第04話 史奈救出作戦、完了

 そう、わたしたちは、あま姉妹によるフミちゃん救出作戦のことを、知っていたのだ。


 リヒト東京支部へと、最初に乗り込んだのは、わたし、カズミちゃん、はるちゃん、のぶさん、しようさんの五人。

 本当ならば東京支部は東京の、本部は大阪の、地元中学高校の魔法使いマギマイスターを中心とした組織で、リヒトを糺すべく計画を進めていたらしいのだけど、フミちゃんが誘拐されたという緊急事態によって、余裕がなくなってしまった。

 そのため、関係者の家族を助けるという利害もあって、わたしたちがまず向かうことになったのだ。


 異空の空を飛んで向かっている途中で、くろ先生から通信が入って、第二中の残りメンバーが増援として遅れて向かうことを聞かされた。

 その時に、天野姉妹を別働隊として、フミちゃん救出の本命に当たらせる、ということも聞いた。


 だから、わたしたちもまずは隠密行動だけど、もしも目立つことになっても、それはそれで構わない、といわれた。

 その分、天野姉妹が動きやすくなるからだ。


 裏での救出作戦のことを知っていたから、だから治奈ちゃんも、だれ所長にあまりフミちゃんのことで食い付かなかったのだ。

 逸る気持ちこそあれ、ある程度落ち着いて行動することが出来ていたのだ。

 天野姉妹を信じて、時間を稼ぐために。

 でも焦りからか治奈ちゃん、最後の方はかなり熱くなってしまっていたけど。


 救出の計画に関しては、賭けといえば賭けだった。

 最終的に助け出すことが出来たからよかった。

 けど、その時間稼ぎのため、何人もの犠牲者が出てしまったわけで、治奈ちゃんは、きっと、ずっと悔やむことになるのだろうな。


 討伐作戦の開始が早まっただけだ、なんて、とても割り切れないだろうからな。

 治奈ちゃんも、

 そして、わたしもだ。


 そう、わたしも、犠牲になった子たちに対して、申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになっている。

 もしかしたら、その気持ちは治奈ちゃん以上かも知れない。

 だって、今回の件は治奈ちゃんが発端じゃないからだ。

 わたしをオルトヴァイスタにしようという、至垂所長の世界征服的な野望によるものだからだ。


 仮にわたしが存在しておらずとも、所長は別の誰かに同じようなことをするだけ。

 でも、それはそれ、これはこれだ。

 わたしの罪、というか重たい気持ちが軽くなるわけじゃない。


 わたし自身はなんにもしていない。と、理屈では割り切れても、でも申し訳なさを感じずにいられない。

 悔いずにいられない。

 自分の無力さを、痛感せずにいられない。


 悲しい気持ちになる。


 もっとなにか、出来たのではないか。

 誰も死なずに、済んだのではないか。


 もしも、あの時……

 もしも、わたしが……


 たらればの言葉が、いくらでも頭に浮かぶ。


 でも、

 でも、

 それは明日だ。


 ここでのことが、すべて終わってからだ。


 溢れるほどの後悔を胸に深く刻みながらも、泣くのは明日。

 いまは、まったく関係のない小さな女の子が犠牲にならずに済んだ事実を、喜ぼう。

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