第9章 狩って吊して皮剥いで ~冬休み合宿編・上~
第71話 冬休みの計画
学園祭の最優秀賞の副賞は研究費
活動費には困っていないのだが、貰える物は当然ありがたくいただいた。
なお現在は10月の実績で、
○ 国からの研究奨励金が
○ 軍からの魔法アンテナの権利代がだいたい
○ スキンケアグッズの権利代がだいたい
○ 香水やお香等のフレグランス製品がだいたい
ほどの収入がある。
つまり活動資金は充分すぎるほどだ。
年末には本年の収入と各個人への配当分を国王庁に報告しなければならない。
その辺は現在ナカさんが帳簿を抱えてうんうんうなりつつ作戦を考慮中だ。
さて文化祭が終わって1週間も経たないある日の放課後。
「冬休みの合宿予定が決まったぞ」
ヨーコ先輩からそんな台詞が出た。
「どんな内容でしょうか」
「12月1日から2週間、場所はターカオ山麓のクサズリ砦で魔獣狩りだ」
ターカオ山とは国の中央山脈にある山のひとつだ。
しかし魔獣狩りか。
確かに魔獣の持つ魔石が欲しいとは言ったけれど。
「討伐する対象はどんな魔獣なんですか」
ナカさんがまず尋ねる。
「主なものは
おいちょっと待った。
国内最強級の魔獣だぞあれは。
「そんなの倒せるの?」
「魔法が使えればおそらく」
アキナ先輩はこともなげに言う。
確かに攻撃魔法が使用可能な大貴族の御令嬢2人とか、治療魔法を極めているミド・リーとか、その気になれば爆破魔法を使えるフールイ先輩とかは問題ないかも。
でも身体強化魔法オンリーのシンハ君だと厳しそうだし、残り3人は問題外だ。
これは何か武器を作っておく必要があるかな。
銃か、それが無理でもクロスボウとか。
後でシモンさんと色々考えよう。
「どんな場所なんですか?」
第2の必要事項を俺は尋ねる。
「ここからだとオッタ―川からフチュー運河を経てミクマリ川を上りきったところだな。ヌクシナ町の山側にある砦だ」
ヌクシナ町は山あいのにある、主に銅を採掘している鉱山町だ。
中央山地に入った場所の谷あいにある。
「あの辺は冬になると餌が少なくなって魔獣が山から下りてくる。対策として水路や遊水池で村を囲ったりしているけれどさ。それでも例年何回か魔獣が畑や採掘場、町外れを荒らしたりする事案が起こるんだ。その辺の人里へ完全に降りてきてしまった魔獣は軍が対応する。でもそういう被害を抑えるため時期を決めて魔獣狩りを解禁するんだ。そして私はその権利を手に入れた」
確かにそれなら魔獣の魔石が手に入るだろう。
それにしても見切り発車で権利入手か。
「それにしてもよくそんな権利を中等学生が獲得出来ましたね」
「うちの領地なんだ」
俺の疑問にヨーコ先輩はあっさりそう答える。
おいその手は卑怯だぞ、なんて言われそうだな。
「実のところ申し込めば大体権利は貰えるんだ。最近は冒険者も少なくなったからこういった仕事は人気が無くてさ。地元でも困っていたりするんだ」
そうなのか。
確かに国内、特に大都市周辺は治安がいいから冒険者なんて殆ど見ない。
でも地方に行けばまだまだいるものだと思っていた。
「その間は宿屋か何かに泊まるの?」
「クサズリ砦に部屋を借りた。いささか古い砦だがそこそこいい部屋を提供してもらう予定だ。砦は川沿いで川船なら係留できるそうだ」
宿も交通も心配いらないという事か。
「ところで今回の合宿は大丈夫なんですか。以前男子と女子一緒だとまずいという事で途中で中止になったけれど」
「冒険者が討伐をするのと同じだから当然問題無い。寝る部屋は別れているしさ。それに今回の宿である砦はうちの持ち物だし付近はうちの領地だ。そこで戦闘訓練を兼ねて魔物討伐をしたい。村の魔物被害防止にもなる。そう言ったらうちの親は喜んでいたぞ」
本当かな、怪しいなと俺は思う。
でもまあ問題無いという事にしておこう。
なら残りの問題は……
「期末試験に向けて勉強しないとな。置いていかれたら洒落にならない」
そう、シンハ君だ。
12月1日からいう事は補習や再テスト対象になったらアウト。
まあその辺は仕方ない。
一緒に試験勉強してやるとしよう。
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