第169話 のんびりした午後
「そう言えば明日は登山をしてみないか。ここからオソラカン山まで普通の人でも半日で行って帰ってこれるらしい。景色が最高にいいらしいぞ」
登山か。俺には縁の遠い話だ。
そう思ったがふと思い直す。
そうだ、俺にはさっき開発した万能魔法杖がある。
あれさえあれば普通の人以上の体力で動くことが可能だ。
「それも楽しそうだな」
「珍しいね。ミタキが身体を動かすことに乗り気だなんて」
ふふふミド・リー、俺は生まれ変わったのだ。
でも持ち歩き用ならもっと小型で軽い方がいいかな。
なら今日の午後はさっきの万能魔法杖を設計し直すとしよう。
コンデンサも板部分を
箔だけだと脆いが布か何かで補強すれば大丈夫だろう。
「ご飯とかはどうする?」
「作って持っていってもいい。でも山で温かい汁物を食べるのも美味しい」
「なら主食はフールイ先輩にお任せしようか」
「承知」
「いいね」
この世界だと水は生活魔法で作れるから楽だよな。
「後で商店街に買い出しに行ってくる。この辺の味を入れたものにしたい」
「どうせ午後も皆買い物に行くんでしょ。まだお店全部回っていないし」
そんなにあそこの商店街は大きくなかったけれどな。
どんな速度で店を回っているのだろう。
考えるだに恐ろしい。
「俺は午後はパスするわ。ちょっとトレーニングをしたい」
「俺もそうしよう」
「俺もまだ製作する物があるしさ」
俺を含めた男子3名は流石に買い物には行かないようだ。
午前中一緒に回っただけでも2人は偉い。
「それとミタキ君にお願いがあります。さっきの万能魔法杖、私にも作って頂けませんでしょうか。出来ればもう少し軽い方が嬉しいのですけれど」
アキナ先輩、さては明日の登山で俺と同じように使う気だな。
「いいですよ。どうせ午後はあれを改良しようと思っていたんです」
「それではお願いしますね」
「あと夕食はどうする?」
「残った男子一同で作っておく」
この返事は俺では無くタカス君だ。
そんな訳で午後は別行動。
シンハ君は外へ独りで出かけ、タカス君は読書。
俺は万能魔法杖の製作にとりかかる。
改良すべき点と方法論がわかっているから作るのはたやすい。
ただ
やっぱり
2人分の万能魔法杖を作るともう残りが少ない。
あとひとつ万能魔法杖をつくれるかどうかの量だ。
何せ
でももし
帰りに他の銀産地を寄ってみるか。
俺のポケットマネーを使ってでもある程度購入しておいた方がいいかもしれない。
俺は専用工作系魔法アンテナを使ってもシモンさんのように製品練成は出来ない。
この辺は魔法の強さでは無く『どこまで製品を細かい所までイメージ出来るか』の能力の違いだそうだ。
だから俺が作るときは色々段階を踏んでやる必要がある。
今回の場合は
シモンさんなら一瞬で錬成するところを2時間以上かけてやっと完成した。
でも万能魔法杖の出来は満足だ。
重さも大きさも標準的なA4ノートパソコン大。
もちろんそんなものこの世界にはないけれど。
あとは万能魔法杖に記載した記述魔法の一覧も作っておくかな。
この辺は紙に書くだけなので簡単だ。
なお工作系魔法を使えば手書きより遥かに早くて綺麗。
なので2セットほど一覧を作る。
さて、完成したのでディパックのポケット部分へ入れる。
この状態で外で試してみよう。
出る前にタカス君に一声かけておこうかな。
そう思ったがさっきの場所には見当たらない。
でも本が置いてあるからすぐに戻ってくるだろう。
それにしてもどんな本を読んでいるのかな。
特に何の気なしに見てみる。
おお。漫画だ。
俺はあまり読まないけれど面白い事は面白いんだよな。
そう思ってついつい読んでみる。
主人公は中等部に入学したばかりの女の子。
それがこの学校に入るきっかけになった先輩女子に憧れていて……
おい、これはひょっとして日本で言うところの百合な漫画ではないだろうか。
でも絵もなかなか可愛いし話も良く出来ていてつい引き込まれてしまう。
主人公は憧れの先輩(女子)の所属する女子剣術研究会に入会。
でも研究会は先輩狙いの新人と後輩狙いの先輩達の魔窟だった。
同じ先輩を狙う同級生女子。
そして主人公が好みのタイプだと狙う先輩女子。
ほのかな恋心を抱きつつ主人公を見守る妹。
主人公の恋(百合)は実るのか!
それとも別の先輩(女子)に食われてしまうのか!
そして妹の想いは!
そして運命の新人合宿、最初のお泊まり行事で……
ついつい夢中になって読み進めて気がつくと1巻が終わってしまった。
さて次の巻はと思ってふと気づく。
横でタカス君がジト目で俺の事を見ていた。
うっ、まずい!
この場合はどう反応するのが正解なんだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます