第14話 今度は、わたしが助ける番だ!

 この、ヴァイスタという怪物を見たことは、これまでに何度かあったが、

 いつだったか、一回、襲われたこともある。


 すっかり忘れていた記憶だったが、思い出した。


 まだ幼い頃。

 いまわたしがいるこの世界みたいに、見るものすべてがここであってここでない、歪んだ奇妙な世界に迷い込んで。


 そして、襲われたんだ。


 どうなったんだっけ。


 そうだ。

 はるちゃんのような、ちょっと変わった格好をした、でもかっこいいお姉ちゃんんが現れて、剣かなんかで戦って、やっつけてくれたんだ。


 もう大丈夫だからね、怖いのによく頑張ったね、そう笑って。

 わたしの頭を撫でてくれたんだ。


 でもあのお姉ちゃんも、ちょっと足が震えていた気がする。

 きっと怖かったんだ。


 治奈ちゃんだって、そうなのだろう。

 本当は、こんな怪物なんかと戦うのは怖いのだろう。


 でも、こうして戦ってくれている。

 わたしを守ってくれている。


 なら今度は……

 アサキは、ぎゅっと手を握った。

 恐怖に脂汗まみれになった拳を、ぎゅっと。


「今度は、わたしが助ける番だあ!」


 大きな声で叫ぶと、走り出していた。


 全力で、ヴァイスタへと向かって。

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