?待って!!?もうエーテルが心許ないから血を吸うのは最後の最後って約束でしょ!!?」


そう。魔力数値回復薬こと、冒険者の間ではエーテルと呼ばれている薬(これもレイから聞いた)は、依頼した町では在庫がなくて補充出来なかったので、私の手元にあるのはもう2、3本しかない為、血を吸うのは最後の最後のとっておきまでダメという話をしていた。


「むぅ〜……仕方ないか……どうも奥の方からヤバい気配も感じるし……」


レイはいつもの無表情ながらも、納得して引き下がってくれた。そして、じっと洞窟の奥の方を見つめるレイ。その奥からは、私ですら分かる程のプレッシャーを感じていた。


「この奥に……オークの異常個体が……?」


「ん、みたいだね」


レイはそれだけ言うと、奥へと進んで行く。私はそんなレイの後を追うようについて行く。


そして、私達が洞窟の終着点に着くと、そこには……


ブルオォォォォ〜ーーーーーーーーーーーーーー!!?


先程まで見かけたオークとは明らかに大きさが倍以上あるオークが咆哮をあげた。

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