第80話 今日はピザパーティ

 夕食はピザにした。

 正確には買ってきた大きな円形パンにピザ風トッピングをして焼いたものだ。

 トマトとチーズ、それにソーセージ代わりに塩漬け肉をのせた定番風ピザ。

 とにかくチーズを載せまくったチーズピザ。

 マヨネーズ味ベースでチーズと鶏肉とトマトを載せたピザ。

 そんな感じで思いつくままに適当に作った具材を載せて焼きまくった。

 そんな訳で夕食は直径36cmの大型ピザを5枚。

 8人ならこれだけ作れば充分だろう。

 そう思ったのだが俺の計算は甘かった。


「旨いよなこれ。食べやすいし」

「なかなかパンチの効いた味ですわ」

「これってミタキのオリジナル?」

「このパンが売っているという事は多分同じような料理があると思うぞ」

「チーズが熱い。でもそこがいい」

 足りなくなりそうだったので、追加でスパゲティを茹でた位だ。

 ちなみにこっちはカルボナーラ風。

 しかし皆さん自分の食べた分のカロリーをわかっているのだろうか。

 チーズだのマヨだのガンガン使ったからとんでもなくハイカロリーだぞ。


「合宿行くとこれが楽しいよね。目新しい物を思い切り食べられる!」

「目新しいと言いつつもほぼミタキ君に作らせているけれどな」

「以前ミタキ君のいた世界って料理が豊富だったんですね」

「という事はだ、ミタキ君」

 あ、ヨーコ先輩が何か良からぬ事を考えているようだ。

「ひょっとして今日売った鹿魔獣肉のモツも、色々な料理方法を知っているのかい」

 ぎくっ。

「前世の世界には魔獣はいませんし鹿肉のような自然の肉は貴重だから食べた事はありませんでした。でも豚や牛等のモツとか内臓肉の焼き肉とかユッケなら……」


「明日捕まえたら夕食用に確保ですわね」

 アキナ先輩の台詞に俺以外の全員が頷く。

 君達どれだけ喰意地がはっているんだ!

 でも俺も食べてみたいかも。

 なら焼き肉のタレとかも作っておこうかな。

 一晩じゃ熟成が足りないけれど即席よりはいいだろう。


 あと焼き網とかバーベキューセットを作って貰おうか。

 安い銅地金を買ってシモンさんに作って貰えばいいだろう。

 そうすると米が欲しい。

 今日見た限りでは市場には無かったが、駄目なら押麦でもいいか。

 そんな事を考えながら夕食は追加分まで含めて無事完食される。

 さて、焼き肉のタレでも少し仕込んでおくか。

 

 ◇◇◇


「そういえば魔石で何を作るつもりなのかな?」

 夕食を皆で片づけた後。

 キッチンで焼き肉のタレの他、ピザ用トマトソースとかスパゲティやサラダ用のジェノベーゼソースとかをノリと勢いで作っていたら、シモンさんにそう尋ねられた。

「魔石をエネルギー源にして魔法を使える魔法杖とか便利道具とかを作れないかなと思ってさ。例えば猿魔獣ヒバゴンの魔石を使った送風機とか」


「でも魔石を魔法のエネルギー源にしようとした研究は大体失敗しているよ。唯一の成功例が魔法銅オリハルコン魔法銀ミスリルの製造。他は爆発させたり反応が無かったり。だから魔法金属を作る以外では宝石の代わりくらいにしかならない、それが今の常識だよ」

 シモンさんの言っていることは事実だ。

 俺も色々調べて知っている。

 そのうえで出来るだろうと思ったのだ。

 もちろん根拠もある。


「爆発したってのは多分、エネルギーの引き出しには成功したって事なんだと思うんだ。ただ引き出した魔法エネルギーを放出させるのに失敗しただけでさ。

 実はある程度目処はついている。このソースを作り終わったら試してみよう。大した工作じゃない。今日購入した銅と魔法銅オリハルコンを使って、ヨーコ先輩用の大型魔法杖を使えば実験できる」

 すりつぶして混ぜたバジルやニンニク、松の実にオリーブオイルをひたひたに注ぎながら俺はそう計画を話す。


「それってあの杖に魔石をつけるっていう事かな」

「そう。これでこのソースは完成だから、片づけたら概念図を描くよ。ただ繋ぐだけだと危険な可能性もあるからさ。安全装置部分を作らないと」

 止められないまま動きっぱなしになると困るしさ。


「ううー、そんな事を言われると早く作りたくなるじゃないか。片づけは僕が全部やるから早く概念図を描いて欲しいな。そうすれば概念図が出来次第作れるから」

「わかった」

 シモンさんは新しい物を作る話にはすぐ飛びつくよな。

 まあそれで俺も助かっているのだけれど。


 そんな訳で俺は手を洗うとその場をシモンさんに任せてテーブルへ。

 適当な紙を取り出してペンで概念図を描き始める。

 魔法に対して銅と反応が違いそうな金属というと鉛か錫あたりかな。

 手持ちで弾丸用の鉛があるし青銅があるなら錫もあるだろう。

 とりあえずは手元にある鉛で作ってみよう。

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