第258話 蓄電池の材料収集

 朝の魔獣解体時間。

 これが俺に対しては宝石採取の時間になってしまった。

 勿論やるのは俺一人ではなく、魔獣解体に加わらないうちの何人かという形。

 そしてこの作業、何気に色々疲れる。

 歩いてしゃがんで冷たい水の中から掘り起こしての連続だから。

 川がため池に流れ込む一番手前側はほぼ採取が完了。

 少しずつ上流に向かって魔法アンテナを移動させていく。


 だいたいため池から20腕40m程上ったところで。

「今日はここまでにしましょう。向こうも解体が終わって受付に運び込みました」

 ユキ先輩から撤収命令が下る。

 本日の収穫はまあまあだ。

 そこまで多くも大きくも無いけれどそこそこ石が集まっている。


 他に珪砂が多そうな場所の砂もバケツ1個分採取しておいた。

 後程タカモ先輩に分別してもらって珪砂だけにして、ガラス繊維を作る予定。

 鉛バッテリー、出来れば18個セルで36ボルトくらいのを複数作りたい。

 前世で自動車用に使っていた一般的なバッテリーは12ボルトだけれど、あれだと電圧が低すぎてその分電流が多くなってしまう。

 配線の太さとかを考えれば電圧は高い方がいい。

 あまり高いと感電して危険だけれどさ。

 でもまずは二酸化鉛を蓄積しないと。

 そのために色々な材料を収集と。


 まずはタカモ先輩に頼み込む。

「すみません。これでガラス繊維を作りたいので珪砂だけを分けてもらえますでしょうか」

「何なら繊維を作るところまでやりましょうか。太さも任意に作れますけれど」

 それは非常にありがたい。

「なら2万分の1指0.001mm位の細さで、長さは10指20cm位でお願い出来ますか」

「わかりました。どうぞ」

 早い!

 もう言ったとおりの極細のガラス繊維が机上に乗せた紙の上に出来ている。

「凄いですね。こんなの真似できない」

「微細領域の工作系魔法は得意ですから。でもそれ、面白そうな素材ですね。後程自分でも研究してみていいですか」

「勿論です。なら半分置いていきます」

「ありがとうございます」

 こちらこそありがとうございますだ。

 俺ではあの工作系魔法用の杖を使ってもとても出来ない技だからな。


 あとは二酸化鉛作成装置用の小型記述魔法杖を作って、鹿魔獣の魔石使用の発電装置を作って……

 よく考えたらまだガラス繊維はいらなかったかな。

 二酸化鉛が出来てからで十分だった。

 でもまあいいか。

 そう思ってふと気づく。

 アルミニウムをボーキサイト以外からも魔法で精錬できる魔法使いは、二酸化鉛くらい鉛から魔法で作れるのではないだろうか。

 疑問は解消するに限る。

 ということで鉛のインゴットを持って再びタカモ先輩へ。


「先輩再度すみません。この鉛を呼吸に必要な空気と化合させたものって作る事は出来ますか」

「ちょっと待ってください。やってみますね」

 やっぱり出来るのか。

 そう思ってみてみる。

「うーん、何種類か……私がここで作って安定しているのは4種類です。どれを使うのでしょうか」


 おいおい、本当に出来るのかよ……

 こんな魔法ありかよと思うけれど、あるのだから仕方ない。

 ちなみに出来ているのは一酸化鉛(薄い赤色)、二酸化鉛(黒褐色)、二酸化鉛(黒色)、四酸化三鉛(オレンジ色)だ。

 鑑定魔法によるとだけれど。

 鑑定魔法によると鉛蓄電池用には二酸化鉛の黒いものを選ぶべきだと出る。

 なのでタカモさんにお願いし、全部を二酸化鉛(黒色)にしてもらう。


「何かやっぱりとんでもない魔法ですね」

「でも作ったものをどう活用するか結果が見える方が面白いと思います。これは一体何に使うつもりなのでしょうか」

「電気を貯める蓄電池という装置を作るために使おうと思っています。電気はわかりますよね」

「ええ、私達の研究室にも発電機をつけてもらいましたから。あれはなかなか興味深い機械ですね。私が思ってもみない方法で液体の中身を分けたりすることが出来て面白いです。ものをかき混ぜたり照明にも使えたりしますし」

 この人の場合は電気とは電気分解をするための装置というのが第一義なのか。

 うーん、流石素材系魔法使い。

 ともあれ思ってもみなかった早さで鉛蓄電池の材料がそろってしまった。

 これはもう作るしかないな。

 お昼ご飯までには試作品が作れるだろうか……

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