第261話 準備に手間がかかる異世界料理

 温泉は目の毒だ。

 ただ最近は胸の大きめな方より小さめな方がむしろ目の毒のような気もする。

 いけないものを見ているような気がするからなのか、それとも身近な方が危険な感じがするからなのか。

 かと言って普通サイズが目の毒じゃないかというと決してそうでも無い訳で……

 なおオマーチの3人は年齢順に普通、普通、小さめだ。

 ああ、こんな思考読まれたらミド・リーにどつかれるなきっと。

 そんな訳で今回も浴槽の端で目をつぶり地蔵化する。


 まあ今回俺は途中から風呂に入った訳だ。

 ここでじっとしていればそのうち皆あがるだろう。

 そう思ったのだがなかなか皆さんいなくならない。

 これは駄目だ、そう気付いて名誉ある撤退を選ぶ。

 ささっと目の毒が視野に出来るだけ入らないよう移動して脱衣所へ。

 ささっとTシャツと短パンを脱いでさっと着替えを着て。

 多少濡れた分は熱魔法で乾かせばミッションクリアだ。

 せっかく作ったチーズケーキも風呂の緊張感の中では味がわからなかった。

 仕方ない。明日リベンジするとしよう。

 

 下の工作室に籠っているとまた引っ張り出されそうなので今度はキッチンへ。

 晩飯の支度をしていれば問題ないだろう。

 この調子ではどうせ皆さん当分風呂から出てこない。

 だからちょっと時間のかかる面倒なものに挑戦だ。

 小麦粉と卵、塩、重曹を溶かした水を用意する。

 これを混ぜ合わせ、全体に水が回ったら塊にしてしばらく放置。

 この辺の分量等は学園祭で文芸部が編み出したレシピだ。

 ただ今日作るのはラーメンそのものではない。

 

 さて麺の素を寝かしている間に別の材料を用意。

 冷凍トマト、猪魔獣肉バラ、玉ねぎ、人参、リンゴ、生姜、ハーブ適当を刻みまくってガッと魔法で熱を通す。

 水と水飴と煎酒を入れ、圧力を思い切りかけて煮込むというか熱処理。

 全てが熱と圧力で原型がなくなるまで溶けたらちょっと酢を加え、今度は圧力を抜いていき水分を蒸発させる。

 全体がどろっとしたところで魔法で冷まして味見。

 うん、香りはちょっと違うが甘み強めのお好み焼きソースの味だ。

 やっぱりソースは甘みが強くてどろっとしているのが正義だと思う。

 ウスターとかは邪道、中濃なんだそれ!

 甘くないのが好きなら醤油でもかけて食っていろ!

 ちなみにこの場合の醤油とはカープ●ースのことだ。

 あれは醤油屋のソースだからな。

 

 ここまで出来たらいよいよ麺の作成。

 先程寝かしたものをつぶして重ねて潰して重ねて潰して……

 この辺は慣れると工作系魔法で出来るから楽だ。

 とにかく重ねて潰してを繰り返し、ちょうどいいところで薄くて長い板状に。

 あとは切りまくるだけ。

 勿論俺の手でやると誤差が大きくなるので魔法でだ。

 こいつを6半時間10分程蒸してさっと湯がいて、全体に油を回してやっと麺が完成。


 あと揚げ玉も作っておこう。

 油カスの方が面白いかな、あれを使うのは広島風じゃないけれど。

 野菜はキャベツを千切りに刻む。

 キャベツさえあれば他の野菜は必要ない。

 猪魔獣肉はバラ部分を薄切りに。

 魚粉は必要だから魚の干物の三等品を粉にしたものを添える。

 小麦粉をほどほどに溶いて。

 油代わりには猪魔獣オツコト脂身も準備。

 マヨネーズは実家から持ってきたものがまだある。

 よし、異世界版広●風お好み焼きの準備が出来た!

 皆さんが風呂から上がる前にここまで準備が終わったぞ。


 なお、何故いきなり●島風お●み焼きを作ろうとしたか。

 理由は特にない。

 単に食べたかったからだ。

 それに今なら色々作る時間もあるし。

 そうだ、大事な事を忘れていた。

 俺は材料を置いたまま下の工作室へ。

 身体強化魔法を使って鉄のインゴットを持って上のリビングに戻る。

 大きなリビングのテーブルの上に、木材等も使って巨大な鉄板を作成。

 残りの鉄でコテも作成だ。

 やっぱりこれがないとお好み焼きの気分になれない。

 本当はエビとかイカとかも欲しいがそれは海の時にやろう。

 そんな訳で鉄板付きテーブルとお好み焼きセットが完成した。

 熱源は各自の生活魔法で十分だろう。


 ここまで色々やって、やっと皆さん風呂から上がってきた。

 少なくとも2時間近く風呂にいた計算だ。

 まあずっと入っている訳でなく、サウナにいたり涼んだりもしているのだけれど。

 よくもそんな時間と思うけれどまあいい。

 皆さん水着や入浴着から着替えたしさ。

 ちょっとラフすぎる格好だったりもするけれど着ていないよりはましだ。


「何これ。何かつくりかけっぽい準備がしてあるけれど」

「テーブルも何か鉄板を置いてありますね」

 ふふふふふ。

「今回は異世界料理でも面倒くさくてでも美味しい、ある料理を作ろうと思ったんだ。仕上げは自分次第、上手くできるとなかなか美味しいぞ」

「何それ」

「皆来たら説明する。作り方があるからな」

 そうしてお好み焼きパーティの幕があける。

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