第296話 強襲の夜
ミド・リーの治療が終わったので本日は全員帰宅。
まだ夜間外出自粛は解除されていないので早めの時間だ。
明日からは研究室でユキ先輩とミド・リー中心に今回の病気についてのレポートを作成する予定。
ミド・リーの奴、何気に自分が調子悪いと気付いた時からある程度正確な記録を残していやがった。
何というか、流石生物系魔法の天才で治療院の娘である。
さて、家に到着。
何か久しぶりに帰ったような気がする。
実際は合宿より遥かに短い期間しか出ていなかったのに。
見ると姉が家にいた。
「どうしたんだ、姉貴。店の方は?」
「交代で家に帰っている状態。暗い時間は外出自粛だからね、当番で店に泊まって朝の仕込みをしているの。幸い店の
「今日はずいぶんまた列が出来ていたようだけれど」
「これでも努力はしているのよ。あまり待たせるとライバル店にお客様をとられちゃうからね。でも人員も体制ももう目一杯。これ以上大きくすると私の目が届かなくなるし」
成程。
「ミタキこそ学校で研究と称してお泊り会をやっていたんだって?」
おい。
「研究だよ研究。ちょっと連続して観察しなければならない事象があってさ」
「それでミドちゃんは無事回復したの?」
えっ、えーっ!
何故そのことを知っているんだ!
「ミドちゃんをお姫様抱っこして研究院に入っていったって聞いたわよ。あとミドちゃんのお母さんからも聞いたわ。普通では治療できない病気でミタキ君の伝手で研究院へ連れて行ってもらったって。どうせ泊りがけで付き添っていたんでしょ」
うわあ……
流行っているイートイン付き菓子店店主の地獄耳、恐るべし。
否定したいけれど否定できない。
なにせ事実と違う部分はほぼ全て部外秘密の部分。
言えるわけが無い。
だからまあ、簡単に答えておく。
「さっき一緒に帰ってきたよ」
「ふーん、やるじゃない」
おいおい姉貴よ。
コメントに困るだろう!
そんな訳で久しぶりに兄貴を除く家族全員で夕食なんて食べたりした。
なお兄貴はここ数年カーミヤの商家で修業中で正月しか帰ってこない。
だからまあ列外という事で。
あと姉貴はミド・リーの件は父母には話さないでおいてくれた。
まあこの辺は武士の情けという奴だろうか。
そんな感じで久しぶりに普通の生活なんてのを感じながら自分の部屋のベッドへ。
今夜はぐっすり眠れるかな。
仮眠室ではぐっすり寝たつもりでも完全に疲れが取れないんだよな。
そう思った時だった。
ドドーン!
爆発音がした。
何だ一体! 飛び起きで窓際の方へ。
裏庭沿いの窓から炎が見える。
港の方だ。
何が起きたかこの時気付いた。
おそらくユキ先輩が言っていた後方へのゲリラ攻撃だ。
どうする。
俺は移動魔道具と万能魔道具を持っている。
だからゲリラ攻撃を決行した連中が移動魔法持ちでもある程度は対抗できる。
でも民間人でまだ中等学生だ。
どうすべきだろう、そう考えた時だ。
『皆さんは動かないで下さい。こちらの方の備えは出来ています』
誰だこの伝達魔法は。
でも敵ではないと思う。
何処かで聞き憶えのある声だ。
『ジゴゼンです。移動魔道具をお持ちのウージナ研究室の皆さんに伝達魔法で連絡しています。現在、敵の秘匿工作員による後方攻撃により海軍施設の一部が延焼している状態です。なお既に移動魔道具と攻撃用魔道具持ちの軍担当部隊員が対応に当たっています。ですので皆さんは出来るだけ動かないで下さい。対応はこちらで行います。既に敵工作員は全て把握し掃討段階に入っています。ですのでご安心を』
そうか。
ちょっと安心したのと同時に続報が入る。
『なおこの攻撃はおそらく陽動です。本命は首都オマーチだと予測されています。向こうも既に担当部隊が警戒についています。ですので今夜は心配せずにお休みいただくようお願いいたします』
確かに。
でもそうなると色々心配な人がいる。
研究室の3人は無事だろうか。
スオーから裏切り者と見られているけれど大丈夫か。
あとはホン・ド殿下やシャクさん、ターカノさん。
殿下は色々面倒な人だがそれでも顔見知りだし悪い人じゃない。
色々支援してもらった訳だし。
でも今は俺は何も出来ない。
邪魔にならない為にも今は動くべきではない。
結果、眠れないまま夜が更けていく。
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