3月2日 晴れ 「いざ洞窟へ」
3月2日 晴れ
私とレイは店員さんから聞いた異常個体のオークが発生したという洞窟にたどり着いた。
「それにしても……意外ね。レイがあんなにアッサリ依頼を受けるなんて……」
私が思った事を口にすると、やはりレイは変わらず無表情で
「まぁ、元々この辺で起きてるオークの異常発生と原因の究明と解決が私に依頼された仕事だからね」
淡々とそう答えた。なんでも、レイがこの町の近くにある国の冒険者ギルドで依頼されたのが、オークの異常発生の原因を突き止めて解決する事らしい。
「だから、この依頼を引き受けたらあの町からも報酬が貰えて、冒険者ギルドからも報酬が出てまさに一石二鳥」
「ちょっ!?それ!?いけないやつなんじゃないの!!?」
「エリス。冒険者ギルドに所属するつもりなら上手く世間と渡り合っていく術を身につけるべき。冒険者は特に危険な仕事を請け負う何でも屋みたいなものなんだから……」
レイは無表情ながらもどこか黒い表情で銭のマークを指で作ってそう言った。私は思わず呆れた溜息をついた。
レイが最初に言った通り、私は冒険者ギルドに所属しようと考えて、昨日の夜にレイに冒険者についてあれこれ聞き出していた。
と言うのも、今の「エリス」という名前は偽名であり、私自身がもう本名を名乗るつもりがない。しかし、そんな怪しい人物を雇ってくれるような所はなかなかにないだろう。となると、元犯罪者でもなれるという冒険者になるのが、私の唯一の選択肢だろう。偽名を使っても冒険者証は作れるみたいだし。冒険者証は身分証明書の代わりにもなるみたいだし。
「ところで、エリスはどんな戦い方が出来るの?」
レイは改めて私にそう確認してきた。そうよね。これから危険な場所に乗り込むんだから、そういう確認は必要よね。
「えっと……私は、雷属性の魔法が使える事かな……体術や剣術はやった事ないから、それぐらいしか役に立てないかもだけど……」
「雷属性の魔法か〜……だから、ピリピリしたお味だったんだね。今朝もピリピリとした刺激的なお味だったし」
そう。今朝、寝起きでいきなり吸われ、起きたばかりなのに、また魔力数値枯渇で倒れそうになった。
「まぁ、けど……レイもなんとなく理解してると思うけど、私は魔力数値が少なくて、おまけに……」
私は軽く雷の魔法を発動させたつもりなのだが……
ド〜ーーーーーーーーーーン!!ビシャァァァ〜ーーーーーーーーーーンッ!!!!
私の雷の魔法はとんでも威力を放ち、周囲の木々の大半を丸焦げにしていく。
「えっと……こんな感じで……なかなか魔力コントロールが出来なくて……」
私は恐る恐るレイを見たが、レイはいつもと変わらず無表情で一言
「とりあえず、エリスは後方で。いざと言う時以外は魔法は使用禁止で」
「はい」
私はレイの言葉に素直に頷くほかなかった……
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