第79話 まずは料理の試作から
新しい材料がそれぞれある。
ひとつが魔石や
もうひとつは唐辛子、ニンニク等ウージナにはなかった目新しい食材。
どっちを優先しようか少しだけ考えた結果、今日は食材を優先する事にした。
まずは調味料としてラー油とタバスコを作っておく。
ラー油は油を熱して、唐辛子たくさんとニンニクちょっとをみじん切りにして入れてやり、塩で味を調整すればいい。
油は本当はゴマ油が欲しいところだが、無いのでオリーブ油で代用だ。
香りが少々異なってしまうが辛み油として使うにはいいだろう。
タバスコは唐辛子を潰して潰して潰しまくって、塩と酢を入れれば完成。
本当は熟成期間が必要だけれど仕方ない。
「ヨーコ先輩すみません。ちょっと換気お願いします」
ニンニクの匂いと唐辛子の目に悪い空気が充満し始めたので換気をお願いする。
「わかった。確かにこれは強烈だな」
ニンニクの匂いはともかく唐辛子の目に痛い空気は厄介だ。
ヨーコ先輩のおかげで無事に正しい空気に戻ったけれど。
さて、あの麺がどんな性質か確かめよう。
数本を茹でて味とか腰を確認。
うん、間違いなくパスタ、それもやや細めのスパゲティだな。
なら試食用にペペロンチーノを作るぞ!
ペペロンチーノはかつての俺にとって憧れの料理のひとつだった。
病院ではニンニク臭のある料理は出なかったから。
ニンニクと唐辛子をじっくりオリーブオイルで炒めつつ、試食用のスパゲティを茹でる。
炒めて炒めて炒めてちょいゆで汁を加え、混ぜて混ぜて混ぜた後、湯切りしたスパゲティを加えて混ぜる。
最後に皿に盛りチーズを乾燥粉砕したものをかければ完成だ。
イタリアンパセリが無いのは勘弁して貰おう。
気づく人は俺以外いないけれど。
ニンニクの臭いで既に皆様キッチン方面に召喚されている。
「ほい、この麺の試食用。ちょっと辛いし臭うから苦手な人がいたらご免な」
「これまた刺激的な臭いだな。これも昔のミタキが知っていた料理か?」
「ええ。でも食べ慣れないタイプの癖があるので、駄目な人はいるかもしれません」
ささっとナカさんが人数分の皿に少量ずつ盛り付けてくれる。
ついでにさっき作った粉チーズの皿とタバスコの皿、それにラー油の皿もおいて小スプーンをそえた。
「では、いただきます」
一口食べた途端、皆さん色々反応する。
「何だこりゃ」
「臭い」
「この感覚は初めてですわ」
「知らない味」
ウージナには香辛料らしい香辛料が無かったしな。
レモン塩を代用にしていた感じだ。
さあ、ニンニクと唐辛子の“辛い”という感覚をどう感じるか。
「知らない味だ。でも癖になるかもしれない」
ヨーコ先輩は気に入った模様。
第二弾を思い切り盛っている。
「そのチーズをかければ若干マイルドに、真ん中の赤いのを書ければ辛酸っぱくなります。ただ試すなら少しずつやった方がいいですけれど」
言っているそばからシンハ君がタバスコをガンガンにかけた。
そして案の定タバスコを馬鹿かけした部分を食べた瞬間妙な呼吸を始める。
更に水をがぶ飲み。
間違いなく熟成されていないタバスコを盛ったのが敗因だ。
なお作った俺としてはほんの少しタバスコかけた位がちょうどいい状態。
うん、なかなかいける。
「不思議な味。臭くてきついのに後を引く」
「本当です」
皆さんの食べっぷりを見るに多少辛い程度なら大丈夫な模様。
女子は辛いの苦手だと前世で聞いたような気がするけれどな。
試食用程度に茹でたスパゲティはあっという間に全滅した。
「おかわりは無いのか」
「あくまで試食ですから」
不満そうなヨーコ先輩にそう言っておく。
「それにしても前にこの村に来た時にはこんな料理は無かったぞ」
「最小限の材料で作れる、どちらかというと貧乏人の家庭料理ですからね」
領主様に出すような料理では無いのだ。
「夕食もこれが出るのか?」
ヨーコ先輩の質問に俺は首を横に振る。
「まだ試していないものがありますから、そちらをメインにする予定です」
俺の視線にはあの丸くて薄めのパン。
そう、夕食はピザだ!
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