第263話 研究室分室?
翌日の朝食はボイルしたソーセージ、卵焼き、ポテト&生野菜サラダ、クリームスープ、パン。
ソーセージは当然この前作ったものだ。
俺はサラダをつつきながら魔道具で油田付近を遠隔偵察してみる。
やはり油田には既に殿下の手が伸びていた。
かなり状態が変わっている。
まず近くの馬車道から支線馬車道が通じている。
そして今まで以上に広い範囲を壁で囲ってあって、立派な門が出来ていた。
中は駐車場のような広い石畳スペースと車庫風の建物と事務所風の建物。
あと俺が作ったのより更に立派な採掘櫓と貯蔵用らしい大型タンク。
採掘櫓のすぐ横まで石畳が伸びている。
おそらく例の蒸気トラックで原油を運ぶことを前提にしているのだろう。
石畳とか車庫風の建物はきっとそれを意味している。
なお精製施設はここには無いようだ。
建物内や付近一帯を見てみたが現在は人はいない模様。
安息日でお休みだからだろうか。
門のところを確認する。
『関係者以外立ち入り禁止 国王庁・ニシーハラ侯爵家』
そんな札が出ている。
とすると俺達が入ってはまずいのだろうか。
あ、何か看板に微妙な魔力を感じる。
更に鑑定魔法を重ねて確認。
『ウージナのグループ研究実践及びオマーチのヤスカワ分室の諸君宛。君達は関係者に含むよ。ここには採掘用に軍や研究機関の者も出入りするが気兼ねなく使ってくれたまえ。
なお5番倉庫と中に入っている一式、事務棟の3番会議室と中の什器一式は君達用だ。門や建物等の鍵は3番会議室の机の中に入っている。自由に使ってくれ。ホン・ド・ヒロデン』
おいおいおいおい。
メッセージ魔法に殿下本人の魔法証明まで入っているよ。
なら念の為確認しておくか。
朝食中で全員揃っているので今が一番都合がいい。
「アキナ先輩かヨーコ先輩、殿下から油田の事で何か連絡は入っていますか」
「そう言えば飛行機の燃料研究のために少し開発するって連絡が入っていたな。詳細は現場に行けば分かるようにしておくって」
ヨーコ先輩に連絡が行っていたか。
これは全員に言っておいた方がいいな。
「油田があった場所に馬車道とか貯蔵タンクとか事務所なんかが出来ています。更に中の会議室の一室と倉庫の一部を自由に使ってくれとメッセージ魔法で記載がありました」
「それなら一度、全員で確認した方がいいですわ、きっと」
「そうですね」
アキナ先輩とユキ先輩はそう言って頷く。
「私達も行ってみて大丈夫なのでしょうか」
「オマーチのヤスカワ分室も関係者の中に入っていました。だから行ってみた方がいいと思います」
タカモ先輩にそう返答しておく。
「なら全員で行ってみたほうがいいねきっと。それほど遠くないから魔道具で充分移動できるし」
「食べたら着替えてすぐ移動だな」
「そうですね」
そんな訳で食事の後少ししたらお出かけだ。
事前に鍵を拝借しておく。
3番会議室はあの事務所風の建物の中一番奥の部屋だった。
部屋そのものは後で詳しく確認するとしてそれらしい机を移動魔法を使った遠隔操作で探す。
鍵は一番手前の机の上の引き出しに入っていた。
「鍵を手に入れました」
「それでは全員で門の前まで移動しましょう。念のためミド・リーさん。付近の気配を確認して頂けますか」
「付近に野ネズミやモグラより大きい動物はいないわよ」
「では移動しましょう。タカモさんとミナミさん、キーンさんは今回は私がお送りいたしますわ」
そんな訳で門の前に移動。
門には『関係者以外立ち入り禁止』の他、『国王庁管轄中央研究所フルカワ分室』の看板がかかっている。
「随分変わったなここも。馬車道もいつの間にかきっちり敷かれているしさ」
「建物はともかく馬車道は大量に石が必要だから大変だよね」
「こっちの立ち入り禁止の札にメッセージが入っています」
「本当だ。しかも殿下の魔法署名まである」
ひととおり観察した後鍵で門を開け中へ。
大きい採掘櫓と大型タンク、蒸気自動車が数台入りそうな倉庫、割と簡素な事務棟がある。
改めて採掘櫓を鑑定魔法で確認する。
俺がかつて作ったものより更に凝った仕組みで、深さ
更に採取したものを一度タンクに貯め、その中から好みの部位を選んで取り出すことが出来るらしい。
色々凝っていてかつ実用的な仕組みだ。
研究用にある程度色々な比重のものを取るのに便利に出来ている。
もっともここの油田はガスから軽油位のものが中心のようだけれど。
「あの倉庫に何が入っているか気になりませんか?」
アキナ先輩の台詞とふと気づく。
そういえば倉庫の中のものは自由に使っていいとあったよな。
「見てみましょう」
鍵を持っているのは俺なので、5番と書いてある大扉の前まで行って鍵を開ける。
カチャ、と音がして鍵が開いた。
力いっぱい扉を引いて開くと……
おいおい、これは……
「蒸気自動車だよね、これ」
間違いない。
あの大型船に入っていたのと似た緑色のトラック型蒸気自動車だ。
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