3月1日 夜 「流血眼」

3月1日 夜


店員さんは私達に恐る恐るそう声をかける。


冒険者……本での知識ぐらいしか知らないけれど、冒険者ギルドという組織があって、依頼された仕事をこなしていく何でも屋みたいな存在だ。


「私はそうだけど、エリスは違うよ」


レイは店員さんの言葉にそう返す。


「って!?レイって冒険者なの!?吸血鬼なのに!!?」


「別に魔族でも冒険者やってる人はいる。まぁ、吸血鬼でやってるのは私ぐらいしかいないみたいだけど……」


そう言ってレイは首から提げていた金色のプレートらしき物を私達に見せる。そこには、「冒険者ギルド認定冒険者 レイ」と書かれていた。これって……本にも書いてあった冒険者の身分を証明する冒険者証ってやつかしら?


「ゴールドプレートに……吸血鬼でレイという名前……!?貴方は……!?まさか……!?「流血眼」のレイさんですか!!?」


「ん、そう」


店員さんは驚愕の表情でレイを見るが、レイは黙々と無表情でパスタを頬張る。


「あの……この娘ってそんなに有名人なんですか?」


「知らずに一緒にいたんですか!!?」


「はぁ……まぁ……その……成り行きで今日一緒になったので……」


私はそう答えたら、店員さんは納得した様子で、レイについて語り始めた。


冒険者にはそもそも階級があって、下から「青銅級」「銅級」「銀級」「金級」「プラチナ級」と分けられていて、ようはプレートの色がその階級を表していた。

つまり、レイは高い階級の「金級」冒険者であり、彼女が通った後は全て真っ赤に染まっていて、その瞳すら血に濡れているように見える事から、「流血眼」の異名を与えられたという。


「私の瞳の色は元から真っ赤なんだけどね〜……」


と、ぼやきながらも、大して気にした様子もなく料理を黙々と食べているレイを見ると、そこまで名の知れた冒険者には見えないから不思議である。


「えっと……それで……店員さんは何かレイに用事があったんじゃないですか……?」


「あっ……ついうっかり熱く語り過ぎてしまいました……その……冒険者に……レイさんにお願いしたい事があるんです」


店員さんは恐る恐ると言った感じで、お願いしたい事を話し始めた。


店員さんのお願いしたい事とは、この町から少し離れた洞窟に、オークの異常個体が誕生したせいで、この辺にオークが大量発生してどうにかしてほしいというものだった。

この辺やたらとオークが出現するとは思っていたけれど、原因がちゃんとあったのね……その異常個体の退治をレイにお願いしたいという事らしいけど、レイはどう答えるのか……


「ん、いいよ。問題ない」


意外というか……レイはアッサリとそう返答した。口の周りに色々なソースがついた状態で……

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