第197話 油田発見?

 そんな事をやっているうちにお昼の時間になる。

 ちなみに今回は海鮮スパゲティだ。

 皆さん色々な事に夢中になっていたがちゃんと昼食は出来ていた。

 誰も作らないのを見てタカス君が作っていてくれたようだ。

 エビだの貝だのが結構入っていて美味しそう。


 実際の美味しさを噛みしめながら俺はフールイ先輩に尋ねる。

「そう言えばフールイ先輩はこの魔道具で何をしていたんですか」

「自由に色々見る訓練。出来れば過去や未来を見る事が出来ないか試行錯誤中」

 そう言えば予知も同じ種類の魔法だってターカノさんが言っていたな。

「それで状況はどうですか」

「未来は難しい。過去は出来る。今の限界は1年前」

 うわっ。

「過去1年前まで見ることが出来るんですか」

 まさかそんな使い方が出来るとはな。


「それでヨーコさんに質問。侯爵領マキからカナヤ・マへの途中、板塀で囲った異様な場所があった。あれは一体何だろうか。軍事とは関係無さそうだし見張りも無いが壁や塀が妙に厳重で気になった。秘密ならいい。たまたま見えて気になっただけ」

「ああ、フクキの汚染地か」

 ヨーコ先輩はすぐにわかったようだ。

「昔、畑を作る為に深井戸を掘った際、黒いベタベタした臭い水が出てきてしまった場所でさ。その水が植物を駄目にするんで封鎖して水が漏れないよう厳重に囲んだんだ。ガスも出てくるから近くで火も使えない。色々な意味で使えない場所だよ」

 ん、黒いベタベタした水だと?

 しかも引火性のあるガスも出てくる?

 それってもしかして原油じゃないのか。


「ヨーコ先輩、そこの土地を調べたりすることは出来ますか」

「問題無い。周りを汚染しないように注意してくれれば十分だ」

 原油の可能性があるなら調べる価値はあるだろう。

 勿論今すぐに使えるという訳ではない。

 本格的な精製装置を作るのはかなり大変だろう。

 それでも材料としてはかなり貴重だ。

「それで何か面白い物でも作れるのかな」

「色々面白い物を作るための材料になるんだ。採取方法を考えたり加工したり運んだりする方法を考えたりしないといけないけれど」

 ドラム缶を作って持っていくべきだろうか。

 あと出来れば天然ガスも冷却して入手したい。

 運搬手段は積載量を考えれば車よりボートだな。

 あとは……


「取りあえず見てくればいいんじゃない。それで使えそうなら運ぶ手段とか道具とかを考えれば」

「取りあえずって……そうか」

 そう言えば移動用魔道具があるんだよな。

「でもカナヤ・マ付近まで行ったら戻ってこれる自信が無いな」

「何なら私が行きは連れて行く。帰りはミタキの魔法で戻ってくればいい」

 確かにそれなら出来る。

「気になるなら早い方がいい」

「ならフールイ先輩、お願いしてもいいですか」

「勿論」

「僕も見てみたいな。何かの材料になるなら」

「なら私もつきあおう。案内も必要だろうからな」

 確かにシモンさんとヨーコ先輩がいれば安心だ。


 昼食終了後、早速準備を始める。

「どうせなら分析用に見本を持って帰ろうよ。どんな容器がいいのかな」

「鉄の缶がいいな。持ち運びできる限度くらいで」

「ある程度頑丈な方がいいよね」

「成分が揮発するから蓋がしっかり閉まるようにした方がいいな」

「なら前に教わったネジ式で奥に木製パッキンをつける物にしておくよ。あと水をくみ上げるポンプはどうしようか」

「確か穴を開けると勝手に出てくると聞いたから、ポンプはいらないと思うぞ」

「なら適当なパイプを持っていけばいいね」

 シモンさんがいるとこの辺の準備が非常に楽だ。

 俺なら半時間かかる工作が瞬時に出来上がる。

 水だと3重18kg位入りそうな取っ手付きのタンクだ。

 何気にごつくて空でも結構重い。

 更に細長いパイプも出来ている。


「これは私が持とう。それでは行こうか」

「行きは場所がわからないからヨーコ先輩とフールイ先輩お願いします」

「なら私がこの缶とシモンさんを連れて行こう。フールイさんはミタキを頼む。場所は一番外側の石壁の南側に入口があると思うからそこを入った処だ。それなら他に見ている人もいないだろう」

「確認出来た。誰もいない」

「なら行こうか。準備は他に必要ないよな」

「大丈夫だと思う」

「行ってきます」

 ふっと浮遊感を感じる。

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