第198話 原油採取
周りは石灰石でしっかり固めた壁。
高さはせいぜい
そして石がどれも少し黒くべたついた感じだ。
下の地面もそんな感じ。
なお俺達は木道みたいになっている板の上に立っている。
この木道も少し黒く染まっている状態だ。
「以前は黒い水が時々吹き上げたりあふれたりしたからな。周りを汚染しないようにこうやって厳重に囲んだんだ。井戸水の層が汚れないよう下方向にも3腕位しっかり囲ってある」
なるほど、なかなか厳重だ。
「木道部分以外は歩くなよ。下の地面は汚水が出てこないように焼き固めてある。ただそこまで頑丈ではないから人が歩くとひび割れる可能性があるんだ。ひび割れたらそこから汚水がしみ出してくる。場合によっては吹き上げたりもするらしい」
木道は中心部に向かって延びていてる。
中心部は直径
壁と同じような石でぐるっと囲ってあり、その中は街中の歩道と同じく赤い焼土で塞がれていた。
「それにしても臭うね。ちょっと覚えがない臭い……石炭を乾留したした時の臭いに似ているかな」
「これは間違いないな。油田だ」
鑑定魔法を使うまでも無い。
そこここにこびりついた黒いタール状のものと匂いですぐわかる。
「その油田って何なの」
「簡単に言うと石炭が液体になったようなものだ」
「とすると燃やすのに使うわけかな」
「他にも色々使える。でもまずは見本を持って帰って研究室で色々調べてからかな」
中心部に行って石部分の上に持ち帰り用の缶を置く。
「これは穴を開けないと採取できないけれど、後に同じ状態に戻せば大丈夫だよね」
「下から汚水が出てこないようになっていれば問題ない」
「この下はどれくらい埋まっているのかな」
「確かここは
「なら今日の道具で十分だね」
そう言ってシモンさんは鉄のパイプを焼き土の上に立てた。
パイプは下へ下へと沈んでいく。
「えっ」
「力じゃないよ。工作系魔法で下に延ばしているだけ」
腕力で下へ押し込んでいるように見えるけれど工作系魔法らしい。
ある程度下へ押し込んだところで今度はパイプの上端が曲がり始めた。
そのまま先程おいた鉄の缶の上へとくっついていく。
「これで井戸の埋まっていない部分とここの缶が直接繋がった状態だよ。あとはここの蓋を少し開ければ下からの圧力で中に水が入っていく筈」
なるほど。
でもこんな事を魔法杖無しで出来る訳か。
やっぱり工作系魔法はチートで便利だ。
「ここの蓋の開け閉めで入ってくる量を調節できる訳か」
「そう。僕よりミタキ君がやった方が鑑定魔法で色々判断できると思うよ。だから操作は頼むね」
「わかった」
俺は鑑定魔法を起動して蓋を軽く開く。
中に液体とガスが一緒に入ってくるのがわかった。
パイプの深さの問題だろうか。
入ってくるのは天然ガスとガソリンに近い軽い油がほとんど。
生活魔法で冷やしながら採取を続ける。
ガスも空気でなく天然ガスがほとんど。
だから冷やすと液体になる。
俺の日常魔法で冷やしても液化しないガスは捕集を諦めた。
次は万能魔法杖と工作魔法用杖も持ってこよう。
採取する入れ物もより圧力に耐える頑丈な物にして。
ほぼ満タンになったところで俺は蓋を閉める。
「これで取りあえずは十分。でもこの後はどうすんだ」
「工作魔法でパイプを綴じておくよ。取りあえずこれで漏れる事は無いと思う。それにまた採取するときにこのままにした方が便利だよね」
なるほど。
「漏れなければ問題無い。どうせ此処に来る人なんていないからな。漏れたり異臭がした時に作業で来るくらいだ」
なら問題無いか。
それじゃ帰ろうか、そう言おうとして俺はふと気づいた、
フールイ先輩が壁の向こう側の山の方を見ている。
何かその視線が妙に気になった。
「先輩、どこか寄った方がいい場所ありますか」
フールイ先輩は一瞬だけはっとした表情を見せる。
すぐにいつもの無表情に近い状態に戻ったけれど。
「今はまだいい。届かない」
届かない?
どういう意味だろう。
でも何故か今聞くのはいけないような気がした。
プライバシーに土足で踏み込んでしまうようで。
「なら取りあえず帰ろうか。帰る場所はどの辺がいいかな」
「そう言えば学校内は移動魔法で入れないんだよね」
そうだった。
そういう意味ではヨーコ先輩に来て貰って良かった。
この原油入りの重い缶を持って歩くのはきつすぎる。
そんな訳で学校近くで誰の視線も無い場所を探す。
前回の路地とは違う場所がいいよな。
あ、こんな場所はどうだろう。
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