第72話 冬合宿に向けて
冬休み前の最大の問題が解決した。
「何とかクリアできたぞ!」
そう、シンハ君が無事試験を赤点・補習無しでクリアしたのである。
「皆で勉強会した甲斐があったね」
シモンさんの台詞にシンハ君は首を横に振る。
「いや、はっきり言って役に立たなかった」
きっぱりとそう断言し、そして続ける。
「はっきり言ってここの面子は人に算術を教えるのには向いてない。
○ シモンさんはフィーリングで算術の問題を解くし、
○ ミタキは授業で教わっていない解法を平気で使う。
○ ナカさんは魔法で途中経過無しに答えを出すし、
○ ミド・リーは頭良すぎて何処がわからないかわかっちゃくれねー。
だから仕方なく自分で教科書を読み直して例題を全部自力で解いたんだ!」
「自分で勉強するのは当然でしょ」
確かにミド・リーが言うとおりなのだがシンハ君の言いたいこともわかる。
確かにここの面子は皆さん色々独自すぎる。
俺も人のことを言えないけれどさ。
「めでたく全員で行ける事が決まって良かったじゃないか」
ここはヨーコ先輩の意見が正しいのだろう。
「それでは計画を再確認するぞ、いいな」
彼女はそう言って全員の前に計画表を出す。
予定では11月29日、終業式が終わり放課後になったら研究室に集合。
そのまま蒸気ボートに乗ってクサズリ砦を目指す。
夕刻くらいまでには砦に到着。
荷物を運んで居室に入れたら合宿開始だ。
「用意するものはいつもの着替えとか武器以外に何か必要かな」
「
そうなのか。
旅行なんてしないからそんな物の存在すら知らなかった。
「袋シーツってどんな物なんですか」
「封筒型をしていて、上から入る感じだな。素材は亜麻と羊毛があるけれど、亜麻がお勧めだ。通気性がいいし洗いやすいから」
なるほど。
雑貨屋にはあるらしいので家で母か姉貴あたりに聞いてみよう。
「武器は一通り持っていく予定だよね」
「色々作ったしな」
メインの武器は組み立て式アンテナ型魔法杖(形状偽装済み)。
でも魔法持ち以外用の武器も色々作ってある。
俺専用猟銃とか。
フールイ先輩専用猟銃とか。
ナカさん護身用拳銃とか。
シモンさん専用クロスボウとか。
シンハ君専用投げ槍とかだ。
俺専用猟銃は猟銃というより小銃的な構造で連射も3点
ただし反動は結構強烈だ。
弾は
薬莢は鉄製でセンターファイア方式。
とりあえず300発ほど作ってあるが、どれくらい持つだろう。
同じ猟銃でもフールイ先輩仕様は火薬の代わりに水が入っている。
魔法で水を瞬間的に爆発させて発射する方式だ。
この弾も300発準備した。
恐ろしい事に火薬仕様の俺の銃より威力は大きい。
ただし魔法を使うので連射があまり利かない。
また反動がかなり強烈なので下手に連射すると先輩ごと後ろに吹っ飛ぶ。
なおフールイ先輩はその他に専用アンテナ型魔法杖も準備してある。
ナカさん専用拳銃はリボルバー式6発拳銃。
機構も外観もS&WのM29、いわゆる44マグナムリボルバーのパクリだ。
病床でバラして遊んだモデルガンの構造そのままに制作して貰った。
弾は俺の銃と共用なので反動はまともではない。
あくまで護身用で、使わない事前提の品だ。
多分現場では洗浄魔法の方で色々活躍するだろう。
でも一応弾は専用で100発用意している。
これらの銃と弾は例によって俺が概念図を書き、シモンさんに作って貰った。
でもシモンさん本人は弓が好みなのだそうだ。
そんな訳でシモンさんの武器はクロスボウ。
ただし3連射まで可能なかなり凝った代物だ。
しかも矢の先端に火薬入り弾頭がついた炸裂矢まで準備している。
矢の装填はてこの原理で軽い力でも行えるがワンタッチではない。
シンハ君専用武器は原始的な投げ槍。
ただしこれを馬鹿にしてはいけない。
魔法で身体強化した
先輩達やミド・リーの魔法以外では最強の飛び道具かもしれない。
武器の他にも便利道具は色々用意している。
蒸気ボートで砦まで行けるので、必要な可能性がある物はとりあえず積んでおく方針だ。
果たして積んでおいたうちどれくらいの物が役に立つだろう。
何せ投光器まで作ったし。
バッテリーは鉛蓄電池を作ってみたのだが容量が今ひとつだったので断念。
ボートの補助発電機を使う方法に変更した。
電球はフィラメントが木炭を粉々にした後再結合させたもので、電球内には窒素ガスをできるだけ気圧薄めに充填してある。
勿論こんな物シモンさんの魔法でないと作れない。
なお電球1個あたりの寿命はせいぜい2日程度。
ハンドメイド、厳密には魔法メイドだけれどこんなものかな。
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