第19話
総司side
ほんとに美味しい。私はもぐもぐ口を動かしながら考えていた。昨日、部屋に帰ってみれば彼女はいなく置き手紙で『山南さんのとこに行ってくる。水樹』と書いてどこかに行っていた丞くんに聞いても山南さんのとこにいると。ならいいかと、ほっておいて巡察に行くと次は夜寝巻きが無くなっていたのでまた丞くんにきくとたぶん山南さんのとこだ、と。なんかモヤモヤする。山南さんには懐くんだ。私にはまだ素を出していないのに。いや、素を出すというか信じてない。まるで信じていない。わかりやすいほどに。そんなこんなで朝が来ていつの間にか眠っていたが、そう言えばと思い出した。今日の朝餉の時間で彼女、いや。彼をみんなに紹介するんだ。私の隊である1番隊の副隊長にする、と。隊士はどんな反応をするのだろうかと楽しみにしていると、彼は山南さんの後に入って真顔で「よろしく」の一言もなく自己紹介をした。隊士だって馬鹿じゃない。こんな不味い料理を食べていても聴く。ちゃんと。なのに彼はご飯のことを心配して挙句の果てには「勝手場を貸してほしい」と。変な子。と思って付いていくと私と土方さんで皿洗いをさせられた。その時に、
「なぁ、総司。あいつなんか山南さんに懐いてね?」
「ッチ、うるさいですねぇ。斬ってしまおうか。 」
「いや、まてまて!切るな!なんなんだお前は。つか、ホントのことだろ。」
「なら貴方も変ですよ。土方さん。なんで貴方みたいな人が皿洗い?」
「は?あ!!なんでだ!くっそ、乗せられた。」
などと言う話をしていると、どこからかとてつもなくいい匂いがしてきた。皿洗いも終わったので行ってみると美味しそうな料理が並んでいる。それを口にすると本当に美味しい。びっくりするくらい。だが彼の表情は冴えなく、隊士の1人に褒められても山南さんが作った、自分は補佐だといい、どこかに行ってしまった。不思議な子だが、なにか抱えているのは見てたらわかる。あとで山南さんにも聞いてみるか。私は彼女の味方なんです。それだけはわかって欲しいのですが…。なぜこんなにも彼女のことを気にしているのでしょう。べつに気にしなくてもいいのに…。
「総司くん。どうしたんです?暗い顔をして。もしや、恋ですか?」
そう言い山南さんは近づいてきた。
「1つ訂正なのですが、これはほとんど彼女が作ったものですよ。」
と、私が聞こえるギリギリの声で話した。
何が言いたいんだ、この人。
「あの、私別に恋とかしないんで。」
そういい、モヤモヤしたまま私も席を立った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます