第259話 平穏な日々

 本当は魔力の蓄電池も欲しい処だ。

 でも魔力を化学反応で取り出すシステムなんて残念ながら想像つかない。

 コンデンサなら作れるけれどあれも長い時間貯めておける代物ではないし。

 だからとりあえずは素直な蓄電池を作る。

 実際工作系魔法を使えれば原理通りのものをほぼ理想的な状態に作成することが出来る。

 だから材質的に長年研究を重ねた前世の物にこそ劣るが、性能的には悪くない物が出来る訳だ。

 そんな訳で蓄電池は無事完成。

 あと記述魔法と魔石を使った充電装置も電極作成用に作った記述魔法を改造すれば完成だ。

 残念ながらプラスチックなんてちょうどいいものが無いので陶器&ガラス繊維製。

 壊れないよう外側は木箱でガードする。

 無事蓄電池が出来たところで、

「ご飯ですよ」

となった。


 さて、午後は蓄電池を充電する傍ら元々の本題だった飛行機の設計だ。

 勿論最初は4人乗りの小型機から。

 いきなり大型機を設計するほどの度胸は俺にはない。

 鑑定魔法と工作系魔法を使いながら今まで考えた事を図に落とし込む。

 なおこの段階からはキーンさんにも参加してもらっている。

 彼女の最適化魔法は図面でも遺憾なく発揮されるようだ。

「ここはもう少しだけ膨らみを大きくした方がいいです」

「ここの角度はもう少し真っすぐで。強度的に辛い分はこの支柱を1指程太しましょう。重くなった以上に効果があります」

 こんな感じで横から指示をうけつつ図面を描いていく。

 ならキーンさんだけでやった方が早いんじゃないかって。

 何故かキーンさんの最適化魔法は修正する前の原型がないと働かないらしい。

 なので俺が描いては直しの繰り返しになる訳だ。

 なおシモンさんは水晶のカットとか宝飾品づくりの方へかかりきり。

 ヨーコ先輩一派は外でトレーニング。

 夕刻後の魔獣狩りまではこんな感じだ。


 魔獣狩りは基本的にフールイ先輩の穴作戦かユキ先輩の誘導作戦で終わる。

 なお夕刻の鉱石採取は魔石が勿体ないので取りやめになった。

 ただその代わり夕食当番が回ってくる。

 本日は俺とナカさん、タカス君にフルエさんの4人だ。

「そろそろ肉類に飽きてきたので目先を変えるのだ。揚げ物祭りなのだ」

 単にフルエさんが揚げ物が好きなだけという気もする。

 ポテトフライとかジャンクフードシリーズとか自分で作っていたし。

「でも焼き肉に飽きつつあるのは事実ですね。なら冷製や煮凝りも含めたサラダを作ります」

「主役は分厚いカツなのだ。タカス手伝うのだ」

 となると俺はスープ担当かな。

 ソーセージが大量にあるのでちょっと使ってみるか。

 特にミド・リー作の塩やハーブが多すぎる怪しい味の奴。

 あれはそのままでは酷い出来。

 だがスープにすれば結構おいしくなるかもしれない。


 夕食の後は本日はカードゲーム大会。

 前世からのパクリのカードゲームを投入する。

 色々用意してあるが本日は『壱』というカードゲームだ。

 中身はまあ、U●Oのパクリだけれど。

 ちらっと確認すると蓄電池の充電がほぼ終わったのでスイッチを切っておく。


 そんな感じで今日が、そして次の日が過ぎていく。

 討伐した魔獣の報奨金と魔石が貯まっていき、水晶やトパーズを使ったアクセサリーもかなり増えてきたところで。

「そろそろここの魔獣狩りも終わりですね」

 ユキ先輩から終了宣言が出た。

「そうね。今日はもう2離4km以内に魔獣がいなかったし」

「去年より数を獲ったからなあ。報奨金もそろそろ終わりだろう」

「向こうはどんな植物が生えているでしょう」

「温泉が楽しみだよね」

「いよいよ実物大エンジンを作れます」

 確かにあそこの温泉別荘なら村から離れているし、ターボプロップエンジンくらいなら試運転できるだろう。

 油田からも近いしその辺は楽しみだ。


 ただあそこは温泉と料理作り、研究くらいしかやる事が無い。

 街はちょっと離れているし小さいし、温泉のせいか魔獣もいないから。

 でもそうなると結果的に温泉からリビング付近まで水着族が徘徊する訳だ。

 そこが俺やタカス君の悩みどころ。

 まあウージナの研究室でも似たような状況になるときもあるけれど。

 出来るだけ下の制作室に逃げるようにしようと思う。

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