第14話 量産体制の威力
シモンさんが作り上げたのはかき混ぜ器だけではない。
気がつくと気体捕集器から蒸留装置まで色々便利道具化されていた。
何と言うか……有り難いというか恐ろしいというか。
おかげでグリセリンを取り出して混ぜ込んだ最終製品が出来るまで、多少工程を変えたところもあるが一日で完成してしまった。
しかも量が圧倒的に多い。
各種類72個以上完成している。
全部定価で売ったら
まあ油とか食塩とかレモン汁の仕入れに小銀貨5枚。
セット用小箱と瓶代に小銀貨5枚。
シモンさん作成の機器はまだ幾らかかったか不明だけれども。
「それでどうする? これだけ出来たけれど、販路とかは何も考えていないしさ」
「ミタキの家で売るつもりじゃ無かったの?」
ミド・リーが当然という顔で尋ねる。
「元々はそうだったけれどさ。これだけの量が売れるかどうか」
「ならうちの治療院でも置いて貰おうか。薬に比べれば安いものだし。ただうちの場合はセットではなくてバラ売りになると思うけれど」
「元々は幾らで販売するつもりだったのでしょうか」
アキナ先輩が尋ねてくる。
「売価が1個
「それでいいと思いますわ。それ位は充分売れると思いますし」
アキナ先輩の台詞に女性陣全員がうんうんと頷く。
「それに直取引してよければ私も買うぞ。この前の試供品が評判良くてな。うちも欲しいという処が色々あるから」
ヨーコ先輩は自らお買い上げ希望のようだ。
「私もですわ」
アキナ先輩まで。
いいのだろうか、身内に売るのは。
「配布先とか各自の取り分はどうする? あとこのメンバー内での販売価格も決めた方がいいかな」
「販売店の取り分が
「ならアキナ先輩とヨーコ先輩が幾つ買うかまず決めて貰って、残りをうちの店とミド・リーの治療院に回そうか」
「あ、私個人としても購入するからね、2セット分」
「私も欲しいです」
「同意」
「あとシモンさんが作ってくれた機器代金とかミタキ君が用意してくれた材料費もありますよね。その辺も計算しないと」
そんな訳でまずはかかった費用の計算。
俺の買ってきた材料費が
シモンさんは自分では材料費として
「シモンさんの工賃と技術費用も足すべきですわ」
という意見に押され、
俺達としては正銀貨2枚でもあれだけの装置に対しては安いものだと思うのだが、それ以上はシモンさんが受け取らなかった。
「これだけ楽しく色々作ったのは久しぶりだしね。それに僕も知らない製造方法を色々見せて貰ったし」
とのことである。
そしてここからが各自の取り分の話。
その前に部内販売分の分配だ。
話し合った結果は次のようになった。
○ まず全員が無条件で2セットずつ受け取る。
○ アキナ先輩とヨーコ先輩がそれぞれ20セットずつ購入する。
なおこの際の金額は部内価格で計算(1個あたり
○ 残りのうち16セットはセットで俺の家で販売
○ 更に残った石鹸しっとり8個、さっぱり6個、化粧水8本はミド・リーの治療院で販売
そんな訳で大貴族様の御令嬢2人から、それぞれ代金として
そこから俺の経費とシモンさんの経費を引いた、
「でもこの商品はミタキ君が発案したものですから、ミタキ君がその分多めに受け取った方がいいのではないかと思いますわ」
「私はあまり役に立っていない。半額でいい」
「それは無しだね。ミタキ以外は全員平等に受け取った方がいいと思うな」
あれこれ相談した結果、人数
「端数は面倒ですので、取り敢えず分配は1人あたり正銀貨1枚。残りは次の儲けに足して配分という事でいいでしょうか」
「文句無いよ。他にこれ2セットも貰っているしね」
そんな訳で無事配布が終了。
なお20セット持って帰るのは大変という事で、アキナ先輩とヨーコ先輩はそれぞれ小間使いを呼びに一度帰った。
一方でミド・リーと俺は自力で持ち帰る。
セットを5箱も持つとかなり重い。
それでもミド・リーはシモンさんに運搬用の箱を作って貰い、一気に運んだ模様。
あいつは小柄だけれど俺より遙かに体力があるからな。
一方俺の体力では5セットを持ち上げるのがやっと。
更に途中で休み、家へ行って休み、シンハ別宅に行って休みという感じになる。
見かねたシンハ君が2回目には残りの箱を一緒に持ってきてくれた。
「悪いな。いつも助けてもらってさ」
「いいって事よ。いつも世話になっているし、今回も結局いい儲けになったしさ。それにこれからも継続的に儲かりそうだし」
そんな訳で何とか自分の分を含めて合計18セットを運びきる。
疲れたけれど充実感は結構あった。
これで蚊取り線香やマヨネーズに続く収入源が出来た。
儲けた金で次は何を作ろうかな。
今から楽しみだ。
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