第03話 宇宙延命、宇宙の輪廻

 西暦三千年台の末期は、宇宙終末説がしきりと唱えられた、暗い雰囲気の漂う時代であった。

 ほぼ限界にまで科学が発展してしまったため、宇宙の終わりまでが意識されるようになってしまったのである。

 大昔よりも生活はより便利になったというのに、皮肉なことに、裏腹に。


 だからこそグラティア・ヴァーグナーは、より強く意識していたのだろう。

 宇宙の延命についてを。

 終焉を迎えるのは、自分たちが死んでおそらく人類も滅んだ数千億年後のことであるというのに。


 それでも、他人事にはなれなかった?

 いや、どうも他人を思うがため他人事になれなかったというより、最初から自分のこととして宇宙終焉を憂いている節が、彼女にはあった。

 インタビューや手記の発言を集めてまとめると。


 ある手記において、彼女は語る。


 この仮想世界がもたらす科学の進歩は、きっと宇宙の終末そのものを吹き飛ばし、のみならず、あらたな輪廻を作り出せるかも知れないのだから。

 まだまったく未知の、解明がなされていない技術ではあるけれど、位相と時間の概念が覆って、宇宙が永遠のものになるかも知れないではないか。

 それはつまり、例え死しても生き返ること……に、なるとまで思っていないけれど、なにもしなければ、輪廻の舞台たる宇宙は確実に終わってしまうのだ。

 ならばやることは一つだ。

 種を、まかねば。

 未来へ、可能性を繋ぐためにも。

 わたしの未来のため、

 人類の未来のため、

 のみならず、過去の魂のためにも。

 未来は、わたしのこの真っ赤な髪の毛よりも、もっと明るいものなのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る