3月1日 夜 「ウィンドガル王国と魔大国」
3月1日 夜
私がウィンドガル王国出身だと知って何故か得心したような顔をするレイ。
「えっ?あの……自分で言ってなんだけど、ウィンドガル王国が魔族と交流しないのって何か理由があるの?」
疑問に思い私がレイがそう聞くと、レイは無表情だけどどこか神妙な顔をして
「ウィンドガルの災厄の事は知ってる?」
ウィンドガルの災厄……それを聞いた私の胸がズキリと痛んだ。私は思わず自嘲気味な笑みを浮かべ
「えぇ。知ってるわ」
と、答えた。私の反応に不思議そうに首を傾げたレイだったけれど、特に何も言わずに話を続けてくれた。
「あの災厄の存在があったから、ウィンドガル王国の初代国王のアイリーンと、かつての魔大国の王……魔王は秘密裏に条約を結んだんだよ。災厄がどうにかするまではお互いに交流をもたないようにするって」
そんな古くから秘密裏な条約が結ばれていたなんて……王妃教育を受けてはいたけれど、そんな話は聞いた事がなかった……秘密裏な条約だから、王家に入るまでは言えなかったって事かしら?
それにしても……何でアイリーン様はそんな条約を?そんな疑問を察してくれたのか、レイが再び教えてくれた。
「力をもつ魔族が災厄に取り込まれたら大変でしょ。あの当時だと、魔族の中には人魔戦争への恨みを募らせてる奴もいるし……まぁ、それは今もか……」
なるほど……確かにレイみたいな存在が災厄に憑かれて暴れ出したら……本当に世界は滅びちゃうわね……
そして……人魔戦争……か……アイリーン様が産まれる前より始まった人間と魔族の大規模戦争……しかも、その理由は人間側が、魔族が魔物を操ってるんじゃないかっていう勘違いから始まった戦争らしいと、本で読んだ事があるわ……それがきっかけなんだから恨まれていても無理ないわね……
「それにしても……レイ。貴方やたらと詳しいけれど……今何歳?」
「さっきの条約うんぬんの話はお爺ちゃんに聞いたんだけど、私の年齢なら……100を越えた時点で数えるのが面倒になった」
ちょっ!?推定年齢100歳以上って事!?私のお祖母様よりも年上じゃないの!!?いや、魔族が長命で不老な種族であるのも知ってはいたけど……もしかしてその髪の色も……
「言っておくけど、私の髪が白いのは元からだからね」
で……ですよね〜……レイに無表情ながもジト目で睨まれ、苦笑を浮かべる私。
「あのぉ〜……すいません……お客様はもしかして……冒険者の方でしょうか……?」
突然、このお店の店員さんが私達にそう声をかけてきた。
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