第141話 プログラム言語な記述魔法
「なるほど、物の自然な性質を極める方向で進化した訳ですか」
おやつの時間の後、研究室内の色々な機械を見せた後のタカス君の感想だ。
フルエさんは鏡や香水、蒸気自動車や蒸気ボートには興味を示したがその構造や原理にはあまり感心はない模様。
ただタカス君の台詞は俺達の簡単な説明を十分理解している感じだ。
鑑定魔法系統の魔法持ちだし仕組みそのものも理解できているのだろう。
なお逆鑑定魔法は既に全部外してある。
「ところでタカス君の知っている世界の知識はどんな感じなんだ。魔法の使い方が違うと言っていたけれど」
「今すぐ使える知識はまだまだ考えてみないと無理です。俺も向こうで何かの専門家だった訳ではないので。ただ向こうで一般的な魔法ならここでもある程度使えます。例えば」
彼はそう言うとズボンのポケットからペンと名刺サイズの紙を出す。
紙にささーっと何か書いている。
結構文字数が多いようだ。
少しして彼は書き終え、目で紙片を確認した後。
「では魔法を実施します。階段上へ跳躍、
ふっと彼の身体が飛び上がる。
そのまま彼は風呂部分への階段踊り場へと着地した。
何かその跳躍の軌道が不自然に感じたのは俺だけだろうか。
「こんな感じです」
そう言って彼は階段から下りてくる。
「なるほど、紙に記述する形なのか」
「ええ。内容はこれです」
先程の紙片を渡してくれる。
見ると俺でもわかるここの言葉で記載してあった。
『階段上へ跳躍 開始
平面座標指定 縦 俺縦位置、階段踊り場上縦位置+
横 俺横位置、階段踊り場上横位置
繰り返し 俺縦位置=階段踊り場上縦位置+
目標縦位置=俺縦位置+
もし座標外(目標縦位置、俺横位置) 目標縦位置=階段踊り場上縦位置+
俺縦位置、目標縦位置
繰り返し終わり
繰り返し 俺横位置=階段踊り場横位置
目標横位置=俺横位置+
もし座標外(俺縦位置、俺横位置) 目標横位置=階段踊り場横位置
俺横位置、目標横位置
繰り返し終わり
終わり』
「いつもは早さと簡単さ重視で向こうの世界の言葉で省略して記載しています。今回はわかりやすいようにここの言葉で丁寧に書きました。これでも魔法は発動します」
これと同じような文法をかつて俺は見たような気がする。
そう、間違いなくプログラム言語だ。
「これは誰が書いて誰が読んでも魔法が動くの?」
ミド・リーの質問に彼は首を横に振る。
「以前フルエに読んで貰ったが使えませんでした。でもフルエに書いて貰ったものは、フルエは使えませんでしたが俺は使えました。
ただ一部の自動起動系の呪文は誰が書いても自動的に起動します」
なるほど。
ちょっと思いついた事があるので彼に聞いてみる。
「今の魔法だと目標の場所が階段踊り場上
タカス君ははっとした目で俺を見る。
「出来ます。というかそれが本来の使い方です。何故それがわかったのですか?」
「魔法ではないけれど似たようなものが俺の前にいた世界にもあってさ」
ますますプログラム言語だな。
「なら普段は目標場所や魔法の対象を変更できるようにした紙を用意しておいて、必要な時にそこを加えて発動させればいい訳なんだな」
「実際にはそうしてます。向こうでもそうでした。大体生活に必要な100位の魔法をカードにして、必要な時に『加熱魔法、目の前の水、沸騰状態、
うん、理解した。
間違いなく魔法版のプログラム言語だ。
「この命令、いや魔法はどの言語で書いても通用するのか?」
「使用者が理解できる言語なら大丈夫な筈です」
かつての俺がいた日本のプログラム言語より融通がきくようだ。
「これって神とか悪魔とか精霊が実行するようなものなのかしら」
「頭が固い精霊でも実行できるように丁寧に記載しろと習っています。でも実際に魔法を実行させるのはあくまで自分の魔力で、精霊とかは関係ありません」
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