第81話 魔石実験装置作成中

 まずは魔石から魔力なり魔法を取り出す手段だ。

 これは電池のように違う種類の金属2種で電位差のように取り出せないだろうか。

 そんな訳で鉛と魔法銅オリハルコンをそれぞれ電極代わりとして魔石に装着する。

 あとはここから魔法銅オリハルコンの導線をアンテナに接続してやればいい。

 ただ急激に魔力が流出したら危険なので安全装置を付ける。

 導線部分にスイッチを付け、押している時だけ接続するようにしておこう。

 それならやばいと思った時に離せば接続が切れる。

 電極代わりの板が接触しないように間に木か何かでセパレーターも設置。


 俺が概念図を描きかきしているのを皆さんが周りから眺めている。

 さっきまで食べ過ぎでのたのたしていたのだが、少し復活したらしい。

「何を描いているの」

猿魔獣ヒバゴンの魔石を出力する装置。猿魔獣ヒバゴンの魔法は風魔法だから、ヨーコ先輩の杖を借りて実験してみようかと思って」


「具体的にはどんな事をやるんだ?」

「ヨーコ先輩の大型魔法杖を使って、魔石のエネルギーを前方へと放出させてみます。それでどういう現象を起こすか、それとも起こさないかの実験です。装置の設計的には爆発する事は無いと思います。ただ念の為ある程度離れて実験するようにしますけれど」

 その辺は導線を伸ばして対処する予定だ。

 被服導線も投光器用にある程度用意してあるけれど、今回は魔法銅オリハルコンで導線を作って貰おうかな。

 その辺が間違ってアンテナ化しないように長さを決めておこう。

 本当はリレースイッチでもあればいいのだけれど電源を取るのが面倒だしさ。


 描き終わる前にシモンさんがやってきた。

 ソース類作成の片づけが終わったようだ。

「どう? 出来た?」

「もう少し」

 説明書きを色々付け加える。

 こっちの導線は被覆してほしいとか。

 ここは絶対に接触しないようにとか。

 更に安全装置を付加しておこうかな。

 アンテナが異常な外力を受けた場合はスイッチが切れるよう、ボールスイッチを改良したものを追加。


「ミタキのいた世界って魔法は無かった筈だよね。何でこんなのを思いつくの」

「電気というものがあって、その性質が魔法にもある程度準用できるんじゃないかと思っているんだ。あの大型アンテナはそれで上手くいったしさ」

 よし、こんなものかな。

 一通り見てミスが無いのを確認してからシモンさんに渡す。


 シモンさんは図面を一通り見て確認する。

「これくらいならすぐ作れるよ。僕用の大型魔法杖もあるし、予備材料も一通り舟に積んであるしね」

 そのままテストまで敢行しそうだったから一応注意しておく。

「出来ても試運転は明日明るくなってからな。何が起こるかわからないし、明るいところで色々見た方がいいだろうしさ」

「ボートの電源と投光器を使えば大丈夫じゃない?」

「あのボートは動かすとそこそこ煩いからさ。もう夜だし実験で予想外の事が起きるかもしれない。だから安全のため明るくなってからにしよう」


「うーん、仕方ないか。でも作るだけ作っておくよ。明日魔獣処理したらすぐに使えるようにさ。それでシンハ頼む、これからボートに置いてある材料を取りに行くから手伝って」

「OKいいぞ」

 2人は部屋を出ていく。


◇◇◇


 翌朝。

 魔獣6体の皮剥ぎと解体には結構時間がかかった。

 4体ある鹿魔獣チデジカは肉も買い取り対象になる。

 そのため皮剥ぎだけより数段手間取ったのだ。

「これ1頭分はこっちで食べる分に取っておこうよ。ミタキがどんな料理にするか楽しみだからさ」

「そうですね。魔石の装置の後、シモンさんと専用調理器具を作っていましたし」

 ちなみに専用調理器具とは焼肉用バーベキュー装置である。

 熱源は各自の生活魔法なので網と脂受けだけの簡素なものだけれど。

 そんな訳で魔獣計6体分の毛皮と3体分の肉を換金。

 猿魔獣ヒバゴンは毛皮と報奨金で1頭正銀貨1枚1万円

 鹿魔獣チデジカも毛皮と報奨金で1頭正銀貨1枚1万円

 ただし鹿魔獣チデジカは肉が1頭分で正銀貨2枚2万円になる。

 つまり6頭あわせると正銀貨12枚12万円分。

 肉1頭分をこっち専用にしてもかなりの儲けだ。


「これだけ儲かれば魔獣討伐専業でやる人がもっと増えそうだけれどな」

 貧乏性が治らないシンハ君がそんな事を口にする。

 今はシンハ君の家も水飴や化粧品、それに冬になって始めた寒天で結構儲かってきている筈なのに。

「私達みたいに魔法で遠距離から追い立てるなんて方法、そうそう使える人はいませんわ。他に出来るのは同じ魔法杖を持つ軍隊くらいのものです。しかもミド・リーさんの魔法が使える分、軍隊よりも私達の方が有利ですし」

「普通にやると10人以上で山狩り形式になるか、少数で待ち伏せになるかだからな。この人数でこれだけ簡単に数を討伐できるなんて事はまず無いよ」

 アキナ先輩とヨーコ先輩がそれぞれ本来の状況を説明してくれる。

 なるほどな。

 この恵まれすぎた環境が普通になっていて俺も気づかなかった。


「さて、次は魔石を使った道具の試験だね」

 シモンさんは俺以上にウキウキわくわくという感じだ。

「念の為に討伐用品も一通り持っていこう」

 そうだな、と俺もヨーコ先輩の台詞に頷く。

 何が起こるかわからないしな。

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