第15話

〜碧衣、回想〜

私が産まれたのは不思議な家でした。ここから約150年ほど未来です。その時代はとても平和で刀や銃は基本的には持っておらず、教育もしっかりしていて生きていくのに苦労はしていませんでした。しかし、私が産まれた家では全てが違うみたいでした。父と母二人を見たのは私が産まれて1年程だった頃ですし、父は私の存在すらもしらなかった。母は

「お前さえ、お前さえいなければ私はあの人に愛されて結婚もしていた!なのに、お前のせいで…。」

と、毎日のように言われ続け、殴られていました。食事だって母の前で死なれると困ると言われギリギリで生きていました。私が産まれて一年後、父と母はまたくっつきました。しかし、また子供が出来てしまい、と同じことを繰り返したんです。私には弟ができました。私と弟には名前がありません。ただ、母が機嫌のいい時に私は「おねぇちゃん」と呼ばれました。弟は「おとうと」。なので私たちの呼び名はそれでした。服も汚く、髪も伸び放題。身体もとても汚れていました。弟ができて母は余計に殴る蹴るをしてきました。私にも弟にも。しかし、耐えました。弟が5歳、私が6歳の時。丁度10年ほど前でしょうか。その時私は所謂「誕生日」だったんです。私が産まれた日。母は私のも弟のも覚えていました。最悪の日、と言うふうに。その日になると必ずと言っていいほど殴られます。なので耐えるしかないと幼いながらにわかっていました。その日は大雨で外に出られるような状況ではありませんでした。しかし、母は

「お前達なんて知らない。今日は借金摂りがくる。お前達なんて産まなければ良かったのだし、出てけ。」

そう言ってきました。嫌だと反発したけれど殴られ、弟と一緒に外へ行きました。裸足で汚いかっこをした私たちを大人達は無視します。見なかったことに…。すると、水たまりが跳ねて弟を庇うため私がびちょびちょになりました。弟は風邪をひいていて、死にそうでした。すると大人が駆け寄ってきてこう言いました。

「君たち!大丈夫かい!?…なんて、カッコを…。直ぐに暖かい場所へ連れてってあげるね」

と。後に知ったのですがこの方こそが家の借金取りだったのです。私達はその人に見つけてもらえなかったらあと少しで死んでたそうです。借金取りは私たちを直ぐに医者に見せに行ってくれたのですが、私たちには名前がないのでどうしようもありませんでした。しかし、借金取りの奥さんのご両親が医者をやっていたのもあり私達は一命を取り留めました。そして、大人達がなにかをしてくれて、私達は「名前」と「新しい家族」を手に入れました。母は、借金取りに強制的に働かされていたそうですが、わたしには分かりません。時が経ち、私が15歳の時。その頃には教育が発展しており、今で言う寺子屋のような所を卒業する年でもありました。私はそこで「先生」と出会い、「先生」に殺しを教わりました。荒れてた私の心を殺してくれた、とてもすごい先生。尊敬しています。しかし、私がまだ先生や仲間を信用していない時でした。母が強制的に働かされている所から逃げてきて、私の身体を払う代わりにと金を借りていました。私はもう縁を切った母の借金のために身体を売らざるを得なかった。出なければ弟に手を出す、と。私は怖かった。助けて欲しかった。でも、助けを求められなかった。そこに、「先生」や、仲間が助けてくれた。そこからしっかりとみんなを信用できるようになったんです。しかし、別れがあります。私達は「先生」を殺さなければなりませんでした。「先生」を殺し、寺子屋のような所を卒業しました。家に帰ると、いるはずの弟がいなかった。急いで探すと母が私の身体を売ったとこの人に殺されていた。私はそいつらを殺した。そして、仲間は殺しから足を洗ったが私だけは殺しを続けていた。そして、未来では「水鬼」と呼ばれていました。「先生」と出会いこの名は「水樹」になり仲間のみんなに親しまれた名だったが自らまた鬼に戻ったんです。それから、他人を信用せず、今に至る…。飲まず食わずも暗殺をするために鍛えたことなのです。

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