第262話 お好み焼きを焼きながら
「何これ難しい」
「そうかなあ。ミタキ君のやった通りやれば簡単だと思うけれど」
「でもこれ、崩れていても結構美味しいですわ」
皆さんお好み焼き作りを楽しんでいる。
なお腕前はまあ人それぞれだし、どう作るかも実際自由。
ナカさんが完璧なのを作っていたり。
シモンさんが層を重ねすぎてよくわからんものを作っていたり。
フールイ先輩のがお好み焼きよりタコス寄りな感じだったり。
フルエさんのはキャベツ無しの焼き肉チーズ&小麦粉固めだ。
ミド・リーの前に至っては何故かソバメシ的なものに変化していたりする。
それでも結構美味しく食べられるのがこの料理。
そう思ったら。
「こっち頂戴。その代わりこれ半分あげる」
隣のミド・リーに完璧に出来たものの半分を取られ、代わりにソバメシ状のもの半分を押し付けられる。
ソバメシ風はそのまま食べると濃いソースの味しかしない。
仕方ない。
千切りキャベツを炒めて加え、卵で綴じて食べてみる。
すこしソース味が薄まったかな。
あとはちまちま小さく形の整ったものを作りながら会話に加わる。
「そういえば飛行場とかいつ頃出来ますかね」
「殿下がああ言ったからには冬のうちには作るんじゃないか」
「今月中に出来ているかもしれません」
おいおい脅すなよ。
「何でしたら明日油田の方を見に行ってみればいいのでは。ここからそれほど遠くないと聞いていますし、あの移動魔法用魔道具があれば簡単ですよね」
タカモ先輩の台詞に成程と思う。
原油精製も同時にやっている筈だしな。
「そうですね。明日にでも見に行ってみたいと思います」
「それでよろしければ私も連れて行っていただけますでしょうか。あの原油というものには色々な可能性があるように思えるのです。以前1缶いただいて研究してみました。でもどうも実際に原油で何か新しい物を作るにはかなりの量を必要とするようです。採掘する場所に行ってみれば色々新しい発見があるかもしれません」
「なら大きい容器も持っていけばいいんじゃない。フールイ先輩の大型魔法杖で行き帰り送って貰えば荷物が多くても大丈夫だし」
確かにそうだな。
「明日は安息日だし工事をしていてもお休みだよね」
うんうん。
それならばだ。
「フールイ先輩、お願いしていいですか」
「問題ない。明日の午前でいい?」
「お願いします」
頭を下げる。
「そうと決まれば大きな入れ物を作らないとね。荷車に乗るように作ればいいかな。その方が運びやすいだろうし」
シモンさんはすぐに席を立って作りに行きそうだ。
「食事後でいいだろ。どうせ今使っているこの鉄板、今回しか使わないだろうから。これを解体して材料にすればいいだろうし」
「でもこの食べ方面白いよね。また2~3日したらやりたいからこれはそのままにして、別の材料を使って作るよ」
結局行ってしまった。
作るモードになったシモンさんを止める事は出来ない。
「申し訳ないです。私が原油を欲しいといったばかりに」
「いいのいいの。シモンさんは物を作っている時が一番楽しいんだから」
「そうそう。気にしないで大丈夫です」
「同意。平常運転」
ウージナの皆さんはシモンさんのこの手の行動にもう慣れている。
「ところで新しい物って、どんなものを作れるのでしょうか」
「選択肢が多すぎて戸惑う位です。まずは色々作ってみてそれから考えた方がいいかもしれません」
確かに前世では原油を材料にプラスチックだの何だの色々作っていたしな。
「あとあのエンジンに最適な潤滑油も作らないとならないですしね」
流石にジェットエンジン用の色々な潤滑油なんてものは俺には出来ない。
なのでタカモ先輩とキーンさんに御願いしていたのだ。
この2人で組めば大体の素材は目的に合わせて作れるらしい。
蒸気自動車用シリンダーオイルも蒸気ボート用のタービンオイルも専用品を作って貰った位だ。
チートというか便利というかはおいておいて。
そんな話とは関係なく、横からミド・リーが俺のひじをちょいちょいつつく。
理由がわかった俺はお好み焼きの生地を薄く広く伸ばし、上にキャベツを乗せる。
作るのは正統派広島風お好み焼き。
ミド・リーが『美味しく作ったのをよこせ』と訴えているから。
この辺は付き合いが長いから大体わかる。
俺自身はもう腹いっぱいなのだけれどさ。
大体ミド・リーは俺の倍くらいは食べるから。
焼きながらちょっと考える。
次は平打ち麺にして煎酒ベースと鶏ガラ&魚系出汁、
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