圧倒的じゃないかこの作画は!!

 この章ではプロメアの作画について語りたいと思う。といっても、私はイラストレーターでもデザイナーでもない。グラフィックの専門知識は持ち合わせていないので、基本的には一個人の感想でしかないと思っていてほしい。

 言い訳はここまでにして、プロメアにおける特徴的なグラフィックの対象を上げるとすれば、それは「炎(プロメア)」「ロボット」「氷」だと思う。なのでこの章ではそれらに対して思ったことをつらつらと書いていく。


 (1)炎(プロメア)

 そもそもとして炎が橙色ではない。温かみを感じる、温もりを覚える色ではなく、むしろどこか冷たい印象さえ与えるような不思議な薄紫色。しかしその不思議な色の炎も、設定を考えればある種当然といえるだろう。

 何故なら、バーニッシュにとって「炎」は温かみを覚えるようなものではないから。

 「祝い」ではなく「呪い」の方がニュアンスとして近い気もする。彼らにとって炎とは身体の一部であると同時に、忌むべき対象でもあるのではないか。

 深読みすると、あの色合いは自己嫌悪のメタファーであったのかもしれない。いじめ被害者が、いじめの原因が自分にあると強迫観念に駆られるように、バーニッシュもまた、自身の無罪を訴えるのと同時に心の中で己が身に起きた突然変異を、そして異形の力を持った自分を嫌悪していたのではないか。妄想領域ではあるが、十分考えられる推測だと思っている。

 次に語るべきは炎の造形だろう。現実世界における炎は不定形、形を持たずに揺らめき続け、事変とともにその在り方を変える存在である。

 対してプロメアにおける炎は3DCGポリゴンの複合体である。つまり限りなく滑らかに見えるゴツゴツの物体というわけである。「だからどうした」と言われると困ってしまう。ただそういう炎の描き方はやはりどこか異質で、そしてその異質さはそっくりそのままプロメアの異質さを暗示していたのだろうと今は思ってしまう。


 (2)ロボット

 パワードスーツという表現の方が適切な気もするが、クレイザーXは間違いなくロボットなので今回はロボットというくくりで話したいと思う。

 個人的にやはりガロデリオンが一番格好いいと思う。もちろんレスキューギアもマッドバーニッシュの甲冑も格好いいのだが、特に秀逸なのはグレンラガンを彷彿とさせるガロデリオンの造形である。二つの力が融合していることが伝わる素晴らしいデザインだったし、マトイを武器にした時の構えには鳥肌が立った。本当に格好良かった。

 ロボットのアクションは基本的には3DCGなのだろうが、躍動感や疾走感をとても感じた。ロボットが生き生きと活動し、大地を蹴り、宙を舞う。このロボットによるアクションシーンだけでも見る価値はあると言えるだろう。惜しむらくは、全体的に寄り目の構図が多かったためか、動きの様子が微妙に分かりづらかったことである。迫力は感じるが、結局何がどうなったのかは分からない。とりあえず結果を咀嚼して終わってしまうので、どうにも物足りなかったなという印象ではある。


 (3)氷

 炎に対する氷なのだが、基本的に氷は直方体であった。それはもちろん現実世界でもそうなのだが、プロメアの世界における氷は「支配の象徴」だ。

 クレイ・フォーサイドによって作られた枷。

 異端者を拘束するための重り。

 直方体は立方体と違って全ての長さが同じというわけではない。たがしかし、向かい合う辺同士の長さは一致している。これはつまりバーニッシュを除いた人間たちの平等や自由は完璧に近い形で保障されているが、バーニッシュはそもそも一考の余地すらなく除外されていることのメタファーなのではないか。

 保たれた均一性と、保たれなかった均一性。

 その違いに焦点を当て、目を凝らしてみると、案外面白い見解が得られるのかもしれない。

 

 (4)纏

 本作主人公ガロのメインウェポンである纏だが、先端がとがっているところを見ると何となく思い出す作品がある。

 ガロはきっと、人種の壁を貫いたのだろう。

 橋を渡すのは間に距離があるときだ。お互いが密着しているのに近づけ合えないなら、間にあるものに風穴をぶち空けるしかないのだろう。

 バーニッシュと人間はずっと同じ社会で暮らしてきた。でも本当の意味で「同じ社会で暮らすこと」が出来ていたわけではない。物語のラスト、ガロとリオは拳を合わせる。この描写こそ、バーニッシュと人間の間を立ち塞いでいた壁に穴が開いたことの証明であったのかもしれない。

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