第12話

〜道場〜

(ッチ、あんの野郎、ふざけんなよ。なんで俺が。つか一応怪我人なんですけどね。)

なんか、あれよあれよというまに道場に連れてこられた。

「みずきくん!木刀と竹刀、どっちがいいですか!?」

「ん?俺、お前とやんの?木刀で頼む。」

「はい!手合わせしたくて土方さんにお願いしちゃいました♪」

いや、まて。沖田総司って新撰組一二を争うんだろ?まずくね??

「総司、やはり体格などが近い平助にやってもらったほうがいいのではないかな?」

近藤さん、それ藤堂平助を貶してるからな…?ほら、藤堂平助落ち込んでる。

「…俺、すか。まぁ、手加減するんで全力できてくださいね!」

「こいつ、殺していいか?」

「ダメだよ?まぁ、頑張ってね?」

にこやかにそう言う山南さん。そう言われると断れないし。

「…じゃあ、殺しはしません。」

「ありがとうね。」

いや、山南さんに言われると断れないんだって。

「はい。」

「てめぇら!早く並べ!」

土方歳三うるさ。

「「はーい。」」

そして並ぶ私たち。

「はじめ!」

「「よろしくお願いします。」」

両方とも剣を構えて動かない。こりゃ埒が明かないね。私から行こ。

スッ

私は藤堂平助の背後に回り込み首元に切っ先を当てていた。

「!?!?」

「おい、土方歳三。審判なんだろ?言え。」

「し、勝者!みずき!」

(ッチ。だるいんだわ。お前。)

「ま、負けた…?女の子に?」

「てめぇ、速くないからな。」

「次!次!私とやりましょ!!!今のって、全力じゃないですよね!?私と!是非!」

沖田総司がめちゃくちゃ言ってくる。

「土方歳三。どうすればいい。」

「…。仕方ない。いいぞ。」

「やった!!ありがとうございます!土方さん!」

「はぁ…。では、両者位置につけ。」

「いや。待て。俺やるとは一言も…」

「は、や、く、つ、け!」

「ッチ」

「では、はじめ!!」

「「よろしくお願いします」」

「みずきさん、来ないと殺しちゃいますよ?」

ニッコリと余裕そうな顔しやがってコノヤロウ。

「あんたとやるなら『剣術』じゃなくてもいいか?」

「?いいですよ?それが全力なら!」

「分かった。行くぞ。」

「はい!」

私は体制を崩し隙をわざと作った。そして、そこに来るように。私は計算して動き、『剣術』では無く、私の得意分野を使うことにした。『暗殺』だ。この男を暗殺すればいいだけ。簡単なことだ。

スッ

「!?今のは…。」

「はぁ、はぁ、ひ、土方さん。勝者を。」

沖田総司が、辛そうに言った。

「し、勝者!みずき!」

「ありがとうございました。」

強い、な。この人。またしたい。今度はちゃんとした『剣術』で。

スッ

ん?って!

「さ、斎藤一…?な、なんだ?」

「俺ともしよう。」

「は、はぁ!?いや、あの、なんで一日にこんなにやらんといかん!?俺これでも怪我人!!謎なんだけど!?」

「あと1戦だ。頼む。」

「ッチ。ふざけんな」

「やれば?」

「って、おい!土方歳三!俺は疲れて」

「ないですよね?結構余裕ですよね?」

「沖田総司、被せてくんなや!…ッチ、最後だからな。もうしないからな。」

「!!よろしく頼む。」

はぁ、なんでこーなるかな。めんどい。

そして、何も言わずに並ぶ私たち。

「では、はじめ!」

「「よろしくお願いします」」

「あんたも、沖田総司同様でいいか?」

「あぁ、構わない。行くぞ!」

そう言い、俺に斬りかかってきた。

スルッと躱し、相手を見定める。っていうか俺、小刀とか小さいもの専門だったからあんまりこういう大っきいの得意じゃないんだよな。避けながら考えた。こいつを殺すには一突きだ、と。だから俺はある構えをした。

「!?そ、それは…。」

フッ、沖田総司気付いたな?そう、この構えは沖田総司が一番得意とする『三段突き』。見てな、沖田総司。あんたに見てもらえるなんて光栄だ。俺は一気に踏み込み三段突きをした。

ダンダンダンッ

「っ!」

「勝者、みずき…。」

「ありがとうございました。」

強いな。流石としか言い様がない。

「また、頼む。」

斎藤一、不思議な奴。まぁ、いいさ。

「また、怪我が治ったらな。」

「あ!一くんだけずるい!私もです!またやりましょ!」

「はいはい、わかったよ。」

ん?なんだ?

「み、みずきくん??どうしま、って!みずきくん!!!」

バタン

やっべ、真っ白。最後に聞こえたのは誰かが私を必死に呼ぶ声だった。

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